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523佐渡金山ユネスコ登録 エビデンスに基づく政治

佐渡金山を世界文化遺産としてユネスコ登録しようとしたら、待ち構えていたように韓国が反対声明。何度も同じ光景を見たような既視感。学習しないサルみたい。
「日本は朝鮮半島から労働者を連行して強制労働をさせた。人権犯罪常習の極悪非道の日本政府及び日本民族である」というのが韓国政府の主張。これに対する日本外務省の反論は、ただ「韓国の主張は受け付けられない」。
 報道されるのは以上のこと。これだけしか情報がないとすれば、世界の裏側に住み、東アジア情勢などに関心がない人にとっては、「韓国の主張の方に具体性がある」となるだろう。その結果、日本政府の人権意識は相当におかしいらしい。ひょっとしたらウイグルでのジェノサイドなどよりも深刻な人権侵害が日本では行われているのではないかとなって、民主主義世界の中国批判も打ち消されてしまう。ニンマリするのはだれか。
 
 なぜ佐渡金山をユネスコ登録申請するのか。「現地の自治体関係者の熱意に応えるため」などと思うようでは、いい結果にはならない。地元関係者の証言では、「朝鮮半島出身者をターゲットにした国際法違反の人権侵害はなかった」そうだ。そうなのであればこれは「絶好の売られた喧嘩」であると日本政府は肚を固めるべきだ。
 まず登録を最終目標から外す。登録のために韓国に譲歩すべしと言い出す地元利権者の行動を封印しておかなければ喧嘩にならない。獅子身中の虫を抱えては身動きできなくなる。
 次に徹底的に事実で争う。方法は簡単。奴隷労働させられた人のプロフィール提出を要求すればいいのである。慰安婦での失敗は、当時の河野洋平官房長官が被害者と称する者たちのプロフィールを要求しなかったことに尽きる。被害者がいなくても「日本政府は国家犯罪として認める」ことが分かったから、その後は、証拠を出さないことが戦術になったわけだ。エビデンスに基づく政治を常日頃主張する政治家が、こと外交になると証拠なしで謝罪し、賠償する。
 こうした卑屈な態度を改め、本来の常識を取り戻せばただちに解決する。逆の場合もそうだ。ウイグルでの人権抑圧はないと中国は主張している。この解決は実に簡単だ。日本国内で中国政府の人権侵害を訴えている人たちが、日本政府に救済に立ち上がるように求めている。ウイグルにとどまっている親族に暴行が加えられるので、素性を明らかにできない。ウイグル人はそう訴えている。
ではどうするか。顔も名前も出す勇気がある人が現われている。その人の親族名を明らかにして、その安全と日本誘致を中国政府に要求するのだ。「そのような人は存在しない」とか「当人が登場したくないと言っている」などと虚言を並べるだろう。ではこの人のケースはどうかと、次の要求を出す。これを繰り返すのだ。そうすると中国政府は「国外にいるウイグル人はみんな嘘つきだ」とプロパガンダを張らざるを得なくなる。それでも国際社会は動かないか。そんなことはないだろう。十分な状況証拠があれば、一般人でも裁判所でもそれを事実と認定する。
 
 北朝鮮に拉致されている日本人被害者でも同じだ。「死亡した」と言われて、「そうですか」と引き下がったのが間違いなのだ。小泉訪朝で金正日が拉致を認めたのだから、死亡するまでの足取りをたどりたいとして取材クルー派遣を強行に申し入れるべきだったのだ。人権とは、すべての個人に生きる権利があるということ。とすれば被害者の足取りをたどり、事実を解明することが供養のはずだ。
 元に戻って佐渡金山である。被害者と主張する人の名簿を出してもらい、日韓政府の総力を挙げて、その人の全生涯について累縁者を含めて生涯を追い求める記録を作ろうではないかと申し入れるのだ。人権侵害犯罪になるのかどうかの判定は、そうした資料を揃ってからである。お互いの政府が逃げも隠れもしないことを、国際社会に約束するのだ。万に一つ、韓国政府の主張が事実であれば反省すればよいし、予想どおり事実でなければ韓国政府に謝罪と関係者への処罰の鉄槌を求めればよい。
 要は「日本政府はこういう方針で臨む」と地元に説明、了解を得ることだ。そうしておかないと「せっかく準備したのだから韓国と折り合って、適当に謝罪することでユネスコ登録を得るのが現実的解決だ」との分かったような顔をする利権者が出てくるからだ。それがこれまでの外交から得られる教訓である。

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