639世界人口80億人 民主主義後退の理由は明らか
わが国の人口は減少している。人口過剰の解決策として南米などへの移民が推奨された時代の経験がある者としては、まさに今昔の感。「世界には人口減の国もある」とうらやましそうに語る小学校の先生の言葉が耳に残っている。
社会に出てからも人口増は続いていた。それを前提に、賦課方式(後代負担)の年金制度を設計していたのだから、ボクも先に見えていなかった。将来の人口減予測もちらほら出ていたが、著名な学者でも「人口が減れば一人当たりの宅地面積が増えて、大きな家に住めるはず」とのんきなものだった。
それが今はどうだ。「国民が子ども生まないのだからどうしようもない」と政治家の大半もあきらめ顔である。ボクは間違いだと思う。子どもを生まないでも困ることがないから、むしろ生まない方がなんとなく得な感じだから、子を産まないだけのこと。社会環境を変えれば、瞬く間に出生率は回復する。その対策班は繰り返し発信しているから、今日は避けよう。
人口減少している国は実は少数派。世界規模では相変わらずの人口爆発である。今年の11月に世界人口は80億人を超える。コロナ禍にも関わらず順調に増加しているのだ。どのくらい伸びが激しいか。遡ると2020年75億人、2010年68億人、2000年60億人、1990年52億人、1980年44億人、1970年36億人、1950年25億人、1900年15億人…。資源や地球環境を考えれば、この伸びを停止させなければならない。わが国の預金金利並み(つまりゼロ)に。
では今後はどうなるのか。今の政策を続けていれば、世界人口はまだまだ増える。大きく増えているのはどういう国か。人口増が顕著なのは経済力が弱いアフリカ等の国々。「貧乏人の子だくさん」は国レベルでも該当している。衛生水準も生活水準も低いところでは、育ちあがる率が低い。それで人口が“定常”であったところに、先進国からの人道支援名目での経済支援が流れ込む。それで生活水準の向上と出生率低下が同時進行すればよいのだが、往々にして高出生率が維持され、死亡率は著減するから、結果は人口急増。国民経済の面では、腐敗による特権層の不正蓄財で庶民層の暮らしぶりは向上しない。
け格差は手のほどこしようがなくなり、不満を募らせた国民は暴動に走り、それを抑制するために専制独裁指導者が待望されるようになる。プーチンや習近平の小型版政権が増えていくわけだ。
わが憲法が「民主主義は人類普遍の政治原理」と明記していることもあってか、日本国民は民主主義が自然に達成されると思っているが、大きな誤解。「衣食足りて礼節を知る」が普遍原理であって、国民生活が貧しければ民主主義の実現が非現実的なのだ。国際的に民主主義の退潮が指摘されているが、それには理由がある。民主主義体制が定着するにはその基盤が必要なのであり、移植して育つようなものではない。
ウクライナで生じているのは、民主主義社会に移行したいとするウクライナ国民の意思を尊重しようとする西欧と、力で押さえつけて専制社会のくびきにつなぎ直そうとするロシアの独裁者の戦い。ウクライナの生活レベルが向上してきたから生じたことで、食うや食わずの常態にとどまっていれば、民主主義運動は絵空事で終わる。ロシア軍がウクライナのインフラを破壊目標にするのにも理由はある。
民主主義国を増やしたいのであれば、西側諸国は戦略を練り直す必要がある。開発途上国への経済援助は、そこの国民の生活水準が向上するように設計する。人口抑制の達成こそが援助項目に含まれなければならない。
ユニセフ主導で飢餓の子どもを救うキャンペーンで寄付を募っているが、民主主義を定着させる視点に立てば、逆方向の結果が見えている。50年先、100年先を見越した世界構想が必要なのだ。