503子どもの養育費 約束を守らせるには年金分割
ずばり「養育費支払いは事情が変われば減額が認められるか」。
好き合って結婚し、子どもができた。年月経れば愛情が薄れることもある。ならば別れよう。一方が持ち出し、他方も合意すれば離婚が成立する。その際に二人で築いた資産の分配取り決めが必要になるが、それ以上に重要なのが子どもの養育をどうするかである。裁判所の調停の力も借りて、母親が子どもを育て、父親が養育費を送金することでまとまったとしよう。
でも一件落着とならない事例が極めて多いのが日本社会の実情という。父親が再婚し、その新しい家庭に子どもができる。一緒に暮らす子どもの方が可愛いから、前の妻に送金する養育費を減らすというのがその一例。「だって前妻の元にいる子どもは自分によそよそしいのだもの」などと言い訳する。
「そうだよな」と頷いてしまいそうだが、それは許されないとするのが、わが国の法制度。養育費を支払うと約束したのだから、自分の食い分を削ってでも支払いを続けなければならない。「男子に二言はない」は、こういう場合にもしっかりあてはまる。そして約束を守る者が構成員であるのが民主主義社会。
自由主義社会では、離婚するなとか、再婚するなどとは言わない。恋愛には口を挟まない。しかし約束は守れ。これが民主主義社会のルール。
ではどうするか。アメリカでも実践されているようだが、国家が養育費を父親から徴収する仕組みを動かすこと。児童扶養手当法にもその趣旨は盛り込まれている。ただ実行されてないだけ。方法としては国民皆年金なのだから、この父親の公的年金保険料に特別上乗せするなどすぐにも可能だ。回りの者から「キミはどうして保険料が多いのか」と聞かれれば、当人の羞恥心を刺激して、より効果的なはず。
やっかいなのは父親の生活に余裕がない場合。強く納付を迫ると、新しい家庭と子どもに影響が出よう。だがこれにも現行の年金制度は対応できる仕組みを内在している。老齢夫婦が離婚すると、前妻の申し出によって夫の厚生年金の一定割合の受け取りを妻に振り替える仕組みがある。離婚時年金分割という仕組みだ。夫が納付した厚生年金保険料を妻が納付したものと読み替えるものだ。
子どもがいる夫婦の離婚に際して、「約束の養育費を支払わなくなければ直ちに実行する」旨の条件付きの離婚時年金分割を調停書に組み入れることが一般化すればいいのではないか。公的な脅しである。
だれだって老後の年金は重要。若いときに保険料を納付しておかないと歳を取ってから泣くことになる。これにもう一つ、子どもの養育責任をまっとうすることを年金受給の条件に加えることになる。倫理的に当然のことだから、反対する声はないはずだ。