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17/n シン・横刃の角度 チェンソー、ソーチェーン(チェンソー用チェーン)、目立ての正しい理解

ソーチェーンサービスジャパン(略: SSJ)です。

SSJは当事業体(2024年2月スタート予定)の宣伝も兼ねて、タイトルの記事をシリーズ化してnote上に公開することにしました。本記事の内容はXアカウントのhttps://twitter.com/SSJP2023 固定ツイートで先行公開していますが、noteで公開する内容は、Xアカウントで公開中の資料 「4D Sawchain Study」の「 V.1.25」以降の内容となります。

横刃の角度

青=製造時点の横刃仕上角
赤=製造時点より鋭角
緑=製造時点より鈍角

 カッターを外側から見た時の角度です。「横刃目立て角」と一般的に言われている角度です。横刃目立て角も角度の選択ができますが、”横の2段研ぎ”を除外して、他の角度(上刃目立て角&垂直視点角=上横切削角)やヤスリの高さ、径を変えないことには、横刃の角度だけを変えるということはできません。また「横刃目立て角」という言葉を使ってしまうと、元からの品番がごとに異なる「カッターの設計(ジオメトリー)」がすっぽり頭から抜けてしまい、実際に「いつもの横刃目立て角」を目指して研ぎ終わった後、横刃の目立て角の仕上がりの差に悩むことになります(「ジオメトリー」は角刃だセミチゼルだとかを含めたもう1歩先の話です)。これはそもそも、3次元の物体を上と横の2つの2次元で分けて考えてしまうことで、上と横を合わせた際の出力結果と現実との間に乖離が出て云々……ということはさておき、SSJでは一般的に「横刃目立て角」と言われる横刃の角度を「横刃仕上角」としています。閑話休題。
 YoutubeのFactry Qチャンネルのように3D CADでモデルを作って動かしながらグルグル回して説明すれば簡単に分かるのですが、残念ながらありません。3D CADとソーチェーンのカッターの両方の知識が無いと読むのが辛いと思いますが、特にチェンソー講習やメンテナンス講習を講師側で行うような方は頑張って読んでみてください。今回の内容とは関係ないですが、Factry Qチャンネルで3Dモデルが効果的に説明に使われている様子です。

横刃のトリック①

上刃の垂直視点角を鋭角化させた場合の、横刃の仕上角が鈍角になるということを画像で示します。

垂直視点角
横刃仕上角
同じカッターで見る視点だけを変えた時

 はい、見る角度を変えたことで『ソーチェーンの正しい目立て』で理想とされる90度の横刃仕上角になりました… というのは冗談です。ですが、横刃仕上角を立たせるというのは、「丸ヤスリの円形を3次元空間上でどの向きにして配置するのか」ということを、視点の代わりに丸ヤスリの角度を変更することで実現します。よく分からないと思うので100円玉の「円径」が3次元空間上で向きを変えると見え方が変化するということを画像で示します。

左から楕円形、円形、直線(長方形)

 上刃切削角を55度とした場合の頂点の切削角53度(1/5頭出し仮定、また、カッターの上刃天面は仕上がり角0度でも水平ではなく、頂点側に向かって上がっている為)は消えたわけでなく、垂直視点角を鋭角にするほどカッターの内側に存在するようになります。
 ヤスリの垂直視点角を変えて横刃仕上角を鈍角にした場合は見え方の違いだけでなく振動と切れ味の違いに関わってきます。横刃仕上角を鈍角にするほど縦方向の振動が弱まり、頂点の持続性は向上します。仮に、他のパラメータは変えず、横刃仕上角単体で鈍角にすると切れ味としては落ちるのですが、連動して上刃仕上角と上刃切削角、横刃切削角も変わるので、トータルでは切れ味が向上します。鋭角鈍角どちらもゾーンがあるので、ゾーンを超えると切削効率が破綻します。

横刃のトリック②

 ①の内容を表面上でだけ理解すると、「横刃仕上角を90度にするにはどんだけ丸ヤスリ=上刃を鋭角にしなきゃならないんだよ!」と思った方もいるはずです。ここで大事なのが、丸ヤスリは円筒形であるということと、カッターのワーキングコーナー、加えて横刃の3次元的な厚みです。
 カッターを上から見た時に、頂点の外側に位置するゾーンをワーキングコーナと言います(カッティングコーナーというとカッティングポイントと混同する方が多いので、SSJでは「ワーキングコーナー」と呼びます)。この上から見たワーキングコーナーは”たとえピッチもゲージも同じで同じセミチゼル(またはフルチゼル)と呼ばれるもの”でも各メーカーの設計=ジオメトリーによって、上から見た時の幅=カーフエンドの位置が変わります。つまりナローカーフかと思うかもしれませんが、横刃仕上角を理解する為にはナローカーフとは別でこのワーキングコーナーの幅を認識しておかないと、「自分の目立てが悪かったのかも」という不毛な(以下省略)

赤がカーフエンドの位置
ジオメトリーにより頂点とカーフエンドを結ぶ青線の長さ=ワーキングコーナーの幅が変わります
上刃の★=カッティングポイントに対して、ワーキングコーナーと横刃がどのように位置するか+カッター形状による違いを表した画像

ワーキングコーナーの幅の違いが横刃仕上角にどう影響するかを図で示します。

カッターに対する丸ヤスリ(青点線)の位置

仮に、丸ヤスリの角度はそのままに、設計時点でワーキングコーナーの幅だけが狭い場合は以下のようになります。21BPXや26RMからRM Proや95TXLに乗せ換えた後に研いだことがある方はその時のことを思い出してみてください。

ワーキングコーナーが狭まると丸ヤスリの垂直視点角が付いている分、上から見た時の横刃が頂点に対して後退するので横刃仕上角は鋭角化します。

少し大げさに、ワーキングコーナーが幅広のカッターの場合は以下のようになります。

上から見た時の横刃が頂点に対して前進するので仕上角は鈍角化します。

これらのことは通常使用する範囲では特に意識しなくて構いません。横刃仕上角は引き算の結果であるので、引き算の結果を変えたければ式の何かを変えるしかないということを覚えておくことが大事です。また、引き算の結果が意図しないものになった時は、式の構成要素を認識していないだけです。

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