33/n 作業後編 逆算の「災害とチェンソー」 チェンソー、ソーチェーン(チェンソー用チェーン)、目立ての正しい理解
ソーチェーンサービスジャパン(略: SSJ)です。
SSJは全国向けにソーチェーンの目立てを事業として行っています。宣伝を兼ねて、タイトルの記事をシリーズ化してnote上に公開することにしました。本記事の内容はXアカウントのhttps://twitter.com/SSJP2023 固定ツイートで先行公開していますが、noteで公開する内容は、Xアカウントで公開中の資料 「4D Sawchain Study」の「 V.1.25」以降の内容となります。
災害時のチェンソー作業を逆算する
台風や大雨、地震、津波といった自然災害が発生すると、それに伴う倒木や流木、家屋倒壊が起こり、交通網の断絶解消や閉鎖空間からの救助の為にチェンソー作業が発生する場面があります(書いてる今は能登半島地震のことも連日ニュースになる中で台湾地震が起こったところです)。私は生の過酷な現場を熟知・経験しているわけではありませんが、「いつか今より良い環境ができるかも」という思いで、専門であるソーチェーンの観点から逆算して、チェンソー作業の前・中・後での選択肢と情報をまとめて、最後に総としておきたいと思います(まとまるかなぁ?ちなみに本記事は「後」です)。興味があるんだけどな~という方から、実際に現場での作業を経験している方、入札調達の実務や仕様を決める方々、チェンソーメーカーやチェンソー専門店の方々に本記事の情報が直接的にでも間接的にでも役立つことを願います。
作業後
逆算なので「作業後」から考えます。メーカー時代から今に至るまで消防や自衛隊の方から実際に聞いた多くの声が、「所有しているチェンソーの仕様がバラバラで困っている」や「(災害の復旧現場から)チェーンを購入できるところを教えて欲しい」というものです。災害に限らず「チェンソーあるある」ですが、対処法や一考に値することをまとめます。
仕様やメーカーがバラバラで困っている
これには作業前の入札の時点から勝負が始まっています。チェンソーのチェーンとバーには規格があります。ピッチとゲージだけでなく、並んで大事なコマ数(チェーンの長さ≠有効切断長)、更に仕様を揃えるとなると、作業中(次回)で重要性を解説するバーの取付形状(バーマウント形状 1つのメーカーでも大・中・小用とあります)を揃えることも重要になってきます。こうすることで部品の共有化ができますし、マウント形状まで指定すると見積の時点で「こちらの方が同じような能力で安くなっておりまして…」というのが圧倒的に減ります(これでも0%にはなりませんが少なくとも部品の共有化ができます)
ピッチ×ゲージ×コマ数×マウント形状の組み合わせは、チェンソーメーカーごとに、他社製にユーザーが流れていかないようにあえてズラして設定されているのが「チェンソー業界の普通」です。逆に販売力が弱いメーカーほど大なり小なりこの組み合わせを販売力の強いメーカーに合わせてきます。
例: コマ数が1つだけ違う(1つでも違うとOUT)、ピッチ&ゲージ&コマ数が一緒でもバーのマウント形状が違う…
入札前の仕様を決める時点で、発注者側が予算と共にこれらの条件を詰めていく必要があります。既存の装備との互換性や、今後の装備の統一を考えないとこの問題は解決しないということです。
日常的にチェンソーを使う林業や造園業でも、1つ1つの現場や作業段階に対応する為に、異なる排気量帯のチェンソーを複数(大・中・小)で揃えています。なおかつ、なるべく部品を共有化できるようにということも考えています(小と中でチェーンのコマ数以外の規格を揃えるor中と大で以下略)。調達の時点でも作業中・後を考えて、なるべく揃えておかないと四苦八苦することになります。ただ、完全に揃えてしまうとサプライチェーンが詰まった時や、メーカーの統廃合が起きた時に困ったことになってしまうので、メインとサブなのか、50:50なのか、あえてこのままバラバラにしておくのか、正解が何かは断言できません。
(災害の復旧現場から)チェーンを購入できるところを教えて欲しい
洪水があった地域からの問い合わせでした。簡単な質問のようで装備のバラつきと流通の実情をある程度知っている身からするととても大変です。国内で最も流通量しているチェーンは325ピッチですが、たとえ同じ本体メーカーの325ピッチ仕様のチェンソー、同じ本体型番でも、購入時のオプションによってゲージが異なることがあります。つまり、「メーカー〇〇、型番△△の××cm用」と指定しても「これとこれがありますがどちらでしょう…」となってしまうのです(加えて38〜42ccクラスでは同じ本体型番やバー長でも1/4、3/8LPのピッチ仕様も正式にチェンソーメーカーから販売されています)。災害時の作業には広域から応援の人や装備が集まってくるものですから、仕様がバラバラであると現地調達するにしても何が何本と取りまとめるだけでも大変になります。
専門店ではこのような様々なチェーンの組み合わせに対応できるように1本のループチェーン(カットチェーン)だけではなく、切り出して繋げるリールも置いてあるものですが、チェンソー専門店と言っても推しのメーカーや地域によってゲージ別の在庫があったりなかったり、揃えてるピッチにですら多寡があったりします。25の在庫が豊富な店もあれば、91、21、22と、本当に地域と店によってバラバラです。まして災害時だと流通が滞ったり、地域の専門店も被災していることもあるのですから、ますます現地調達に期待してはいけません。
更に、レスキューチェーンやカーバイドチェーンとなるとその量はグッと減ります(特にレスキューチェーンは店舗で在庫されているのを見た記憶がありません…)。これらは店舗での在庫量が少ないだけでなく、メーカーの生産量自体も少ないですから、需要が急に上がってもメーカーにも在庫が無いということが起こり得ます(ユニクロやGUのように小売店同士で在庫を広域でシェアできるシステムもありません)。
325ピッチに話を戻しますが、325にはゲージだけでなくフルチゼルやセミチゼル、マイクロチゼル、バンパーの有無も選べるようになっています。復旧現場でのユーザーの実情を作業中・後で考えるとピッチによらずフルチゼル以外のバンパー有(グリーンラベル)が1番です。フルチゼルより土砂のダメージに強い(といってもレスキューやカーバイドに比べると僅かな差)ですし刃の切れ味が長持ちします。目立ても容易です。バンパーもあればキックバック角度が緩やかになるので、家屋倒壊や流木で重なりあった木や材に対してもイエローラベルよりは安全です。二次災害が起きにくいということです。
ピッチとゲージ、コマ数まで含めて専門店以外でも本当にどこにでもある=最も流通量が多いとなると91PX052、91チェーンの52コマになるでしょうか。複数のメーカーで使われてるチェーン×コマ数でもあります。但し、このチェーンが純正の本体となると、35cc前後であり、有効切断長も14インチ(35cm)なので、作業前後の調達は容易ですが緊急性の高い段階ですと能力不足です(40cc超でも91-052仕様にすることはできます)。災害発生から時間が経ち、緊急性が低い段階の家屋倒壊の現場では逆に役に立つかもしれません。住居に使われる木材は規格で統一されているので、それほど長い切断長はいりませんし、バーも短いので折り重なった材に対して余計な箇所を切ったり、チェンソーが前に引っ張られないように支える必要も少なくなります(スパイクと材にチェンソー本体の荷重を預けられる)。本体の重量も軽いので不安定な足場で体勢の維持も容易と思います。
続
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