11/n シン・上刃の角度 チェンソー、ソーチェーン(チェンソー用チェーン)、目立ての正しい理解
ソーチェーンサービスジャパン(略: SSJ)です。
SSJは当事業体(2024年2月スタート予定)の宣伝も兼ねて、タイトルの記事をシリーズ化してnote上に公開することにしました。本記事の内容はXアカウントのhttps://twitter.com/SSJP2023 固定ツイートで先行公開していますが、noteで公開する内容は、Xアカウントで公開中の資料 「4D Sawchain Study」の「 V.1.25」以降の内容となります。
敵は我なり…上刃の角度の話
上刃の角度というと、古くは「チッパーは35度、フルチゼルは25度」と言われていました。現行のチッパーはハーベスターでは11BC、ハンドヘルドでは59ACLのみとなり、どういうわけか「上刃の角度は30度」と言われるようになっています。今回はこの辺りの経緯やメカニズムを解説するのに加えて、上刃を変化させたらどうなるのかを解説していきます。気にしなくてもある程度切れますので神経質になり過ぎる必要はありません。
用語1: 上刃目立て角
上刃の角度＝目立てをする時に丸ヤスリを上から見た時の角度(SSJ用語: 垂直視点角)、として使われる用語ですが、丸ヤスリを持つ手元を上げたり下げたりするダウンアングル(SSJ用語: 水平視点角)の有無や、トッププレートのチルト、逃げ角、トップエンドからカッティングポイントの幅、カーフによって、上刃目立て角と「目立て後の上刃の角度(SSJ用語: 上刃仕上角)」はズレが大きくなっていきます。
同じ垂直視点角で研いだ場合に仕上角が鋭角化します。
用語2: 上刃仕上角
用語１参照
用語3: 上刃切削角
画像の赤線部分が成す角度です。
青＝横刃切削角
届け雷…なぜ35～25度？
「チッパーは35度、フルチゼルは25度」はワーキングコーナーの違いと、カッティングポイント～トップエンド間の辺の長さ、その２つを踏まえた仕上がり精度の許容度を踏まえて言われていた数値と思われます。ワーキングコーナーの存在が大きい程、曲がり切りは抑えられ、辺の長さが短い程、直線ストロークのバラつきの差が少なくなります。
狙い澄ました30度の証言
最初はチッパー＝35度しか存在しなかったのが、続いてフルチゼル＝25度が発明され、チッパーとフルチゼルの中間の形状を埋めるように、マイクロチゼルやセミチゼルの種類が増えていきました。本体のパワー=直進の慣性も進化して、説明する際の角度が「30度＋フルチゼルの目立ては難しい」に集約されていったと推測されます。
証言１、新品時の上刃仕上角の違い
「上刃目立て角は30度」と一言でいっても、メーカーによって上刃仕上角は異なります。セミチゼルやフルチゼル問わず、スチールの方が鋭角で、オレゴンの方が鈍角になっています。
投げないで匙、鋭角鈍角
上刃仕上角を鋭角にするとカッティングポイントとトップエンドを結ぶ辺の長さは長くなり、鈍角にすると逆に短くなります。長さが変わるだけだと思うかもしれませんが、そこにはソーチェーンの進行方向に対する梃子の原理が個々のカッターに働きます。辺が長い方がチェーンがまっすぐ進むために大きい力が必要になり、短い方が少なくなります。上刃の仕上角を鋭角にすれば尖るから単純に速く切れるとうわけではなく、梃子で増大する分の力が、尖った分で減る摩擦抵抗を上回ると、ドライブリンクがバーのレールの中でドリフトするようになり、どうやっても切れ味が遅くなります。ちょうどいい塩梅があるということです。
水車の直径が大きくなるほど、回転軸へ掛かる力は大きくなる
麓に聳える上刃切削角
上刃仕上角を鋭角化させた場合の「切れ味の鈍りが早くなる」以外の不具合(鈍角化させた場合は単純にスピードが遅くなる以外の不具合が出にくい)は、水平視点角から出来上がる上刃切削角で補うことができます。上刃仕上角を鋭角化＋水平視点角有で研いだのに、切るスピードが極端に遅くなる場合は、梃子の力がパワーバランスを超えたか、上刃切削角が鋭角過ぎる合図です。少し水平視点角を緩く＝手元を上げると、カッティングポイントの横ブレとバランスが取れて本来の切れ味になります。反対に、水平視点角無＝バーに対して水平を意識して研いでいた場合は、切削角が鈍角化し過ぎていないかを見てください。上刃仕上角を鋭角化すれば目立ての仕上がり精度の許容度は下がるので、いつもより一段意識を上げる必要があります。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか？