545防弾チョッキがウクライナ支援の切り札? 実効性ある装備で連帯証明を
ロシアの戦争目的が否応なく見えてきた。ウクライナの全面占領と実質併合である。そこで振りかえってみよう。2月24日以前、プーチンはそんな宣言をしていたか。平然とウソをつき、国際社会をだました。
ウクライナ国内にロシアに親近感を抱く住民がいるから救いたい。そう言っていたはずだ。それがなぜウクライナへの侵攻になるのか。
ウクライナにロシアに移住したい者がいるのであれば、着の身着のままでよいから、人道的配慮でロシアへの出国を認めてもらいたいと交渉するのが筋のはず。しかし現実に起きていることは、親ロシアの者が居座り、土着のウクライナ人が家、財産を捨てて命からがら難民として国外に脱出している。
ちょっと考えればわかりそうなものだが、親ロシアの者がいるから、そうした者のために他国に対して「国を割れ」などと要求する根拠はない。それこそ国際法違反の内政干渉ではないか。この点においてすら、ロシアの主張に正義はない。
さらにまたそもそも親ロシア人というのが怪しい。でっち上げという共産主義者の歴史を見ていればわかることだ。“親ロシア人”一人ひとりの身元調査をすれば何が出てくるか。先般、ドネツク人民共和国などなるものをでっち上げ、クレムリンでの条約締結式なる放映がされていたが、共和国代表の氏素性の紹介がされていなかった。恥ずかしくてできないのだと考えれば合点がいく。
岸田総理は対プーチンの話し合いでそのことを指摘したのだろうか。そしてプーチンはどう答えたのだろうか。(多分、そうした問題提起をしていないのだろうな。)
国際世論はロシアの非を鳴らし、ウクライナ支援の輪を広げている。わが国政府もそうした支援に乗り出しているが、分からない点がある。
防弾チョッキを送ることになったのだが、それについて「わが国は憲法の制約で殺傷力のある装備品を海外に出せないので」と解説する向きがあることだ。防弾チョッキ自体に殺傷力はない。それならば弾が入っていないライフル銃にも殺傷力はない。銃弾だけでも殺傷力はない。
そうした理屈が相手に通用するはずがない。ロシアへの経済制裁に踏み切った時点で、日本は戦争の一方に与しているのだ。プーチンはそう考えている。万一、民主主義側が負けて、その指導者たちがロシアの軍事法廷に引き出されたとしよう。ゼレンスキー、バイデンは有罪だが、岸田だけ放免はあり得ない。せいぜい銃殺と絞首の違いくらいだろう。賽は投げられたのだ、腹をくくるしかない。
ウクライナのゼレンスキー大統領は、「ウクライナ上空を飛行禁止空域に指定して、ロシア軍機の飛来を防止してほしい」とNATOに要請している。これにはロシア軍による民間人攻撃という人道犯罪への対応という大義名分がある。ウクライナ人がNATO加盟国に逃れてくる。その原因はロシア軍機の空襲にあるのだから、空爆停止を要求するのが当然のはず。飛行禁止にして、それを無視するロシア軍機を撃墜するのは当然の役割だろう。地上軍をウクライナに進めるのに比べれば、戦闘拡大の要素は小さい。ロシア軍機が飛来を止めれば、航空戦にはならないのだから。にもかかわらず、NATOは本格戦争になるのは困ると躊躇している。しかし論理的にはすでに、西側諸国(日本を含む)とロシアは戦争状態に入っているのだ。本格全面戦争になるか否かは、双方の覚悟しだい。本気の方が勝つ。そしてそれは正義のある方が覚悟も本気ということだ。
西側の覚悟が弱いと見れば、習近平は台湾に軍を進めるだろう。そうなれば世界大戦は確実である。予防策はプーチンの暴虐を止めること。そのためにはロシア軍機の爆撃をさせないこと。そうすればウクライナ軍の防衛戦も改善される。そしてロシア地上軍との戦線が膠着すれば、ロシア軍兵士の間に疑問が生じ、戦闘よりも帰還を要求することになる。反戦に向けての反乱は、独裁国家の軍隊ではよくあることである。特にロシアでは過去に何度も起きている。そうなって戦争は終わり、世界大戦を避けられるのだ。
さて日本についてである。侵略や威嚇をしないし、他国にもさせない。それが憲法の正しい解釈である。そのもとでロシアへの経済政策に加わった。ロシアの行動が純然たる侵略であり、ウクライナの闘いを純然たる自衛戦争と判断したからである。「自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務」を日本国憲法は強調する。ウクライナは、強国の侵略に対して自国の主権のために戦っている。それと連帯することでわが国自身の主権を守る。それが日本国憲法の平和主義の心髄なのだ。
国際的な非道に対して今回こそ逃げない。岸田総理と内閣は決断した。そのうえでのウクライナへの物資支援なのである。そうであるならば、だれにもわかるように、もっと効果的な物資支援であるべきだ。