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371男性の育児休業促進策

 男性社員の育児休業取得率が低い。女性が9割近いのに対し、男性は一けた台。なぜそうなるのか。生物の本能からして、母親が育児に当たる方が自然であり、共稼ぎ夫婦が話し合って、妻の方が休業することに決めたのであれば、それでいいのではないか。
 だがそれでは男女の雇用機会均等にうるさい諸国や国際運動体からの「日本は遅れた国」との批判が怖いと政府や政治家は思うらしい。そこで男性の育児休業取得率を高めろと号令が出るわけだが、仕組みが合理的でなければ人々は動かない。
 なぜ夫が育児休業を取得しないか。成果よりも職場在留時間の長さが人事評価されるのであれば、「ボクは一定期間職場を離脱しますよ」との宣言である育児休業を宣言するだけで、人事評価の点数が下がることは必定だ。その結果、同期入社仲間の中で将来、真っ先に肩叩きに会う可能性が高まる。子どもの教育費がかさむ時点で職探ししなければならない危険を冒すのに比べれば、育児休業の権利を放棄するのは微小なことである。
 また育児休業給付金は最大でも賃金の3分の2。年齢的に低賃金の若夫婦にとって、主たる収入源である夫の賃金カットは厳しい。
 この二つをクリアすることができれば、男性の育児休業取得は進み、両親で交互に家庭育児する“理想”に近づくことにはなろう。
 ではどうするか。さほど難しいことではないと考えられる。
 わが国の労働基準法にも年次有給休暇の制度がある。しかし平均取得率は至って低い。その理由は単純で、欧州のように夏などに1か月まとめてバカンスを取る習慣の人が少ない。現在の仕組みでは、使い残しの年休権は1年で時効消滅する。ここを少し改める。使い残しの年休権は原則1年で消滅するが、育児休業として活用する場合に限り、復活させることができるようにするのだ。
 例えば入社以来、年休を一度も使わず10年経過した社員の場合を考えよう。年休日数は累増制なので計算がややこしいが、初年度10日、翌年11日…としても7年目以降は20日分ずつあるから、300日を超える日数になっているはずだ。ここから立て続けに3人の子どもが生まれても、それぞれに100日以上の育児休業を行使できることになる。週休二日であれば20週間分だ。
 年休では賃金カットはないし、ボーナス減額査定の対象にもならない。しかも育児休業との併用を認めることで、会社の支払いは本来の賃金と育児休業給付金の差額にとどまる。年休を毎年使い切る労働者に比べて、育児休業との併用をする労働者は、会社の人件費抑制に協力していることになる。
当人、会社、政府の三方にとって都合がよい。その気になれば今すぐにでも実用化できる。

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