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財務諸表を読む~減価償却と利益計算~

こんにちは。SSKC会計グループの吉田です。

固定資産を取得した場合、会計上減価償却が求められることがほとんどです。そのための専用システムを使っている企業も多いくらい、経理上もインパクトの大きい処理になります。

減価償却とは、資産の金額の一部を費用化することにより、資産価値を逓減させていく手続きのことです。
資産は時の経過によって価値が下がっていく、という言い方をすると会計に馴染みのない方でも「そういうことね!」と納得してもらえることが多いですね。

今回はそんな減価償却についてのお話です。

<時の経過と費用配分>

どうして減価償却を行うのか?という問いの答えは、「適正な期間損益計算を行うため」です。
ちなみに、日本の会計基準に定められた多くの手続きの理由もほぼすべてこれです。この一年、どれだけの利益が得られたのか?ということを正確に計算するために減価償却を行って費用を計上するのです。
優先されるのはあくまで費用を計算することであって、減価償却の結果資産価値が減少することはあくまで結果でしかありません。

そのため、最初に言った「資産は時の経過によって価値が下がっていく」というのは減価償却を行う理由とはまた少し違ってくるのです。もちろん減価償却の根拠が時の経過にあることは間違いありませんが、考え方の順序が違うんですね。
次は減価償却に非常によく似た手続きである減耗償却を例にとって考えていきます。

<あなたは鉱山の所有者です>

という想定で考えていきます。何かしらの鉱石を採掘して販売する事業を営んでいるとします。
この場合、鉱山は資産となり、減耗償却の対象となります。減価償却との違いは、減価償却資産は償却が終わってもものとしてはそのまま存在するのに対し、減耗償却資産はなくなってしまうという点でしょうか。山林や油田なども減耗償却資産になります。
やることはほとんど減価償却と変わりありませんので、会計システムなんかでは区別されていない印象があります。

例えばその鉱山に100万トンの採掘量が想定されているとして、今年は1万トン採掘できたとします。
この時、今年の償却費は鉱山の取得原価×1万トン/100万トンとなります。
もし今年の採掘量が0トンだった場合は償却額も0になりますね。このように、鉱山を償却する場合時の経過を考えることはありません。

こちらの手法のほうが、償却費が売上高と対応しているということが腑に落ちるのではないでしょうか。ちなみに、減価償却にも生産高比例法という方法があり、このやり方は減耗償却と全く同じです。

<減価償却と利益計算>

また減価償却のお話に戻ります。減耗償却も減価償却も、資産を費用化する手続きであるということに違いはありません。費用を計算するということは、その先にある利益を計算するということです。
よって、減価償却は資産や費用についての論点ですが、「適正な期間損益計算を行うため」に実施する手続きである、ということになります。

はじめに「日本の会計基準に定められた多くの手続きの理由もほぼすべてこれです」という話をしましたが、会計の勉強をしているとほぼすべての論点がこの「適正な期間損益計算」に集約されていくので、伏線回収みたいで面白いですよ、と最後に会計学について宣伝しておきます。

資産の費用化についてはこの辺の記事でも説明していますので、興味のある方は覗いてみてください。

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