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396コロナ陰性証明その2

コロナで発病すれば海外渡航は問題外だ。無症状でもほんとうに陽性(感染者)であれば周囲に感染させる恐れがあるから、基本的に海外渡航は遠慮すべきだ。これが常識だろう。389回の続きである。
これを超えての行動規制をするには権限ある各国政府による法規制の根拠が必要だ。それが民主主義国の行政である。いやしくも一介の医師の個人的判断で、他人の行動を規制するなどもってのほかである。しかも海外渡航に際しての規制権限を有するのは受入国である。アメリカに帰国する娘家族の場合はアメリカ政府である。日本の医師にはいかなる権限もない。某大学クリニックは、単なるPCRの検査機関に過ぎない。バカ高い料金のことは別にしても、娘夫婦から事情を聴くにつけ、ボクの闘争精神に久々に火が点(つ)いた。その日の夜間、アメリカCDC(疾病管理局)のコロナ入国規制などを勉強して翌朝に備えた。

外国からの路線での航空機搭乗に際して「コロナ陰性証明書」の提示を求めることはCDC文書に明記されている。したがって陽性判定の者の搭乗を航空会社が認めることはない。それをしたら航空会社はアメリカへの路線免許を取り消される可能性があるからだ。しかし搭乗拒否対象は「陰性証明を提示しない者」だけである。感染確実と考えられるものは自主的に旅行取りやめるべきとの記述はあるが、命令ではない。これで陰性の3人はアメリカ渡航の目処(めど)が立った。
保健所が家庭内での自粛を要請するのは、あくまでも日本国内での感染防止のため。感染者やその疑いがある者の海外渡航を禁じることはその業務範囲ではない。アメリカ政府が入国を禁止しない者について、日本政府が渡航をさせないということは、少なくとも感染症対策としてはあり得ない。しかしそうした議論をしようにも、後述のように保健所には電話が通じないのだ。
いずれにせよ、その1で掲げた選択肢A、B、Cのうち最悪のA(家族全員が搭乗できない)は打ち消されたわけだ。

でもそれで満足してはならない。だれひとり症状は出ていない。ということはコロナ感染の判定に誤りはないのか。某大学クリニックでの検査結果に絶対に誤りはないのかである。記憶に新しいところでは、群馬県前橋市の「エスアールエル北関東検査センター」で、8月2日から4日の間に県内の自治体や医療機関から依頼を受けて行った検査で、実際には陰性だったおよそ200人分の検体を誤って陽性と判定していたことが判明したと会社が発表、謝罪している。エスアールエルはわが国最大規模の民間検査機関である。某大学クリニックがどこの検査ラボに検体検査を依頼しているのか、あるいは独自に検査しているのかは知らないが、「当センターではミスは絶対にない」と言い切ることはできないはずだ。
ボクたちは翌朝、某大学クリニックを再訪し、下手に申し出た。もう一度、当の子どもの唾液を採取し直して検査してもらえないかと。これへの回答は要領を得ないものだった。検査センターでは同一人に対する二度検査は許されていないと言う。その根拠はと問うと、保健所の指示だという。こちらが他の検査センターで受け直して陰性証明を得たらどうなるのかと食い下がると、次第にあやふやになり始めた。そして別の医師が、受け持ち保健所から再検査の許可を得てくれば当センターで再検査してもよいと言い出した。しかしそこで担当地区保健所に電話するのだが、受信音はするが応答がない。何度かけても同じ。保健所の総務部門から内線を回してもらっても「コロナ担当部署は忙しいようでだれも電話に出てこない」。コロナで保健所がパンクとの報道はこのことかと合点した。
そうする間も時間は経っていく。ボクは奥の手を出した。ここに陽性判定を受けた子を連れてきている。即座に唾液を採取することはできるはずだ。センターの医師は、「陽性の人間を空港構内に連れてくるとはどういうことか。ただちに隔離する」と言い出した。これは予想されたことで、こちらの対応は「陽性であればおっしゃる通りだが、その判定について合理的な疑問があるので再検査したほうがいいのではないか」というものだ。検討するというので連れて行かれた“隔離室”で待っていると、医師が唾液採取キットをもって現れた。
それが済めばここにいるのは意味がない。再検査結果が出るまでは陽性または偽陽性なのだから、一刻も早く立ち去るべきだ。ボクは駐車場から車を回して、婿殿と子どもを連れていったん家に戻った。
センター側では、もう一度検体(唾液)を採取しても結果は変わらないと思っていただろう。

ここまでで前回の三択のうち二つが残ったわけだが、読者の予想はどうか。続きは1週間後にその3としてお知らせしよう。

B:濃厚接触者との誤解を解き、陰性だった者が先に帰国した。
C:家族全員が予定通りに帰国した。

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