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イギリスの新高速鉄道プロジェクトへのブロックチェーン導入事例について解説
イギリスの新高速鉄道プロジェクト「HS2」で調達パイプラインの一部にブロックチェーンが導入されました。
トレーサビリティーやサプライチェーンの領域で注目されているブロックチェーンですが、どのような背景で導入に至ったと思われるのかについて解説します。
イギリスの現状
イギリスでは大規模事故対策やテロ対策が迫られている現状があります。
世界では、航空機エンジンの部品に偽物が使用されたことにより発生した事故や各地域でテロの問題に直面しています。
イギリスでも同様に、2005年にはロンドン同時爆破事件やバンスフィールド油槽所で発生した爆発火災により、多くの死傷者が出ました。
また、ロシア・ウクライナ戦争やパレスチナ・イスラエル戦争にもイギリスは関与しており、テロのリスクが高まっています。
この状況を受け、イギリス政府にはテロ対策の強化が求められています。
HS2のブロックチェーン技術導入の背景
こうした現状から、イギリスの新しい高速鉄道プロジェクトであるHS2(High Speed 2)は、イギリス政府から調達材料の信頼性と透明性の説明責任を果たせる仕組みを求められたものと思われます。
そこで、調達パイプラインの一部にブロックチェーン技術を導入しました。
この取り組みには、大手建設会社であるコスタイン、スカンジナビア、ストラバグが参加し、ブロックチェーンサービスを提供するデロイトが監査を実施しています。
セキュリティの観点から鉄道、飛行機、船舶などの運送業務を行う企業は、政府から運送物資や調達材料の製造元に関する説明を求められることが増えています。
ブロックチェーンを導入することで、調達材料の製造元を明確にすること、説明責任を果たすことが容易に実現できます。さらに、不正な調達材料を発見しやすくする効果もあります。
ブロックチェーンを導入しない場合、調達材料の製造元情報を証明することが難しいです。
不正な調達材料が原因で事故やテロが発生する可能性があり、結果として国内の安全が脅かされ、企業の信頼性が損なわれるリスクが生じます。
調達材料の製造元を明確にすること、説明責任を果たすことには大変な労力が伴いますが、ブロックチェーンの導入によってそれらを証明することが容易になります。また、不正な調達材料を発見しやすくする効果もあります。
調達材料の製造元情報が必要な理由
イギリス国内の事故防止やテロ対策において、調達パイプラインにおける調達材料の製造元情報を明確にすることが求められています。
製造元をチェックすることで、不良品による事故防止と信頼性の高い材料の選定が可能になります。
特に、国際的な紛争や地政学的なリスクが存在する状況では、リスクのある国々からの調達は厳重に監視・チェックしなければなりません。
安心・安全な物資調達
物資や調達材料の安心・安全な管理を行うには、調達材料の製造元情報を明確にすることが必要です。それらを高いレベルで実現するためにブロックチェーンが導入されています。
ただし、ブロックチェーン技術は製造元を記録するために有効ですが、完全なテロ対策ができる訳ではありません。
企業は、政府への説明責任ひいては国民への説明責任を果たすために、安心・安全で透明性のある運用を証明する必要があります。
ブロックチェーン導入により、不良品や製造元情報が不明な物資の調達に関与する企業を排除し、安心・安全な物資調達をしている企業を高く評価することが可能になり、調達工程の透明性や高い品質の材料調達に繋がります。
これらの活動によって、大規模事故のリスク低減に寄与し、国内の安全確保に貢献することが期待されます。
スマートコントラクトによる業務効率化
HS2プロジェクトでは、ブロックチェーン技術を活用することで調達パイプラインへの信頼性や透明性が向上し、スマートコントラクトや支払いの自動化が可能になりました。
スマートコントラクトとは、ブロックチェーン上で条件を満たすと自動的に契約や取引が実行される仕組みです。
今回の事例では、建設プロセスにおける勤怠やプロジェクト管理業務などの効率が大幅に向上し、ビジネスプロセス数を24から11に削減することができました。
HS2プロジェクトでブロックチェーン技術を導入した目的は、信頼性と透明性の向上でしたが、業務効率化という副次的な効果も得られました。
さいごに
みんなのブロックチェーンではBtoB向けブロックチェーンに特化したサービスを提供しております。要件定義・仕様・設計から開発マネジメントまでお気軽にご相談ください。