748借金繰り返す母が生活保護拒否 どうしたらいい?
新聞の「人生相談」の内容です。相談者は50代女性。幼い頃に両親が離婚。父親に育てられ、母親とはときどきあう関係を続けてきました。母親は彼女の姉を育て、今も同居しています。相談者は2人姉妹のようです。
二親が1人ずつ引き取るのは離婚家族ではよくあるケース。ただし離婚で世帯は別れても親子感の血縁関係はなくなりません。
相談というのは母親の浪費癖とのこと。歳をとってからひどくなっているそうで、何かにつけて相談者に金銭援助を求めてきます。親戚からも借金を繰り返しており、自身の年金では足りず、同居の長女(相談者の姉)の年金も勝手に使い込んでいるのではないかと相談者は疑っています。
そして相談者が恐れているのは、父親が遠からず死亡した際の遺産の行方。離婚した母親に権利はありません。相談者と姉とで分けることになります。そのうち姉の取り分となった部分が母親に浪費されることを相談者は心配しています。
あなたが回答者であればどういうアドバイスをしますか。
①母親が正常な金銭管理能力を失っている理由として認知症が疑われるので、成年後見手続きを考える。
②姉が遺産を母親に奪われないよう信託などの防御方法を考える。
普通はこうでしょう。
弁護士である回答者の処方箋は違っていました。
③母親に生活保護を受けさせろ。相談者が引きずってでも役場に連れて行き手続きをしなさい。そうすればあなたは解放されるというものでした。金銭に困る人には生活保護があるではないか。それで解決だ。ともに苦労を背負い込むべきではない。
でもねえ、市民生活の基本法である民法では「直系血族及び同居の親族は、互いに扶け合わなければならない。」となっています(730条)。
これをどう解釈するか。母親が金銭にルーズの自業自得で生活困窮しています。離婚した父親には法的扶養義務はありません。でも娘はそうはいきません。同居の姉娘だけでなく、父親に育てられた相談者も同じです。「あんたのことなどしらない」と突き放すのは法に反します。というよりも人倫に照らしてどうか。民法はそうした人間社会の基本ルールを法制化したもの。特殊な事情でそれは無理というケースもあるでしょう。でもこの相談者事例がその特殊事情に該当するのかどうか。その判断を司法に委ねることは考えられますが、弁護士が「例外に該当する」と独断で判断していいことなのか。
血族の困窮にも知らん顔で、社会の責任と決めつける。出すのは嫌だが、もらえるものはとことん要求しよう。一部で見られる傾向ですが、社会の基本はそういうことではないと思うのです。社会はみんなの協力で成り立ちます。身勝手はいけません。弁護士の倫理感はどうなっているのでしょう。背中が寒くなる事例でした。