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社会の変え方が「わたし」とつながりますように

システムチェンジ横丁店主のひとり、佐藤淳(Jun)です。
スタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビュー という、2003年にスタンフォード大学内で創刊された、社会変革リーダー向けの雑誌・WEBメディアがあります。アメリカをはじめ各国でSSIRが立ち上がっており、2021年8月、日本でも『スタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビュー 日本版』(SSIR-J)がリリース・SSIRの記事ベストセレクションが出版されました。

システムチェンジ横丁は、「世界中の社会変容の知恵と、実践の現場をつなげたい」という想いからうまれました。SSIR-Jの立ち上げと共に、日本でビジネス・パブリック・ソーシャル等で社会変容に取り組む実践者が、それぞれの「社会の変え方」をシェアし始めていることをとても嬉しく感じます。

実は私はSSIR-Jのベストセレクションの記事選定等にだけすこし携わらせて頂いていました。その際読み漁った2003年からの実務的な叡智の山は本当に素晴らしく、SSIR自体の知の活用をぜひ知ってほしいと思い記事を書きました。

■SSIRは”In-Depth Series"を楽しむべし

SSIRのHPは、下記画像の通りタグラインが”SOCIAL ISSUES”、”SECTOES”、”SOLUTIONS”等と分かれています。執筆者や記事の記載事例は、世界各国の様々なテーマ・主体・アプローチが幅広く取り扱っているため、自身の関心領域に沿った記事がすぐ見つかります。

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上記のタグラインで調べるのも良いのですが、私がお勧めするのは”MORE”を押すと出てくる”In-Depth Series"です。以前SSIRを読み漁ったときは、シリーズが40以上あるのを確認して数えるのをやめました笑

例えばお勧めなのは、"Essentials of Social Innovation - Most Popular A starter kit for leaders of change beginning to explore social innovation."
SSIR-Jのベストセレクションでとりあげられた記事もいくつかありますが、タイトルの通りスターターキットとして外せない記事ばかりです。

ざっとですがシリーズ色々読んだ中で、私が日本のみなさまにぜひ知ってほしいのは、”Centered Self: The Connection Between Inner Well-Being and Social Change”というシリーズです(昨年リリースして11の記事が掲載)。これは「内面の幸福と社会変革とのつながり」をテーマにして6年以上世界中で研究・実践された「ウェルビーイングプロジェクト」の調査結果等が取り上げられています。
社会変容に取り組むリーダーたちは自身も当事者であることが多く、内面のケアは大変重要な一方、自身を後回しにしたり、ウェルビーイングであることの話題がタブー視されていたそうです。そこに18ヶ月の内的開発プログラムの実施等の結果、むしろ内面の幸福に力を注いだ方が、自身も周囲も、社会的なインパクトもHappyになったと。
(詳しくは、素人ながら私が簡易訳した記事があるのでご参照ください)


なお、スポンサーシップがついたシリーズもあり、日本でも「〇〇株式会社が長年探求した社会変容の実践結果と学びのシリーズ」みたいな例も出てくると、胸熱です。。
最後にマニアックな好みの記事の探し方として、記事タイトルの上部には、タグのリンク付けもされており、クリックすると記事一覧が閲覧できます(タグ例:Essentials of Social Innovation、Scaling、Leadership、10th Anniversary Essays)


■SSIRの本質は”Submission Guidelines”にあり

SSIRの記事を読んだことのある方は、記事の厚さ(熱さ)に驚くと思います。執筆者の実践における思慮の深さや試行錯誤が、事例や抽象化した学びとして書かれていて、国や事例の年代問わず参照できる部分が多いと感じます。

私としては、こういった社会変容の実践の知の質はSSIRの”Submission Guidelines”に表れているなと考えており、よければご一読ください(マニアックです。以下簡易訳)。

社会変革に取り組む世界中の聴衆を対象に書かれています。SSIRの読者は、高度な教育を受け、広く読まれており、ソーシャルイノベーションの分野について十分な知識を持っています。彼らは挑発され、驚き、そして悟りを開きたいと思っています。彼らは、長々とした議論、内輪の専門用語、または狭義のテクニカルライティングを読みたくないのです。
SSIRのオンラインリーダーの約45%は米国外に居住しています。読者の約3分の1が、組織内でCEO、社長、またはエグゼクティブディレクターの役割を果たし、残りの3分の1が他の指導的地位を占めています。SSIRの読者の半数近くが非営利団体を率いており、約15%が財団やその他の慈善団体のリーダーです。残りの3分の1は、企業、政府、学界、その他の分野で働く人々で構成されています。
私たちは、社会イノベーションに関する興味深く、独創的で、重要なアイデアを、それらのアイデアを実行に移すことができるリーダーに提示することを目指しています。その目標を達成するために、SSIR編集者は次の質問を念頭に置いて提出物を評価します。
・アイデアは新しいものですか、それとも既存のアイデアに対する新しい視点を提供しますか?
・本当に革新的な組織、実践、またはプロジェクトに関する記事ですか?
・著者は、説得力のある実際の例でアイデアをサポートしていますか?
・著者は、成果や発見を並べるだけでなく、より大きな社会変革コミュニティを支援する洞察の基礎としてそれらを使用していますか?
・記事はその主題に関する研究または実質的な経験に基づいており、著者の洞察はそれらの知識源を明確に利用していますか?
・記事が調査に基づいている場合、著者はエグゼクティブサマリーを逆流させるだけでなく、説得力のある独創的な洞察を追加しますか?
・読者はアイデアを使って仕事をより良くすることができますか?
・記事はほとんどの読者に興味があるのでしょうか、それともトピックが狭すぎて読者のごく一部にしか興味がないのでしょうか。
・著者は読者に知らせようとしているのか、それとも単に読者に何かを売ろうとしているのか?読者が著者の製品またはサービスを使用する場合にのみ、記事は読者に役立ちますか?


■本質的な叡智はそれ自体が社会変容を起こす

私が大好きな「コレクティブ・インパクト」の記事は2011年に公開され、世界を席巻し、実践・ブラッシュアップされ続け、社会の変え方を変えました。10年以上前は個々の主体による社会的インパクト(isolated impact)が当然で、いかにスケールするかが重要でした。
事業拡大や表層的なコラボでは根源的な社会変容は起きづらいと悩む中で、ひとやシステムの内面と外面共に変容していった(しかも10-20年も続けて)事例が世界中にあり、その共通的な要素を言語化したのが「コレクティブ・インパクト」です。
本質的な叡智はそれ自体が社会変容を起こすと考えており、SSIR-Jから日本・世界へ社会変容の叡智が広がっていくことを、とても楽しみにしています。

余談ですが、コレクティブ・インパクト共著者のJohn.Kania先生が、2020年に独立して「Collective Change Lab」を立上げています。そこで根源的な社会変容を生む器の5つの要素を提示しており、また新たな社会の変え方の鼓動を感じています(ブログの1つを簡易訳したのでご参考まで)。

最後の最後に。こういった叡智は「高尚な」ものとされがちですが、むしろ”I(わたし)”から始まる、日常的な知見だと考えていますし、そう広がっていってほしいなと願います。
(ドラッカーの「マネジメント」が60年以上経って、野球部のマネージャーに活用されているくらい、わたしと社会のつながりが近くなるといいな)

追伸:ベストセレクションの巻末のスペシャルサンクスに名前載せて頂いて、ありがとうございました!(人生初) 私自身がまず実践者としてひろめていきます。

店主 / 記事の執筆者:佐藤 淳(Sato Jun)
1988生まれ茅ヶ崎出身の2児の父。「社会の変え方を変える」がテーマで、コレクティブ・インパクトによるシステムチェンジ(集団的な意識・構造変容・物語共創) 実現を探求中。
フリーランス、日本おせっかい学会副会長、システム・コーチ®︎
水滸伝・Angelbeats・アニメ漫画ラノベ大好き / スペインの横丁(バル)ではお腹壊してはしごできなかった人。
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