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どうする海子?(6)矛盾
手をつなぎ普通の恋人のようなふたりはゆっくり並んで歩く すれ違うヒト達も仲の良い恋人なんだな程度に思ってるに違いない 自分の体に当てていたマスクに虐められてるなんて誰も気づく訳は無いのに 皆が変態の自分を蔑んてるような気がする
なにより隣の上機嫌の男だけは秘密を知っててそれを楽しんでる訳だけど……
「海子さんが自分を嗅いで唇にあててるって皆知らないよね 僕だけが秘密を知ってる」
海子は相手を喜ばせる楽しませるのが好きだ 訳のわからない不機嫌や不満そうな顔より何万倍も心地よい 自分の優しさや心遣いや努力が報われる喜び 例え奉仕や恥ずかしい事変な事でも……
「自分を匂ってる海子さん…」
笑ってしまうような呟きだけど 今は赤面してしまう 自分の湿り気を鼻と唇に感じて すれ違う通行人の目線が海子のマスクに集中してるようなもよもよした気分になる
普通じゃない変態として軽蔑される みじめな気分を味あわせたいってどういうことなんだろう?
従わせるなら誰でも良くて 相手より行為にだけ意味を感じてる相手なら願い下げなんだけど どうにもこの男それ意外の態度や行動は爽やかで好感がもてる その矛盾や乖離が海子を惹きつけてしまう
こんな奴に着いて行って大丈夫なの? でももう少し相手の本心を知りたくて 特に言葉を引き出したくて もう少しつきあってみたい気がする
暫く歩いて人気の無いさびれた公園に入る
「海子さんは自分の匂いに興奮する?」
と答えにくい質問をする
「自分を匂ってる海子さんが隣に居るから……」
男は繋いだ手をそのまま自分のものに押し当てた
「海子さんと手を繋いでるだけでもう...…」
どうする海子?(続く)