366各国債務残高比べ
取引銀行の営業マンの話を「はい、はい」と聞いていたら、「世界の成長を取り込む資産形成を考える」というセミナーに参加する返事をしたことになっていた。
何度か電話で「〇月○日ですからね。忘れていませんよね。資料は郵送しましたからよく読んでおいてくださいね」といった確認を受け、いよいよ抜けられなくなった。救いはオンラインであること。「ZOOMで実施するが、ビデオは“Off”にとの注意書きがあり、居眠りしていても大丈夫。
その時間になり、講師の話が始まった。眠りは消え、最後まで聞いた。話の概要は以下のとおりだった
①日本は1990年頃を境にゼロ成長が30年も続いているが、成長軌道に戻る可能性はない。世界のGDPに占める日本の割合は、1980年9.9%、1994年に17.6%に拡大したが、その後は坂道を転がり落ちて2024年には3分の1の5.6%に下がる見込み。国別GDPの30年間(1990年から2021年)の増加率を見ると、米国3.8倍、ドイツ2.7倍、英国2.6倍、中国42.0倍、インド9.3倍、そして日本はわずかの1.7倍。
②その理由の一つが急激な人口減少。世界人口は1980年の44.6億人、2020年の77.9億人から2050年には97.4億人に達する見込みだが、各年の日本の人口シェアは2.6%、1.6%、1.1%と存在価値を減じていく見込みである。
③株式時価総額での世界シェアも1980年の15.2%から1988年には40.7%のピークを経て、2018年にはわずかの7.7%。国別株価30年間推移(1990年から2021年)は、米国13.1倍、ドイツ11.0倍、英国3.3倍、中国28.3倍、インド49.5倍、そして日本はたったの1.2倍。
④各国は政府財政の健全性確保に尽力しているが、日本の財政はバラマキ体質で先行き不安感しかない。令和3年度の政府一般会計歳入の実に34.9%(37.3兆円)が特例(赤字)公債発行収入。歳出では義務経費の社会保障が33.6%(35.8兆円)を占め、硬直化する一方である。その結果、累積政府債務残高はGDPの2.5倍に達しており、しかも増加の一途。
⑤しかるに日本人の資金運用は「現金・預金」が54.2%と過半を占め、「株式・投資信託・債券」が50.8%のアメリカと好対照。その結果、1987年から2021年までの34年間で、個人金融資産規模がアメリカでは8.16倍になっているのに対して、日本ではわずか2.52倍にとどまっている。安全運用を求められるGPIF(公的年金積立金の運用特殊法人)ですら、2010年は1904%だった外貨建て資産の割合を2019年には47.3%に増加している。しかるに個人ベースでは外貨建て資産比率は2010年の3.1%から2019年には2.8%とむしろ減っており、現金預金の比率は53.4%が54.7%へとわずかに増えている。
⑦そこで結論として、勇気をもってリスクを取った運用をしようと呼び掛けて講師の話は終わった。
④が気になったのでネットで政府債務残高の国際比較のグラフを探した。この図から何を感じ取るか。
講師は受講者に投資信託などの金融商品を銀行で購入することで、老後の安心感を得ようと呼びかけたのだが、効果はどうだったか。このままでは日本の政府は破綻する。そうなるとインフレで公的年金は紙くず化する。わずかな預金を下ろしてリスク性の資金運用に乗り出し、キリキリ胃を悪くしながら少々の運用益を上げたところで、大本の公的年金が機能しなくなれば、高齢者の生活は成り立たない。どのみち政府破綻を免れないのであれば、ジタバタせず、リスクを冒さず、爪に火をともす質素を心掛け、資金がなくなった時点で青酸カリでも服用する。
国民の思考がそうした後ろ向きになってしまえば、現実に国は滅びることになる。寄るべき国家を失えば、資金運用もへったくれもない。そうした質問をしようとしたが、受付け時間終了で受理されなかった。