「私はああいう人たちを目指すんだ」-羅針盤#4-4
✔ 2つの「次元の違い」を感じた.出会う人の「次元の違い」と,国のそれぞれの内情の「次元の違い」.
✔ 「次元の違い」を目の当たりにして,人を見る視点が豊かになった.
※前回の記事はこちら.
次元の違いを感じた52日間
———最後に,船で経験したことを,ひとことか一文でまとめるとどんな感じになりますか?
トミー:なんだろうな,「次元が違う」かな.
———「次元が違う」.その心は?
出会う人間の次元が違うっていうのが一つ.こんなにやさしい人に会ったことが今までなかった.こんなに大きな夢を持った人に出会ったことがなかった.そういう人たち,自分のこれからの人生にとってロールモデルになりそうな,次元の違う人たちにたくさん出会えた,そういうポジティブな意味での「次元が違う」が一つです.
もう1つは,「国それぞれの内情が違う」という意味で2つ目.例えば「安くお土産が買いたい」海外青年に100円 ショップならいろいろ買える,と案内した時に「100円あったら今使ってる財布が三つ買えるの」と静かに言われた時とか、「日本にはストリートフードはないよね.やっぱきれいすぎるんだよ、日本青年はこっちでストリートフード食べるとおなか壊してるじゃん,俺たち発展途上国の人は普通なんだけど」って言われたときとか.そういう風にいたるところで「壁」を感じたんですよね.お金の価値の「壁」とか,長年の慣れによる体の性質の 「壁」とか,きれいごとでは,国を越えた交流,って感じだけど,そういうきれいごとでは片付けられない,どうしようもないハード面での壁を大きく感じました.それは国に関わることが多くて,ネガティブな「次元の違い」でした.
———そういうネガティブな意味合いの次元の違いって,意外とさらっと言われたことにぐさって来たりしますよね.「そんなこと言われたって,俺の国ではこうなんだよね」みたいな.
そうそう.それって文字通り「次元が違う」から,共感できないし,想像力が及ばない.そこで大きな壁ができてしまうんですよね.
———その「次元の違い」を経験して,変わったことはありますか?
「出会った人間の次元の違い」を目の当たりにしてb,大きな目線で言うと,めざすものが変わりました.私すごい,「この人すごいな」って思うことが多いんですよ.惚れやすい性格じゃないんですけど,たぶん自分に自信がないんですよね.でも船の「次元の違う」人をたくさん見て,「すごいな」って思う瞬間が変わりました.
今までは,「こんなプロジェクト立ち上げて凄いな」みたいに,成果面とかキャリア面とか,成し遂げたことに対して凄みを感じてたのが,今はベクトルが一つ加わって,人間性の観点でも凄みを感じるようになりました.例えば,「この人は一言で空気を和らげるのがすごいな」とか,「いつ見ても余裕があるのがすごいな」って思ったりとか.そういう風に,「凄いな」って思う瞬間が変わって,つまり自分がめざすものが変わりました.成果とか,れっきとした指標があるものだけではなくて,「人間として」こういう風になりたいな,と思うようになりました.
———確かに,人を見る時って,例えば「賞を取った」とか成果面のわかりやすい指標に目が行きがちですよね.
やっぱり世界が狭いんですよね.似た者同士の環境でいるわかりやすい何かで少し秀でるだけで目立ったりするけど,人生を大きな目で見たら,生活するための豊かさは必要ですが,人間的な豊かさの方が圧倒的に重要なんですよね.例えば2人の人がいて,2人に同じことが起きても,それをどう解釈して内面化するかによって,その2人の人生の豊かさに違いが出る気がします.そういう人間的な豊かさが土台にあってこそ,成し遂げたこととかが後から加わってくるんだなって思います.
———そういう「目に見えないすごさ」とか「わかりにくいからこそ美しい部分」みたいなところを見つける能力もすごいですよね.トミーもそうだけど,一見わかりにくいけどすごい資質みたいなところを見つける感度というか,その能力はすごいと思います.
あ,ありがとうございます(笑)でも,44期の日本参加青年1人ずつ全員1つは言える自信あります.
———最後にもう1つ,船で得た経験を今後どう活かしていきたいですか?
今もよく思うんですけど、船で出会った「徳のある人」「魅力的な人」に少しでも近づきたい,って今後生きて言く中でずっと思うんだろうなとは思います. 抽象的に言うと,遠視のレンズを手に入れた気がします.
例えば最近のことでいうと,テストに追われてるときとか,就活で忙しいときとか,細々としたことに追われてるとき=近視の状態の時に,ふと遠視になって,「今すごいあくせくしてるけど,そのせいで人間として小さくなってるな.私がめざしたいのはああいう人たちだよな」ってふと思い出します.特にきついとき.だから,ふと思い出して,再確認する感じです.「ああいう人がいたんだ」とか,「私はああいう人たちを目指すんだ」とか.
———なるほど.貴重なお話本当にありがとうございました.
>次回も学生の方のインタビューです!お楽しみに!
(編集後記~ざーたくの戯言#4-4~)
「出会う人の次元が違う」.まさにそのことば通り,日本・東南アジアからの参加青年は,本当に優秀です.インタビュー中にもありましたが,「優秀さ」というと,目に見えやすい成果を残しており,それが周りに認められてることを連想しがちですが,それだけではない,目に見えない「豊かさ」があってこそ,素晴らしい成果を残せるものです.それは,とにかく結果を出すことを求められがちな現代において,自分を内省し進むべき方向を修正する重要な要素なのではないかと思います.トミーがその「人間的な豊かさ」を敏感に感じ取ったのは,「船」という外部とは隔絶された環境で密にコミュニケーションを取り合い,お互いを見て生活していたからではないかと,ざーたくは勝手に思ってます.最後に,貴重な時間を取ってインタビューを受けてくれて,さらには校正・編集にまで深くコミットしてくれたトミーに大感謝の意を表したいと思います.ありがトミー!!
この記事がいいね!と思ったら,是非♡&(感想と共に)facebookやtwitterなどでシェアをお願いします!また,定期的に記事を更新しておりますので,フォローもお忘れなく!!twitterもやってます→こちら.
※東南アジア青年の船に関する詳細は,こちらと内閣府のウェブサイトをチェック!
※「東南アジア青年の船」に参加した青年たちの物語を紹介する本プロジェクト「羅針盤」に関する詳細はこちら.
※本note,及び「羅針盤」ウェブサイトに掲載されている内容の一切は,「東南アジア青年の船」事業主催である内閣府の公式見解ではありません.