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422ちょっとよかったこと

 昨日はいいことが二つあった。歳を取ると小さなことに感激する。
「すみませーん」。大通りの歩道で、後ろから声をかけられた。
 振り向くと、息を切らした女性が駆けてくる。
 はて? 見回したがボクのほかにだれもいない。
 追いつくと、紙片を差し出した。
「先ほどの窓口の者です。これに書き込みと署名をいただきたいのです。
 よく見ると、先ほど行ったお役所で対応してくれた人だ。
「これが必要なのですが、お願いすべきなのに気がつきませんでした」
 
 役所から100メートルは来ている。また引き戻すのは面倒だな。
 ボクの表情を読み取ったのか、彼女は「ここでいいですから」とボールペンを差し出した。それは助かる。立ったまま必要箇所に○印をつけ、署名をして渡した。
 これまでの役所的対応では、電話があって「手続きに不足があるのでもう一度出頭せよ」か、郵便で「この書式を埋めて提出せよ」。
 今回嬉しかったのは、彼女がわざわざ追いかけてきて、しかも引きもどすことも求められなかったこと。

 二つ目は次に行った銀行。ある会費を払いに行った。近頃はATMで払い込むのが多いが、請求書同封の用紙が機械対応なのかが分からない。
 銀行の玄関番の守衛に納付場を見せて尋ねた。咄嗟(とっさ)には分からなかったようで、彼は受付係を呼んでくれた。
受付女性は「この用紙は機械対応できます」とATMの方を指さした。機械待ちの行列に加わろうとしたボクに、先ほどの守衛が近づいてきた。
「書式をもう一度見せて」と言う。彼は老眼鏡をかけ直して書式の右端を指さした。
「○○銀行で振り込むと費用無料」と小さな赤い文字列。彼は言う。
「○○は本行のことです。窓口で手続きすべきでしょう」
 彼は受付係に声をかけ、その旨を告げた。それでボクは店舗内に入り、窓口で手続きすることになったのだが、ATMが長い行列だったのに対し、窓口は空いていてすぐに順番が来た。さっさと振り込みを終え、しかも送金手数料を節約できた。

 お役所や銀行は堅苦しい。ミスはすべて相手側にあると決めつける。地頭(じとう)様には勝てないとこちらは引き下がる。そういう慣例の対応に変化が起きているようなのが嬉しかったのだ。

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