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武器をオンラインで販売

8月12日。

タイ東北部のコンケン県と、北部のチェンライ県で、捜査当局が小火器の非合法販売拠点5ヶ所を摘発。3人を逮捕しました。

翌13日に、タイ警察庁サイバー犯罪捜査局のコーンチャイ・クライクルーン局長(警察中将)が記者会見を開いたのですが、以下、その概要です。

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サイバー犯罪捜査局は、ライフルや弾薬などの販売をオンラインサイト経由で行っていた組織を発見。家宅捜査に乗り出し、コンケン県で38歳の男性を、そしてチェンライ県では共に43歳の男性二人を逮捕しました。また、武器を保管していた5ヶ所も調べあげ、およそ3,500点もの武器弾薬を押収しています。その価値はざっと5,000万バーツ。約1億7,000万円。

逮捕者の詳細については、名(姓は非公表)と年齢が明かされたのみですが、同局は、コンケン県で逮捕した男は過去5年、チェンライ県で逮捕した二人は少なくても過去4年、オンラインで非合法に武器弾薬を販売していたものとみています。

タイでは、過去に重大犯罪歴がないなど、しかるべき資格のあるタイ国籍保持者が当局に申請を行い、武器を所有することができます。しかし所有する武器は1点1点許可証が必要。また所有する武器自体も、正規に輸入されたこと、あるいは国内で製造されたことを示す政府登録番号が必要です。つまり法律上、誰でも好き勝手に売買してはいけないわけです。

それなのに。

同局の捜査によれば、3人の容疑者はアメリカ、インドネシア、スウェーデン、トルコ、スペイン、中国から武器弾薬を密輸。それをオンラインで販売し、箱詰めした武器弾薬を、虚偽の内容物名で一般の宅配業者に託して配達していたそう。さらに顧客はこれまで5万人に達していたようだ、というのですから、なお驚きです(この5万人には、カンボジア、ミャンマーなど近隣県からの購入者もいるようです)。

なお、タイのメディア「Top News」が記者会見の映像を YouTube にアップしています。以下、リンクです。

余談ですが、コロナ感染対策として、ニュースキャスターや会見に応じている警察幹部らが、全員マスクをしています。これはタイ政府の政令によるものです。ご時世ですね。

タイでは、高級車を運転している連中とは諍いを起こすな、と言われています。

高級車を乗り回している者の多くが、護身用の拳銃を所持しているから、というのがその理由です。

今朝のニュースでも、通りを渡ろうとした女性が スピード超過の SUVに魅かれそうになり、逆上した SUVの運転手が拳銃を持ち出してこの女性を殴りつけ、大けがを負わせるという事件が報道されていました(犯人は逃走中)。武器の所持は厳密に管理されているはずなのですが、「漏れ」が多いのがこの国の特徴。要注意です。

もちろん今回の捜査だって、逮捕された3人だけで終わってはいけません。

これだけ大量の武器弾薬を密輸・販売していたのですから、背後には税関職員も関係する大組織があるはず。それに、これまで警察がこの組織を把握していなかったとは考えにくい。おそらく、軍や警察の幹部も関係しているのではないでしょうか。タイでは、そう考えるほうが現実的です。

またタイミング的には、ニューヨーク捜査当局がミャンマー国連大使暗殺計画を阻止したばかり。昨日 noteで記事にしましたが、そこには、「タイの武器商人」の関与が明らかになっています。ミャンマーの民主化運動組織は、タイの軍需会社「Chaiseri」が関係していると推測しているようですが、タイ側は、今回の非合法組織を検挙することで、「武器商人といったって、こうした非合法組織だって存在しているんだ。Chaiseriだけが注目されるべきではない」と、カモフラージュ的に利用しているのかも。

それにしても、これだけの大規模な武器密売犯罪なのに、タイマスコミの動きが目立たない…。なんだか、このままうやむやにされていきそうです。まぁこれも、タイ的なフェードアウトではありますが。

この社会、まだまだ闇が深いなぁ。

陰謀論に走るつもりはありませんが、「事実は小説より奇なり」。この言葉が頭をよぎります。


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