内部文書が漏れて大騒ぎ(タイ)
まずはご報告から。
昨日投稿した、コロナ感染自宅待機中の4人家族。報道で知った慈善団体が尽力し、昨日無事に、4人全員が入院できたそうです。まずはよかった。しかし同様に自宅待機中の患者さんはまだまだいらっしゃいますから、手放しでは喜べません。
さて7月4日頃から、タイ保健省内に設置されているコロナ対策作業部会の内部資料が、なぜかネットに流出。ネット民が大騒ぎしています。今日はそのポイントをご紹介します。
まず、ネットに流出した内部資料はこちら(一部のみですが)。6月30日に召集された会議体で討議された「議事録」であり、政府によって決裁されたものではありません。
まず、この会議体の性質ですが、①感染症対策法に基づき設置された専門家委員会 ②抗体増進研究部会 ③ワクチン接種運営作業チーム すべて保健省感染症管理局が主管している会議体です。この3つの会議体メンバーが集まった合同検討会議で討議された内容が、今回流出したものです。
流出した資料の、何が問題視されているのか。大きくは3つあります。
①公表されていないファイザー社製ワクチンが、150万回分存在していること
タイ政府が、ファイザー社製ワクチン2,000万回分の購入を契約したことは、タイでも報道されています。ただ入荷する時期は定かではなく、10月~12月が目途となっているようです。ところが今回の流出資料では、先述の2,000万回分とは別に150万回分のファイザー社製ワクチンが、7月中に入荷すると記述されていたのです。
タイ政府はコメントしていませんが、ネット民の調べでは、どうやらアメリカ政府がタイ政府に援助を約束したワクチンらしい…。アメリカ政府は、ミャンマーにもファイザー社製ワクチンを無償援助していますから、これはあり得る話です。
②ファイザー社製を、12歳~18歳の層に接種すること。また、寝たきり状態にある高齢者や妊娠中の女性に優先的に接種すること。
現在タイ政府が接種を進めているシノバック社製、アストラゼネカ社製ワクチンは、18歳以上を対象にしています。また、妊娠中の女性には接種を推奨していません。このため、ファイザー社製ワクチンを、これらの層に優先接種するという考えは、十分検討に値すると思います。但し、18歳以上への接種が一定数完了する前に、ファイザー社製ワクチンがタイに届いてしまったら、それはそれで揉めるでしょうね。
そして最後の3つ目。これがかなり厄介な課題です。
③先行して届く150万回分のワクチンを、医療従事者に優先接種する。
自らの意思、ないし体質の理由で接種を辞退していない限り、医療従事者はすでにシノバックもしくはアストラゼネカのワクチン接種を終えています(大多数はシノバック社製ワクチン)。それにも関わらず、3回目の「ブースター接種」として、この150万回分のファイザー社製ワクチンを接種する、という案が出されたわけです。ただしこの提案に対し、「それではシノバック社製ワクチンの効果が期待できないことを白状するようなものではないか? (国民の多くに対し)シノバック社製ワクチンの接種が進んでいる以上、それは大きな混乱をもたらすのではないか」。こんなコメントまで、議事録に記載されていたのです。これが、大騒動に発展していったきっかけ。「ブースター接種」がブースターとなって、ネット民のシノバック社製ワクチン不信を増強させてしまったのです。
※さらなる詳細は、こちらの記事をご確認ください。
ここに、「タイ医師会」の事務局長であるイタポーン医師が、「医療従事者の命を守るため、ブースター接種に賛成」という主旨の投稿を Facebook に上げたものですから、論争に拍車をかけました。
「早く国民にワクチン接種を」と意気込んでの、善意での選択ですから、タイ政府を批判したくはありません。しかし、その効果に大きな疑問符が付きまとうのはもはや払拭し難く、中国のメンツを立てるためには、「変異株へのワクチン効果をさらに高めるために、敢えてブースター接種を行う」という論法を組み立てるしかない…。しかしこうした内部文書の流出によって、大国中国の体面を傷つけないように配慮することすらも容易ではなくなった…。
どうするか。
タイ政府の困惑ぶりは、想像に難くありません。でも、ちょっときつい言い方ですけれど、それはもう身から出た錆。適切な情報を、適切なタイミングで、適切な説明を行うことを怠ったツケが回ってきただけです。圧倒的多数の国民は、感情的になるときもありますが、論の通じない人たちばかりではありません。隠しちゃ、いけない。政府にはもっと、自国民を信頼してもらいたいものです。