467財政出動の逆効果

 総額55兆円を超える経済対策。その大部分が将来世代への負担転嫁である赤字国債だ。予算は本来、本予算に組み込まれなければならない。それでは対応できない緊急時に講じられるのが補正予算。
 今の時期に必要な緊急事態とは何か。政府説明によると、それがコロナだという。そしてそれをほぼ全政党、前国会議員が支持しているという。どうかしている。今、何が緊急事態かと問われれば、習近平中国による領土領海侵奪、とりわけ隣国である台湾への侵攻の危機ではないのか。その作戦が実行されれば、少なくともわが国の南西諸島には中国のミサイルが撃ち込まれる。避けるための方策はただ一つ。彼(習近平)に侵攻作戦を思いとどませることだ。そのために緊急の対抗手段構築である。何十兆円もの補正予算を組むのであれば、防衛軍事関連の強化以外にはないはずだ。
 コロナ対策を軽視していいと言っているのではない。コロナに巨費を振り向けるような財政状況ではないことを明らかにしたいのだ。コロナ対策はカネをかけず、国民の協力で乗り越えることができるはずだし、そうしなければならない。連帯心、これがこの国の力の源泉。そしてコロナでも効果を発揮している。実際に専門家の予想とは裏腹に新規感染者は収まってきたではないか。
 コロナ感染者の入院病床確保策は必要だ。わが国は医療の民営を認めているが、いまだ3割は国公立病院。そしてこれらは非課税という優遇策の対象である。ならば国公立病院の経営者である厚労大臣、各県知事などが傘下の病院長に、病床の数%のコロナ病床への転換を命ずるだけで解決する。カネなど要らない。
 ワクチン3回目接種が急がれる。これまでの無料方針だと巨費が必要だが、今では国民はワクチンの重要性に気付いている。ならば今回から有料制に切り替えれば、少なくとも接種のための国費は不要になる。わがことだが、昨年生まれて初めてインフルエンザワクチンを打った。区の方針で無料だったからだが、副作用はなかったので安心した。区の方針が変わって今年は有料になっていた。ワクチンの有効性を感じていたから、今秋は喜んで費用を払った。今後もそうするつもりだ。
 国費を投入するのであれば、ワクチンの自国生産のための開発費補助だろう。それと感染発病した者用の治療薬開発。これらを自国開発しておき、外国に売れる商品に育てれば、補助金を返してもらう代わりに国内販売を格安にする交渉を国内医薬メーカーと協議できる。輸出で外貨を稼ぐのと合わせて、国民経済も政府財政にも益になるわけだ。こういうのを生きたカネの使い道という。
 コロナで仕事を失った世帯への経済支援にも異論がある。支援は重要だが、政府がカネを渡すだけでは本質解決にはならない。該当の国民が求めているのは仕事である。政府が行うべき経済対策は、国内で仕事を生み出すことである。まず、外国人出稼ぎにはお帰り頂き、国内で職を探す人に回す。次に、本格的に国内に新規の仕事を生み出す。そのためには企業に、生産拠点の海外展開をさせないよう働きかけることだ。政治家が熱意をもって支持企業を説得することだ。さらに海外に工場を出したものの期待の利益を出せていない企業に対して、生産拠点の国内再展開を促す施策(例えば税の繰り延べ)を講じることだ。仕事があれば、失業対策は先行き要らなくなる。そのための補正予算であるというのであれば、国民は納得する。
 わが国では30年間GDPがまったく伸びていない。ということは、その間に繰り返し投じられた経済対策補正予算は、まったくのムダ金だったことになる。政府資金を投じていなかったら、GDPは何割も落ち込んでいたかもしれないと説明する向きがあるようだ。政府がばらまきをしなければマイナスに落ち込む経済とは何か。逆説的だが、経済対策をいっさいしなかったら、かえってGDPは伸びていたのではないか。現に日本以外の国は30年間で最低でもGDPを倍増させているのだ。政府の財政投入と経済成長率との相関はどうだったのか。その検証が先決だ。
 カネをバラまくことで、経済停滞と政府財政を毀損し、加えて国民の将来不安を掻き立てている。その疑念が晴れない。そしてそれを恥じることなく、失敗をさらに大きく繰り返そうとしている。こうした悪政が続くようでは、代議制民主制を否定する者が出てくることを防げないかもしれない。1930年代のドイツのように。

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