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「留学×SSEAYP」第2弾-羅針盤#8

 新連載「留学×SSEAYP」。3か月以上の長期留学を経験したかつ,東南アジア青年の船(以下,東ア船)に参加した人に,「両方を経験したからこそ,得られたこと」を主軸にインタビューしました。連載第2弾は,第44回(2017)年に東ア船に参加した楠原佳奈さんです。

※「東南アジア青年の船」に関する詳細は,こちら内閣府のウェブサイトをチェック!
※2019年度の募集要項に関しては,こちらを参照ください.

———よろしくお願いします。まず簡単に自己紹介お願いします。

 楠原佳奈です。21歳です。奈良女子大学の3回生なんですが,1年休学していたので4回生を2回やる予定です。

———この1年休学っていうところで,留学と東ア船に参加したんですか?

 そうですね。留学はアメリアのテキサス州オースティンに行きました。この留学は交換留学ではなくて,トビタテ!留学JAPAN(以下,トビタテ。※注1)の奨学金を利用して,自分で留学先を決めていきました。トビタテのテーマは「性の多様性」で,LGBTQ(注2)フレンドリーな街で有名なオースティンでボランティアだったりインターンをしていました。

※(編集注1)
2014年に始まった,文部科学省が主導する官民共同の留学支援制度。奨学生は従来型の,授業を受けて単位を取る「座学式」の活動のみならず,インターンやボランティアなどの「実践活動」,日本文化を留学先に発信する「日本文化発信活動」をすることが求められる。詳細はこちら
※(編集注2)
 Lesbian, Gay, Bisexual, Transgender, Queer (Questionning)の頭文字を取った,性的少数者の略称。

———そこを留学先に決めた理由は何だったんですか?

 一番の理由は,LGBTQフレンドリーな街ということで,そこではどういう風に社会が成り立っているのかだったり,当事者たちがどのように生きているのかを自分の目で見て見たかったことです。

(インターン先のテキサス大学,Gender and Sexuality Centerの仲間達)

———留学はこの「性の多様性」がテーマだったとのことですが,そのテーマにしようと思った大元のきっかけなどはありますか?

 大元のきっかけは,知り合いがカミングアウトを誰にするか,ということを私に相談してくれた時です。その時に初めて,環境が変わればそのような性の多様性が悩みになり得る,ということに気付きました。そのあと,大学の授業でLGBTQのトピックについて考える機会があって,さらに興味が出てきたのでその勢いでLGBTQの人々が働きやすい社会をつくることを目指すNPOでインターンを始めました。そのインターン自体は2か月間だけだったんですが,そこでさらにこの世界のことを知りたいと思うようになって,留学までつながった,という感じです。

———なるほど。ここで少し時系列を整理したいんですが,順番は「東ア船→留学」ですよね?準備の方はどんな感じだったんですか?

 参加した順番はそうですね。2017年の10月から12月に東ア船,そのあと8か月間留学です。ただ,準備はほとんど同時期にすすんでいて,どちらも2月ごろに書類を書いて提出,それで5月くらいに面接の選考がありました。決まったのも確か同じくらいの時期でしたね。

———なるほど。ほとんど同時に準備を進めてた中で,東ア船にも参加しようと思った理由は何ですか?

 もともとのきっかけは,私のおばさんが第18回の参加青年だったことです。そのおばさんからずっと東ア船参加したほうがいいと勧められていて,それが知ったきっかけです。それで,「応募するか」みたいな感じで応募しました。

———そうだったんですね!いざ東ア船に参加してみて,得た経験の中で一番大きかったものって何ですか?

 「みんな一緒」ということですね。ふつう,国際交流の場だと,言語の違いとか文化の違いとか,やたらと「違い」が強調されると思うんですが,東ア船ではむしろ「一緒」の面の方が多く見えたことがとても印象に残っています。例えば,ムスリムでお酒が飲めなくても,ソフトドリンクをもってきて飲み会に参加してたり,宗教の違いがあってもみんなでワイワイしてたり。また,例えばこれまで何かの社会問題を論じるときは,自分が第三者として,その問題は顔の見えない他の誰かのものとして語ってたことが多かったんですが,実際に様々な社会問題を当事者として経験している人たちに多くあったりする中で,「自分もこの社会を創る一員で,自分の小さなアクションからも社会は変えられる」と思ったことも,大きな経験だったと思います。私は先ほども少し述べた「性の多様性」や「性的マイノリティ」を個人的なテーマにして東ア船に参加したんですが,漠然としたターゲットを相手にするんじゃなくて,今となりにいる友達だったり,そういう身近な人に少しでも意識を変えてもらう,そういうところから社会は変わっていくんだな,と今では感じています。

———「身近な人に少しでも意識を変えてもらう」っていいフレーズですね!誰もが誰かに影響を与えうる存在というか。「性の多様性」や「性的マイノリティ」をテーマにしてたということなんですが,東ア船に参加して自分の考えが変わったり,自分の考えに影響を与えた何かはありましたか?

 ありましたね。地方プログラム(注3)の時の話なんですが,その時にホームステイメイトがインドネシア人の子だったんですよ。彼女もムスリムだったんですが,性の多様性が禁止されてる国(注4)では人々がどんな意見を持ってるんだろう,ということに気になっていて,その子に訊いてみたんですね。そしたら「そういう問題は彼ら自身が決めることだから,私たちがジャッジすべき問題ではないと思う」という答えが返ってきて,安心したんですよね。こういう問題を話すときって,宗教のルールに反することがあるのでよく宗教が敵になりがちなんですが,少なくとも反対する人ばかりじゃない,ということを知って安心しました。

(※編集注3)地方プログラム
 乗船前に日本国内で行われるプログラムの名称。東南アジア青年の船は,東京から船に乗る前に東南アジア10カ国の青年が一度来日,東京に集まり,11グループに分かれ指定された地方の各道府県・都市を訪れる。
(※編集注4)
 イスラム教を国教とする国では,基本的に性の多様性が認められていない。

 (楠原さんが企画したPYセミナーでの写真)

 あと,PYセミナー(注3)で「性の多様性」をテーマにセミナー開いた時も,ムスリムの子たちもたくさん来てくれて,いろんな意見を聞くことができたのは本当に貴重でした。これは,友情を築いた後だからこそできたことだとも思っています。中には,もちろん私とは違う意見を持ってる人もいて,問題は単純じゃないことを痛感したんですが,それでも,背景にあるのは「同じように」学校や家庭の環境に影響を受けてその考えを持ってるって事なんですよね。自分と違う人が自分と違うものを大事にしてるけど,それを大事にしたいと思う根拠は同じなんです。そういう「リスペクトの気持ち」に気づけたのはとても大きかったと思います。

(編集注5)PYセミナー
 参加青年が自分たちでセミナーを企画し実施する,船内プログラムの一種。PYは,参加青年の英語Participating Youthの略。

———次に,留学と東ア船,2つに関する質問をします。かなさんは東ア船に参加してから留学に行った,とのことですが,この順番で行ったからこそ得た学びなどはありますか?

 そうですね,さっき少し話した「リスペクトの気持ち」を東ア船を通じて学ぶことができたので,それこそ宗教的な多様性だとか,性の多様性ももちろんですが,他の国や文化のことまで理解が広まったりしました。留学先にはもちろんアメリカ人だけじゃなくて他の国からも留学生がたくさん来ているので,その「リスペクトの気持ち」をもって彼らの接することができたのはよかったと思います。

———東ア船と留学の経験を,今後どう活かしていきたいですか?

 今後,これまで自分がテーマにしてきたフィールドで働くかどうかはまだ分かりませんが,「性の多様性」ということをテーマに据えたからこそ得た学び―「マジョリティ」と「マイノリティ」の視点どちらをも大切にする,ということは,たとえ一般企業で働くとなったとしても大事にしたいと思っています。常にどちらのサイドの気持ちを想像しながら,ことばであったり態度であったり,そういうところも常々気を付けていきたいと思います。

———最後に,今後海外に行く人,行きたい人にアドバイスがあれば教えてください

 もう行ってください(笑)自分が知らないことをたくさん知れるので,それってすごい楽しいことじゃないですか。逆に,知らないことってすごい怖いので,積極的に外に出ていろんなことを知ることによってその怖さが減っていくと思うんですよ。ただ,目的だったりテーマをしっかり持ってから行ったほうがいいと思います。そのほうが楽しさが倍増するので。なので,目的をしっかり持って,知らないもとを求めに外に出ていってほしいです。

———今日はありがとうございました。

(編集後記~羅針盤#8~)
羅針盤「留学×SSEAYP」第2弾!今回は一年の休学期間に第44回(2017)年東ア船→留学と盛り沢山の経験をされた楠原佳奈さんにお付き合いいただきました。どちらも内閣府・文科省と国のプロジェクトで、選考時期はほぼ同じだったとのこと。大忙しな一年だったことでしょうね。
彼女が東ア船で得たことのひとつとして語ってくれた「自分もこの社会を創る一員で、自分の小さなアクションからも社会は変えられる」という気づき。これ、意味を噛み締めてみるとすごいことだと思うんです。成功体験ができたとも言えるんだろうなぁ。きっと自分自身のテーマをしっかり携えて、様々な角度から行動してきた彼女だからこそ出た言葉なのだろうと思います。「千里の道も一歩から」なんて諺もありますが、自らの体験を以ってこの言葉の意味を実感している楠原さんの未来が、一人のファンとして楽しみです。

聞き手:細川瑛代(第44回東南アジア青年の船 Assistant Youth Leader)
編集:中井澤卓哉(第44回東南アジア青年の船 参加青年)

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※本note,及び「羅針盤」ウェブサイトに掲載されている内容の一切は,「東南アジア青年の船」事業主催である内閣府の公式見解ではありません.