成田市議会マイボトル禁止騒動の顛末と会津素子市議の功罪
2019年9月末に世間を賑わせた「成田市議会マイボトル禁止騒動」について、その主張についてと異常なまでの拡散、そして騒動の発端となった成田市議会議員の振る舞いに違和感を感じているので、自分なりの考察を述べていきたいと思います。
成田市議会マイボトル禁止騒動とは
2019年9月28日、会津素子成田市議のブログエントリーが発端となり、「成田市議会(正しくは委員会)ではマイボトルの持ち込みが禁止されペットボトルのみ許されることになった」という珍妙なニュースが世間を賑わせました。
発端となった会津市議のブログエントリー;
成田市議会 マイボトル禁止とコンパニオンさん。
https://ameblo.jp/koshary/entry-12530367421.html
会津市議はマイボトル持ち込み禁止の他にも、懇親会にコンパニオンを呼ぶことや、海外視察にかかる経費についても同エントリーで問題視していました。
問題提起したのが女性市議だったこと、同時期に国連気候行動サミットが開催されたことも相まって、ミソジニー、環境問題など様々な文脈で語られることとなり、SNSやワイドショーの格好のネタとなりました。
さらに、この問題に関して、成田市議会や他の市議などが釈明や反応を示さなかったのも、成田市議会に対しての疑義・疑念を膨らますことになりました。その結果、「男尊女卑が跋扈する事なかれ主義のムラ議会vs古い体制に挑む女性市議」といった構図に収斂されていきました。
ペットボトル配布に至る経緯、そして本当にマイボトルは禁止されたのか
TwitterやFacebookをはじめ、著名人や見識者、成田市民など多くの方が敏感に反応し、あっという間に拡散した同問題ですが、果たして本当にそんな馬鹿げたルールの決定が本当になされたのでしょうか。そのことについて言及した発言は残念ながらほとんど見かけず、ヒステリックに市議会を糾弾する発言、会津市議に対する発言が目立っていた気がします。
では真実はどうなのでしょうか。
会津市議はブログで「委員会室では飲み物は可能となっており、私は以前からマイボトルを持ち込んでいました。これが禁止となりました。」と主張しています。
一方、内情に詳しい方に話を聞いたところ、同市議会の会議体では、もともと、原則、飲食の持ち込みは禁止となっていたそうです。慣例的に議会事務局の方がお茶を用意していたものの、事務局の方に申し訳ないという理由から、代わりにペットボトルを用意することになった、という経緯のようです。
つまり、「以前から飲食物の持ち込みは禁止されていた」が、「用意されたもの(=ペットボトル)は例外的にOKとする」という真実が、彼女の誤解によって(または意図的に)「マイボトルはNGでペットボトルがOK」という文脈に歪められてしまったことになります。
しかも、このルールは、会津市議も参加していたという「全員協議会」という場においても全会一致で承認されたもの。当然、質疑の場も設けられていましたが、その場で会津市議からの質問や提案などはなかったそうです。
もし上記が真実であれば、異議を唱える機会も質問をする機会もありながら、「マイボトルを推進したい」という具体的な提案を然るべき場でせず、突然ブログでの公表という空中戦に持ち込んだということになります。この会津市議の行為は、とても論理的な行動とは言い難いでしょう。
「守るに値しないルール」という意見もありますが、だからといってルールを破っていいという理由にはなりません。ルールはルールとして遵守し、もし従うべきルールが不条理・非合理的であれば、然るべき手順で正していくというのが、社会の常識だと思います。したがって、会津市議がまずすべき行動は、安易に世論に訴えることではなく、市議会内で不条理だと思われるルールに異議を唱え、改革していくべきことだったのではないでしょうか。
市議会が釈明の発信をしなかった問題について
では、どうして会津市議の主張に対して、どうして成田市議会は沈黙を保っていたのでしょうか。
成田市議会の本音を聞いたわけではないですが、複数の関係者から聞いたことから推測するに、
・本人も合意していたはずのルールに突然空中戦で批判され戸惑っていた
・会津市議の主張はほぼ言いがかりみたいなものとみなし、反論する価値のないものと受け止めていた
・反論することで会津市議いじめという批判を生む悪循環を避けたかった
これらのいずれか、または組み合わせなのが実態なのではないでしょうか。
「会津いじめ」という意見も散見されますが、私個人としては「いじめられている」というより「相手にされていない」というほうが、より実態に近い気がしています。
発言の信憑性と安易な拡散
そもそも、今回の会津市議の発言は、彼女の一般質問の内容やブログ、SNSでの発信等を見たことある人であれば、一部の支援者を除き、彼女独特のいつもの『色眼鏡を通した世界』である可能性は、十分考えられたことでした。
会津市議は環境や生物、多様性といったテーマに特に熱心に取り組んでいますが、成田市政というより地球規模の壮大なテーマが多く、それらを具体的・現実的な(市への)提言に落とし込む能力に決定的に欠けている気がします。したがって「良いことは言っているんだけど、理想論に終始し、現状への文句にしかなっていない」という評価しか下せないというのが私の考えです。
(誤解のないように申し上げれば、彼女の人格や発言を否定したいわけではありません。人間としての彼女の考えは尊敬に値しますし、大切な友人(少なくとも私はそう思っています)の一人でもあります。ただ、成田市議という役割には向いていないという話です)
話が逸れましが、このような彼女の市議としての資質を知らない方たちが彼女の発言を間に受け、安易に拡散。前述したように、いかにもワイドショー的な分かりやすい構図に、マスコミが食いつきました。さらに成田市民までもが、少しも疑わないまま反射的な怒りに身を任せてそれらを拡散し、結果として愛する地元を汚すデマを自ら広げることに一役買ったのは、皮肉という他ありません。
会津市議が今すぐやらねばならないたった一つのこと
真実はどこにあるのか。それは当事者しか(あるいは当事者ですら)わかりません。ただ、大騒ぎの割に事態が急速に沈静化したこと、また、会津市議が後援者や関係各所にすでに謝罪を行ったという情報があることから、おそらく会津市議の盛大な勘違いであった可能性が濃厚だというのが、私の結論です。
だとすれば。
彼女はまだしなければならないことが1つあります。
それは、彼女自身が戦いの場に選んだネット上での公式な経緯の説明と謝罪です。
このエントリーを書いている10月14日現在、会津市議はブログ、Facebook上で他の話題を投稿しているものの、この件に関しての続報(訂正)についての投稿は一切していません。市議会がネット上でまともに取り合わなかったのとは違って、本人が発信した場できちんと説明責任を果たすのは当然ではないでしょうか。意図的にしろ、そうでないにしろ、フェイクニュース(と敢えていう)を流したのなら、それを訂正するのが、責務というものではないでしょうか。
まとめ。今回の騒動で我々が学ぶべきことはなにか。
今回はマイボトルに的を絞って書きましたが、コンパニオンの件や海外視察の件なども、違う角度から見ると、また違う景色が見えたりします。(例えば、コンパニオンと一言で言っても、ピンクコンパニオンから、ホテルのホールスタッフまで様々なサービス形態あるけど、どのようなサービスなんだろう?公費じゃなくて私費だったら?)
これらの問題、私個人の意見や思うところはありますし、彼女の問題提起にも市民にとって税金の使いみちを意識させるために役立った側面もあったことは疑いのない事実です。ただ、今回のやり方と、その後の処理は批判すべきことだと私は思います。問題があるなら、ルールに則り、それについてみんなと議論する場を設ければいい。そうしてこそ、成熟した議論が形成されるのではないかと思います。
今回の彼女のように、物事の背景や複雑な事情を削ぎ落とし、0か1か、善か悪か、二項対立を作り出すのは、非常にわかりやすく、人から「考えること」を奪いがちです。そして、SNSが増幅装置となって大きく極端に広がってしまう現代において、私達は、わかりやすく、目にした途端瞬間湯沸かし器のように感情を大きく煽られる事柄にこそ、一呼吸おいてその裏側にも目を向け、拡散の手を止めて一瞬考えることが肝要なのではないでしょうか。
・・・それにしても、会津市議は海外視察を散々否定してるけど、自分も過去に行っていた事実はどう説明するのだろうか…(笑)
https://ameblo.jp/koshary/entry-11627497037.html