社会は良くなるの?
店主 / 記事の執筆者:番野 智行(Tomoyuki Banno)
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店主の中でも最年長の私(番野)は、2000年の秋、22歳の時にNPOでのキャリアをスタートしました。早いものでもう20年です。
「どうやったら社会は良くなるか」
「お前は総理大臣か」とツッコミたくなる大きくて漠然とした問いですが、そんな問いを持ちながら、多くの良い師匠や仲間、顧客に恵まれ、意義を感じられる仕事を沢山させて頂きました。そのおかげで、「誰かの役に立てたか」と聞かれると「Yes」です。
しかし「社会問題の解決に近づいているか」と聞かれると、その実感はありません。
グラフにするとこんな感じです(汚くてすみません)
社会問題の悪化って?
もともとネガティブな性格であることに加え、多くのNPOの方々と日々接しているので、社会に関するいろいろなデータを見るたびに、ホラーストーリーが脳内をよぎります。
例えば、少子高齢化。
■医療費・社会保障費の増大と歳入の減少につながり、現役世帯の負担が増加することは皆さんもよくご存知かと思います。
少子高齢化って何が問題なの?~日本の人口~(NHK for School)
https://www2.nhk.or.jp/school/movie/outline.cgi?das_id=D0005120460_00000
■金銭面だけではありません。子育てと親族の介護が同時期に発生(ダブルケア)し、仕事の継続が困難になって離職する人が生まれています。
育児と介護を同時に “ダブルケア”時代の到来(NHK ハートネット)
https://www.nhk.or.jp/heart-net/article/20/
男性が4人に1人、女性は3人に1人。女性・男性ともにダブルケア離職が大きな課題になっている
■他に最近「うーん」と唸ったデータは、貯金に関するデータです。
30代の平均貯金額はいくら?貯金なしから1,000万円到達はできる?(りそな銀行)
https://www.resonabank.co.jp/kojin/toshin/column/column_toshin_0005.html
30代独身の平均貯金額は176万円、30代夫婦は266万円だそうですが、平均値だけだと見誤ります。
なかには貯金をしていないという世帯もあります。同調査によれば、30代独身世帯の約4割は、貯金がゼロという状況です。一方で、「金融資産を500万円以上保有している」という世帯も4割近くを占め、貯金している人としていない人で2極化していることがわかります。
私も30代前半はほぼゼロだったので、偉そうなことは言えないのですが、
自分の老後どころか、この状況で親の介護が始まったらどうなるのか。
(私は現在子育て中ですが、まだまだ元気な両親には感謝です…)
貯金ができないのも実質賃金が増えていないのでその余裕がないという…(ちょっとくどいので引用はそろそろ止めておきます)
■そして2020年。そもそもこのように余裕・余力が無いところに新型コロナウイルスの感染拡大が襲ってきたわけです。
しかも、私のようなホワイトカラーは「仕事がテレワークになって飲み会がなくなった」ぐらいですが、ひとり親家庭や失業者を支える方々から聞く現場の状況はかなり過酷です。お米が買えないとか電話が契約できないので連絡取れないとか、普通に起きています。
ある困難がもたらす脆弱性が、別の困難を引き起こす。とてもやっかいな構造です。それが冒頭の図のような認識につながっています。
起きている意識と行動の変化
一方で、希望に感じていることがあります。それは、社会をより良くしたい、そのために行動を起こしたい/起こすという人が20年で明らかに増えてきたことです。
■2000年からNPOで仕事をしていますが、当時は「NPO」と言ってもほとんどの人が知りませんでした。大学卒業時の進路調査にも「その他」に丸を付けました。合コンでは自己紹介不能です。
■2010年頃にかけて、ソーシャルセクターでの起業や就職・転職を選ぶ人が少しずつ増えてきました。当時アンケートを取ったのですが「周りにそういうキャリアを歩んだ友人がいる。楽しそうだし、自分もできると思った」「学生の時にある社会起業家の本を読んでこういう選択肢があると知った」という声をたくさん聞きました。
■その後、2011年に東日本大震災が起きて、自分は何のために仕事をするのかを考え直す人がさらに増えました。この頃から特に企業に勤めている人の意識が変わってきたと思います。
■ここ数年のSDGsやESG投資の広がり。「それが何なのか」の理解はまだまだこれからの部分がありますが、社会的なことに関心を寄せている人が増えていることは良いことです。
■2020年の新型コロナウイルスの感染拡大。全国民が何らかの影響を受け、「感染対策と経済活動の両立」など、日々社会課題に向き合っているというのは、戦後初めての事態ではないかと思います。
最近、複数の大手企業で社会課題解決をテーマとしたオンラインでの研修やセミナーを提供する機会がありますが、参加者数百人がすぐ集まることも珍しくありません。仕事で、プライベートで、そういう活動をしている、もしくはしていきたいと口々におっしゃいます。
また、GoTo施策も、別の問題はありますが、単に「お得」というだけでなく、「貢献」の気持ちを持って利用しようとした人も少なくないと思います。
私はこの流れに希望を持っています。
構造的に見てみる
システム図で書いてみると、こういうことではないかと思っています。
となると、これは起きるべくして起きた、状況に歯止めをかけるチャンスなのではないかと思います。
一方で、時間に猶予がそれほどあるようにも見えません。どうやってこの流れの加速に微力ながら貢献できるか。それが最近の目下の私の関心事です。
そんな思いも持ちながら、この横丁で様々なことを共有していきたいと思います。これからよろしくお願いします。