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協働における同意のあり方

店主 / 記事の執筆者:古江 強(Furue Tsuyoshi)

システムチェンジ横丁での最初の投稿。

私はリーダーシップ開発と組織開発を主な生業としています。なので、他の店主2名のように日頃から社会課題に関わる仕事をしているわけではありません。

なので、決して多くはありませんがこれまでに関わらせていただいた社会課題に関するプロジェクトでの貴重な体験を素材としながらも、リーダーシップ開発や組織開発に関わる自分だからこそお役に立てるかもしれないことを考えていきたいと思っています。どうぞよろしくお願いします。

初回である今回は、「協働における同意のあり方」とうテーマについて書いてみたいと思います。

当たり前ですが、私たちが一人で出来ることにはやはり限界があります。特に、現在、私たちが向き合っている課題はますます複雑になってきていると言われています。なので、今後、協働もますます大切になっていくと思う。

組織においても、社会においても、人が協働していく上では、なんらかの同意を形成していくことは必要不可欠。現状、目的・目標、課題、方針、計画などについての同意が全くなく、バラバラであったとしたら、協働は成立しません。むしろ、場合によってはお互いに足を引っ張りあってしまうのではないでしょうか。

よりよい協働には同意が欠かせないということには、あまり異論はないのではないかなと思います

そんな、よりよい協働において不可欠な同意ですが、いくつかの種類やレベルがあるように感じています。まだまだ整理が必要ですが、今の考えを以下に書いてみます。

■契約
賛同の意思表示がなされた内容が履行されることについて報酬や罰則などの何らかの強制力が伴う同意。個人と企業の間で交わされる雇用契約、企業と企業の間で交わされる取引契約、国と国の間で交わされる条約など。

■約束
賛同の意思表示がなされてはいるが、報酬や罰則などの強制力は伴わない同意。ただし、履行されなかった場合、信頼や評判を失う。友人との間で交わされた飲み会の約束、他部署との間で交わされた納期の約束、政治家が掲げるマニフェストなど。

上記の二つについては、私たちが日頃の協働において意識している同意だと思いますが、これに加えて、普段はあまり意識していないけれども大切な同意の種類があると考えています。それは同期です。

■同期
賛同の意思表示は明確にはなされていないが、協議や対話を通じて相互に影響を与え合いながら醸成されていく(同期していく)同意。

対話を何度も重ねていく中で、現状に対する共通認識が生まれたり、それぞれが抱いているビジョンが響き合いながら育まれていく。結果、皆が一つの明確なビジョンを“握っている”わけではないけれども、「同じような問題意識を持っている」、「同じようなことを大切にしている」、「同じような未来を創ろうとしている」という感覚がコミュニティの中で高まっていくということがあるかと思います。そういった類の同意を同期と呼んでみました。


この同期という同意を意図的に形成していくことは、組織ではもちろん、社会課題に向き合う取り組みにおいて特に大切なのではないかと思います。

なぜなら、一般に、社会課題は組織課題よりも複雑な因果関係によって生じている上に、様々な立場や利害を持つステイクホルダーが関係しているので、契約や約束といった同意に至ることのハードルが高いからです。

また、組織においては役割と権限の階層が存在するので、経営者などの特定の人物が「これでいく」と決断を下し、メンバーを従わせることが最終的には可能です。しかし、社会においては役割と権限の階層が存在しません。

このような特徴を持つ社会課題に対して、もし無理に契約や約束に至ることを目指した場合、それぞれの想いが強いからこそ、逆に対立になったり、分かり合えないという諦めを深めてしまったりということも多いように感じています。

「私にはこう見えている」「私はこう感じている」「私はこれを大切にしたい」「私はこんな未来を創りたい」といった、「私」を主語にした対話を意図的に丁寧に積み重ねていきながら、現状に対する認識、大切にしたい価値観、創り出したい未来・ビジョンについての同期を生み出していく。

そのことが、時間はかかるけれども、結果として契約や約束といった明確でパワフルな同意にもつながっていくのではないかと私は感じています。

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