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377平和の祭典の成果を活かす

オリンピックが終わった。無観客でもテレビを通じて世界中が観戦できた。そうすると今後も持ち回りで実施する必要があるのかということにならないか。古代ギリシャのオリンピック開催地が固定されていたように。あるいは持ち回りが継続されるとしても観客数制限が実施され、経済力が小さな国でも実施可能になるかもしれない。
オリンピックは「平和の祭典」という。かつてのギリシャでは大会中、都市国家間の戦争が休戦になり、その間に政治リーダーたちが頭を冷やして終戦のための知恵を絞ることができた。
現代オリンピックを世界平和のために生かすことはできないか。
素人考えを披露しよう。
世界平和にとって最高の権威は国連の安全保障理事会、15か国で構成される。現在(2020年時点)は、常任理事国が中国、フランス、ロシア、イギリス、アメリカの五国で、拒否権も持つ。このなかに好戦的な国が含まれているのが頭の痛いところで、そのせいで理事会はまともに機能していない。入れ替えが要求さるところだ。
このほか任期制の非常任理事国が10国で、ベルギー (2020)、ドミニカ共和国 (2020)、エストニア (2021)、ドイツ (2020)、インドネシア (2020)、ニジェール (2021)、セントビンセントおよびグレナディーン諸島(2021)、南アフリカ (2020)、チュニジア (2021)、ベトナム (2021)。()は任期切れの年。

ボクの提案は至って簡単。15国をすべて入れ替え制にすること。そして選出基準は直前のオリンピックでのメダル獲得数。
この基準で当てはめてみよう。国・地域別メダル(金・銀・銅)の獲得数順位は①アメリカ113、②中国88、③ROC(ロシア)71、④イギリス65、⑤日本58、⑥オーストラリア46、⑦イタリア40、⑧ドイツ37、⑨オランダ36、⑩フランス33。
冬季オリンピックを加えるか、パラリンピックをどうするかなどの考慮要素はあるが、国連加盟国の総会に任せることにする。
今回大会の成績を基準に先の10位までを当選国にすれば、現在の常任理事国すべてが含まれているから、常任制を廃止することへのガス抜きにはなるだろう。


理事会の定数15にはまだ5つ余裕がある。そこで残り五国は、国民の人口に対するメダル獲得の比率上位で選出する。この基準では、人口が少ない国にも当選の可能性が出る。ニュージーランド(メダル20)は当確だろうし、イスラエル(4)やモンゴル(4)も可能性が高い。台湾(12)は国連復帰すれば当選確実だ。ソ連からの独立を達成したジョージア(8)、アルメニア(4)、バルト諸国のラトビア(2)、エストニア(2)などの人口小国にも可能性が出てこよう。大国への牽制(けんせい)という点では、こちらの定数を10に増やすことも考えられる。人口少数国のメダル獲得で特筆されるのはわずか3万4千人のサンマリノが3個(銀2、銅1)を獲得したこと。人口3.4万人に一人は驚異的。日本では人口200万人に一人、中国では1600万人に一なのだから。安全保障理事会では特別扱いしてもいいだろう。現在の常任理事国制度はなくなり、同時にその特権である”拒否権”は今後はなくなるが、これを人口当たりメダル獲得数1位の国に特別に与えるとか。あるいは議長国の地位を与えるとか。
他方、インド(7)、インドネシア(5)などの人口大国は、理事国になるにはよほどの奮起が必要だ。
かくして諸国は国費の投入先を軍事面からスポーツ面にシフトすることが期待されることになる。メダルを取るには競技人口のすそ野を広げることが肝要だから、軍事大国においてもスポーツ振興へと予算構成が激変するかもしれない。また得意なスポーツ種目をオリンピックに入れることが国策になり、それをめぐって外交交渉が活発に展開されることになる。そのための多数派工作は、核ミサイルなどによる恫喝外交より数段ましだろう。
こうして国連の安全保障理事会が平和愛好国(スポーツに力を入れている国を一応平和愛好国と仮定する)で満たされるようになれば、国連憲章が本来の目的である国連軍ないし国連指揮下の多国籍軍が常備されることになる。同時に理事会に、侵略性ありと認定された国への国内軍備の査察、人権侵害を疑われる国への調査の権限を付与するのだ。
中国、ロシアはこの改正案に「拒否権」で対応するだろうが、その論理をどのように構築するのか見ものだろう。「第二次世界大戦の戦勝国の立場は次の第三次世界大戦が起きるまで変わらない」とでも主張するのだろうか。そうであれば論破は簡単。戦勝国はソ連であり、ロシアという国は存在しなかった。また中華人民共和国も同様で、戦勝国の中華民国は小なりといえども台湾国として存続している。直近オリンピック開催国であった日本として外交手腕の発揮のしどころであろう。

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