「貴方のヒーローになりたい」
「推しが武道館いってくれたら死ぬ」
とはよく言ったものだけれど
私が出会った頃の坂田さんは
既に日本武道館で輝くアーティストのひとりだった
時は遡り、
2023年4月29日
浦島坂田船10th Anniversary 〜Memorial Live〜
「浦島坂田船でさいたまスーパーアリーナに立つ」
それは今まで何度も何度も語られた、
坂田さんの夢だった。そして私の夢でもあった。
当日、さいたまスーパーアリーナに立つ浦島坂田船に私は目が離せなかった。ぼろぼろと大粒の涙を拭う暇すら勿体ないと感じるくらい、ただ焼き付けて
そんな念願だった夢の景色から少しずつ現実に引き戻されるような、数日後の配信だっただろうか。
「次の目標は何にする?」
他の枠より少しだけはやいコメント欄からそんな言葉を拾った坂田さんは少し考えて、
「じゃあ武道館!武道館ワンマンかな!」と一言。
いや〜夢だね〜(笑)なんて冗談めいた坂田さんの声色を聴きながら、その時既に告知されていた
今年のワンマンツアー【home】のことを考える。
例年、Zeppを主とした5都市のライブハウスを回っていた坂田さんのワンマンツアー。
今はスタンディング、それがいつか武道館。
ホールツアーすら自ら難色を示す程にライブハウス贔屓な坂田さんから出た意外な提案に私はあまり想像が湧かなかった。
まぁでも、いつかは叶うんだろうななんて漠然と思ったりして
その日新しく浮かび上がった
【さかワン武道館公演】という目標
今の私には想像もつかないけれど、
これから先、同じように何度も語られて
きっと私もいつしか切望するようになるんだろうなそう思っていた。
そしてそれから約1年後
2024年3月3日
浦島坂田船USSS SOLO FESTIVAL 2024
-ソロフェス- 日本武道館
日本武道館のステージでひとりでに歌う坂田さんのことはそれまでにも何度か見たことがあったけれど、
2023年のHomeを彷彿とさせる始まり方に
私の中で「武道館でのワンマンライブ」の想像が初めて鮮明になったと思う。
最初から最後まで、赤一色の会場
囁かれる甘い言葉に会場の温度が上がる瞬間とか、坂田さんの紡ぐ言葉にみんなが耳を傾ける柔らかい静寂とか。
武道館の大きな文字の前に集まって、
【あほの坂田ワンマンライブ in武道館】
なんて看板と一緒に写真を撮るのだ
グッズを買うために武道館のあの階段に沢山の人が長い列を作って並ぶのだろう。
ステージで輝く坂田さんを見ながら
そんな未来を想像したら目頭が少しだけ熱くて、
その日は、坂田さんが武道館でワンマンライブをしている夢を見た。
私の夢が更新された気がした。
坂田さんを応援するようになってから、
もう何度も季節を繰り返しているけれど
多分、今思えばずっと
何もない人生に、意味がほしかったんだろう
私の知る坂田さんの人生は、本当に物語のようだ。
凡人な私がいざ筆を取っても思いつかないような、あるいは「設定盛りすぎ!リアリティに欠ける!」
なんて批判されてしまいそうな程に
魅力的な仲間達に囲まれて、沢山の困難に立ち向かい、成長していく主人公のような人
日々止まることなく大きく、
そして遠くに進み続ける坂田さんを見ていると
何者になれない私が
たまに凄くちっぽけに見える時もあった。
坂田さんが大きく、遠く、より一層輝きを強める間
気づいたら私は中学高校大学を卒業して何となく気づいたら坂田さんとお揃いの「大人」になっていて
この世の中ではきっと何者にもなれない人の方が多くて、そして私もそのひとりだと気づいた日から随分経つけれど
きっと坂田さんの夢を一緒に背負うことで
自分も特別に慣れたように感じていた
…多分。
才能も、実力も、何も無かった私に、
坂田さんがちょっぴり責任を分けてくれたのだ
ワンコみたいな垂れ下がった耳が見えるように
ちょっとだけ申し訳なさそうな顔をして。
「坂田さん武道館でワンマンしたいんだって」
「私も見てみたくなっちゃった」
じゃあそれまでずっと応援しないとね、
なんて言われて「お互い何歳になっちゃうのかな」なんて悪態をついて笑った。
その為にはまず、明日の15周年を沢山お祝いしよう
今年のワンマンライブも絶対成功させてあげたいし、正直何年かかってもいい。
その夢が叶うまで走り続けてくれるのであれば。
次来る時は坂田さんのワンマンが良いな〜
そんなことを願って、武道館を後にした。
ただこの男、直感的即行動につき。
何度スワイプしても止まらないタイムラインと、
既にオフラインの文字の浮かぶツイキャスの画面に反射した、笑うことしか出来ない自分。
そんなの、
昨日の意気込みはどうなってしまうんだ。
そんな若干の気まずさと
どうしようもない期待に心躍らせて動き出した
【あほの坂田。
15th ANNIVERSARY TOUR -HERO-】
気づいたらあれよあれよという間に
私はツアー初日の大阪公演に足を進めていた。
シグナルレッド:
交通信号機で停止を意味する赤信号の色
赤は止まれ、停止信号、世界の常識
だけど坂田さんに出会ってしまったものだから
今までもこれからも
私にとって赤は「進め」だ
空港を出て、
すっかり歩き慣れてしまった大阪の街を歩いた。
あの大きな赤い観覧車を見ると、
初めて梅田駅に降り立ったいつかの日に大阪駅を探して1時間近くさまよい歩いたことを思い出してしまう。
貴方に出会う前のことは、あまり覚えてないけれど
ただ思い出すのは、私は何も知らない子供だった
インターネットについて
舞台について
良いファンとはどうあるべきなのか、とか
私にとっては毎日が学びの日々だった。
それでも、昔から
坂田さんの話を聞くのはとても楽しい。
年齢差とか男女の差とか性格の違いとか、
そういった外的要因は勿論あるかもしれないけれど
坂田さんは意外と雑学にも長けているというか、
変なところで博識なのだ。
坂田さんを熱心に目で追うようになって数年、
おかげで私の見える景色は随分と変わった気がする
知識は視力のようだった。
何も知らない私の目に補正をかける、
鮮明になる、視野が広がる
それは私にとってはとても魅力的で面白かった
だとしたら、私はきっと
他の人よりも知らないことや経験をしてこないことの多い子供時代を過ごしてきたと思う。
街に出るための切符の買い方は知らないのに、
ひとりで飛行機や新幹線には乗れるとか
日本地図もろくに覚えてやいないのに、
遠い地方の美味しいお店を知っているだとか。
それは紛れもなく坂田さんに出会ったからで
坂田さんに夢中になって、
きっと普通の青春はどこかに置いてきたのだろう
ただそれを後悔したことは一度もないし
これからもする予定はない。
大人になってからは
そんな経験したことの無い「青春」を拾い直して
【常識より偏った博識の方が面白い 】
そんないつかの貴方の言葉を証明したいと思う日々だった。
今年のワンマンライブはまるでドキュメンタリーのようで、坂田さんの努力と今日に至るまでの日々をぎゅっとまとめたような2時間だった。
坂田さんの代表曲で、
メジャーデビュー後初めてのソロ曲である
【スーパーヒーロー】
まるでテーマパークのヒーローショーのような世界観の中セットリストを含めこの物語は進んでいく。
普段から舞台のセリフや設定台本を手掛けることに長けている坂田さんの作る世界観はとてもコミカルで、それでいていつも起承転結がわかりやすい。
大声で手を叩いて笑ったかと思えば、
派手なアクションシーンに黄色い歓声が上がる。
時には手に汗握るようなピンチがあり、
【アニバーサリーツアー】という聞き慣れない単語に緊張した会場の空気を知らぬ間に包み込んでいった。
ショーの終盤にみんなで歌うスーパーヒーローは、公演数を重ねるごとにその温かさに視界が潤んだ。
今では定番曲としてお馴染みの盛り上がりを魅せるこの曲に改めて向き合うと、
その歌詞のひとつひとつがあの頃から変わらない坂田さんの温かさや人柄を再確認できるようだった。
何より、こんなに頑張っていたことを
私は今日の今日まで知らなかったから。
ダイエットで2キロ痩せたんだ!とか
ライブの振りが覚えられないよ〜;;とか
普段からほめてほめて!がんばった!なんて
人一倍の甘え上手に見える坂田さんだけれど、
存外大事なことは教えてくれない。
例えばそう、「歌ってみた」とか。
何時間もかけて録音して、依頼して、
既に完成されたものでも自分が認められなきゃ平気で無に返してしまうし、
忘れた頃に「そういえば」なんて何事も無いようにサラッと伝えてくる。勿体ない!と嘆くリスナーに「折角依頼したのに、確かに申しわけないんだよなぁ」なんてクリエイターさん達のことを慮ってしょんもりとするのだから殊更タチが悪いのだ。
「お前ら何でも褒めてくれるなぁ」なんて
坂田さんはいつも言うけれど、
そうでもしないときっと取りこぼしてしまうだろう
私達に見えない所での坂田さんの努力を想像したら、足りないくらいだ。
放っておくと何処までも努力してしまう人だから
それでいて自分がどれだけ頑張ったのかも忘れて、
周りへの感謝ばかりを優先させてしまう人なのだ
だからこそまるで幕間の映像を見て
こんなに自分のことに饒舌な坂田さんは珍しいな、なんてぼんやりと思った。
『15周年に寄せてヒーローを削るか、 』
舞台監督さんが提案するこの言葉を聴いた時
「ああ、そうだった」と思った。
ワンマンツアーの告知と同時に発表された
「楽曲リクエスト」
HEROと Anniversary
結果的に、他者主体であり自分主体な相反するふたつのテーマに対して、坂田さんがとった答えは
「どっちも!」だったのだろう。
「本当はセットリストに入れたかったけれど、難しい曲も沢山あって」
「この時、こんなことあったなって、思い出を振り返る時間にして欲しい」
そんなMCから始まった全12曲のメドレー形式
その言葉の通りになんの脈略もなく、
ただひたすら坂田さんと過ごした日々を走馬灯のように巡る時間だった。
その間、4都市のホールツアーでは
その殆どがモニターに歌詞もタイトルも表示されなかった。
それでもイントロが掛かった瞬間
真っ先に揺れる会場の空気と視界の遠くで崩れ落ちる影。ピタと止まったペンライトとその後小さく震える肩を何度も見た。
それだけで今流れているこの曲が誰かの「特別」であることをひしひしと感じた。
今まで歌ってきた坂田さんの曲の数だけ、出会いがあるのだと
勿論、私も例外ではなく。
泣きじゃくる客席を見つけて
少し満足気に困った笑顔を作った坂田さんを見て、この人に出会えて良かったと心から思ったのだ。
坂田さんのライブは
ジェットコースターみたいだと思う
急回転急降下急旋回
ぐるぐるでちかちかでへとへとで
疲れた!って思うのに憂鬱な日常でふと思い出す
あの夢のような刺激にまたすぐに会いたくなる
「坂田さんって本っ当に楽しそうに歌うよね」
そう言って付き添いで入ってくれた友人は心から不思議そうに笑ってくれて 改めて彼の眩しさを知った
「太陽みたいな人だ」なんて使い古された表現では足りないくらい、彼は眩しくて熱くて痛い。
誰から見ても天真爛漫で強くて遠い
直射日光のような人だ。
そんな坂田さんが、
そんなことを平気で歌に乗せる。
それが誇らしくて、特別で、自慢で。
坂田さんはずっと私たちのヒーローだけれど
この6月は、
きっと坂田さんが私たちをヒーローにしてくれた。
2024年6月30日 天気 晴れのち、雨
場所 日本武道館
チケットは全席sold out
そんな人型太陽に対抗するかのような雨空の中、
約八千人が集められた会場は日本中のどの場所よりも熱く、一面真っ赤に染め上げられていた。
まるで此処が世界の中心であるような感覚
きっと空から見下ろしたら、真っ赤に輝く此処は小さな太陽のように見えるだろうなと思った。
「実感全然湧かないんだよね」
それは昨年たまアリが始まる直前にも散々言い古した言葉だった。「そんなこと言ってどうせ始まったら大泣きするんだから」なんて言われて、自分でもそうなのだろうなと思っていた。
始まれば、終わる。
あの時のように一時も目を離さないように
それでもいざ会場が真っ暗になっても、
すっかり見慣れたヒーロー衣装に身を包んだ彼が目の前に現れても、
透明なスクリーンを一枚隔てたみたいに、
私は実感が湧かなかった。
此処が夢にまで見た武道館で、
今目の前で声を震わせて汗だくになりながら拳を突き上げている彼は私の大好きな人で。
天井から会場の端っこまで埋め尽くされた赤色の数だけ彼は人を変えてきた。
実感は全く湧かないのに、
理由もなく涙が止まらなくて
私は顔を覆って声を出して泣いた。
念願だった武道館に立つ坂田さんがそこにいるのに
その姿を見ることよりも、
耳を通り抜ける歌声は存外色んな思い出を呼んできた。
夜行バスに飛び乗って、
寝不足のまま初めて貴方に会いに行った日
スタンディングに埋もれながら人と人の隙間から赤色のペンライトを抱きしめていた日
大きな会場の1番上の席から貴方の姿を見失わないことに必死になっていたあの日
そんなことばかりを思い出していたけれど、
中学生の頃実家の共用のパソコンで出会ったこの曲
緊張した時にはいつも心を落ち着けるために聴いていたあの曲
私の日常は存外坂田さんの歌声で溢れていて
私が思っている以上に、
私はずっと坂田さんの歌に救われていたのだ
もしも今初めて坂田さんと出会ったとしても
多分また目を惹かれて、同じ曲に救われて、
また同じように好きになるんだろうと思うけれど
今日この沢山の思い出を抱えたまま
この場に立てていることが本当に嬉しかった
きっと世界には、
もっとたくさんのかっこいい顔の人がいて
歌の上手な人がいて
ダンスの上手な人もお話が上手い人も
物覚えが良い人もいるだろうけど、
だけれど 私は坂田さんが好きでした。
お顔をくしゃくしゃにして笑うところ
お歌が好きで、心から気持ちよさそうに歌うこと
一歩一歩正解を探すように踏みつける少し力んだ足のステップも、
台本を用意することが嫌いな貴方がその場の勢いででも少したどたどしく、いつもとても丁寧な言葉で伝えてくる言葉。
苦手なことも必死に努力する坂田さんが、
そんな坂田さんが嬉しいときに流すぎゅうっと堪える静かな涙が、わたしのハッピーの印でした
坂田さん、改めて、武道館公演開催おめでとう!
どうしても伝えたかったことがある。
坂田さんの決意がぎゅっと詰まった大好きな曲
初日、大阪公演。
少しだけ背伸びをして坂田さんに震える声で伝えたあの時のことは、正直情けなくてあまり思い出したくない。
椅子に座りながら此方を少しだけ見上げて、
えぇ?なんて傾げたへらりとした笑顔も、
少し汗で張り付いた前髪も
きらきらというか、ちかちかというか、
目の奥がぎゅぅっと熱くなったのだって覚えているのに
「もうなってるのに?」
「大好き」だとか「愛してる」よりも一等重い
告白にも似た感覚の私の一世一代の宣言に
あっけらかんと返した坂田さん
その笑顔を前にして私はどんな顔をしていたのか
いつまで経っても思い出せない。