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「社会問題の生まれ方、なくなり方」には、癒しが必要だ(前編)

システムチェンジ横丁店主のひとり、佐藤淳(Jun)です。
2月12日に、SVP東京代表 藤村さん、立命館大学 社会運動研究者の富永さんと、「社会問題の生まれ方、なくなり方」についてイベント開催しました。

このイベントは、アメリカで2008年に出版しベストセラーになっている本『社会問題とは何か。なぜ、どのように生じ、なくなるのか?(ジョエル・ベスト/赤川学 筑摩書房)』をお題に話しています。
 ※当日の様子を富永さんがいくつかツイートしています。感謝!


■本の趣旨「社会問題は人の内側の認識から生まれる」

本の中では、社会問題は「ある状態が害悪を引き起こすのではなく、人びとがある状態を害悪だと考えていること」と定義されています。

これは、「社会問題は人の内側の認識から生まれること」と捉えられます。例えば子どもの貧困は、その言葉が行政文章やメディアに出始める前から状態としては存在していたものの、社会問題として広く認知されていませんでした。
大事なのは、客観的に「問題だ」とされる状態が急に生じたのではなく、人が「これは問題だ」と認知し、広がり始めたことで「社会問題化」したということです。


著者は、社会問題の生じ方やなくなり方を、以下の6つの段階で観察できると述べています。

 1、クレームの申し立て:社会問題が存在することを申し立てる
 2、メディアの報道:クレームを広く伝える・説明する 
 3、大衆の反応:関心が寄せられ、共感・支持・反対等様々な反応が出る
 4、政策形成:行政等は問題に対応する方法をつくる(予算化、立法等)
 5、社会問題ワーク:政府は政策等を実行し、他の主体も行動する
 6、政策の影響(アウトカム):上記の流れに対しての反応が起きる

大事なのは、上記は大体こんな流れよね~という自然史であって、この通り進めば社会は変わる!という方法論ではないこと。
詳しい書評はこちらのブログがおすすめなのでご関心あれば。


■社会問題は自分から生じる・変化への反抗

私含め3人のスピーカーから、感じたことを話しました。

□SVP東京 藤村さん
Social Venture Partners(SVP)はアメリカで1997年に設立、現在そのネットワーク組織であるSVP Internationalは、9か国40を超える加盟団体と共に、革新的な非営利組織に対する、専門性と資金の投資を通じた組織の強化を提供しています。

そのSVPIの在り方が近年変わってきた。以前は革新的な単一団体の成長を支援し、コミットメントとリソースで問題解決しようぜ!としてきた。
それが、トランプ政権に変わったくらいから変質してきて。「これだけ貢献しているのに、目の前の分断やコミュニティはどんどん悪くなる」「自分たちの根っこに問題があるのでは?」

奥底にある価値観に目を向けること。問題そのものをFixするのではなく、加害者や被害者がもつ傷を癒す、新しいナラティブ(物語)をつくっていこうぜ、という方向。


□コレクティブインパクト大好き 佐藤淳(私)
社会問題は内側の認識から生じるということは深く同感。
この6つの団体をみたときに、そうだなあと納得すると共に、「自分も周りも傷つけることを加速するプロセスに見えて、癒しがねえなあ」と感じた。
 ※下記に詳述します。

□社会運動論 研究家 富永さん
日本は、世界的に活動家が少なく(欧米ならデモ等に参加する人が大変多い)、政策や法律をつくることに関与する人が多いことに驚く。
人に関心持っていない。けど、社会を構築するのは人でしょう?

あしなが育英会の研究で、寄付を募るために親をなくした経験をいかにドラマチックに言えるかが大事とされる。当人はそれが嫌で、街頭募金に立つときには、別人格になりきって話すというナラティブがある。

社会問題が人の認知から生じるなら、認知そのものを支えようとする構造が脅かされるとき、本能的にその変化を望まない、Rejectする回路がありそう。


■「力」を持って変化を進めるアプローチ

当初のイベント時間を越えて話していた時、リスナーのお2人からコメントありました。(KIBOW Impact Investing 松井さん、おっちラボ代表小俣さん.。ありがとうございます!)

・社会投資はレバレッジをみて、そこに投資していく仕事。問題を立てて進むことを止められない。自分は今日話していたアプローチ(痛みの癒し等)とは違うんだよなーとか、痛さとともに感じた思った。
・社会的投資のひずみを感じる。資本主義の中で社会事業をし続ける。

・地方創生という社会問題がつくりだされた。でも集落の人たち幸せそうにすごしてるしなー。「変化してください!」という立場になる。分断のもとになる。

・社会的投資等「力」をもって進めていくアプローチと、人の内面の癒す「愛」のアプローチは、どちらも必須。著名な紛争解決請負人 アダムカヘン氏の主張(『未来を変えるためにほんとうに必要なこと』参照)。
・愛だけ叫んでいても既存の社会構造等は動かない。力だけだと更なる痛みを生み出すこともある。

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後編につづきます!! ※こんなこと書いています)
 ■痛みの連鎖を創るシステムには癒しが必要ではないか
 □社会が変わっていくために、必要な時間をかける
 □いまの社会問題解決のプロセスは、痛みが加速するシステム
 □痛みの連鎖を創るシステムには、癒しが必要ではないか
 ■「社会問題は、私たち自身が原因の一部であり、解決の一部である」

店主 / 記事の執筆者:佐藤 淳(Sato Jun)
1988生まれ茅ヶ崎出身の2児の父。「社会の変え方を変える」がテーマで、コレクティブ・インパクトによるシステムチェンジ(集団的な意識・構造変容・物語共創) 実現を探求中。
フリーランス、日本おせっかい学会副会長、システム・コーチ®︎
水滸伝・Angelbeats・アニメ漫画ラノベ大好き / スペインの横丁(バル)ではお腹壊してはしごできなかった人。
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