帰る日
早いものでもう5日目。今日は帰る日だ。雨も降り、思いっきりアクティブに動けたわけではなかったが、自宅のようなサウスビレッジに泊まり、暮らすように旅するスタイルは私には好みの滞在だった。
雨は降っていない。出発までの最後の時間、湯泊まで自転車で往復することにする。
そして帰りは船で鹿児島市内に出ることを辞め、サウスビレッジを出たらアペルイを訪ねることにした。
湯泊へ
7時半に出る。
夜が明けて間もなく、薄暗い。
プーゲンビリアの匂い。
たくさんのシロハラ、ツグミが土を掘る姿。
ホオジロはもうさえずりを始めている。
ヨモギが生え始めている。
やっぱりここは南だなぁ、と思う。
平内小学校の登校時間に出くわした。
子供たちは元気にも私に挨拶してくれる。
校長先生が行き交う車に会釈をしている。
「校長先生おはようございまーす。」
と子どもたちのはじけるような姿と声。
夏休みには出会えない日常の風景。こんな風景に出会いたくて旅をする。
湯泊は人の営みの歴史を感じる集落。
古い橋のそばに立つ大木がなんかいい。
帰り道、草を引きながら散歩するおばあさんに出会う
しばしお話しする。
「どっから来たの?」
「すみません、横浜からです。」
気にしている様子はなく、ほっとする。
県道を外れて山の方へ行ってみると豚舎の匂い。
椿の木の植わった畑。
誰にも会わない。
さてサウスビレッジに戻り、自転車のメンテをして、いよいよサウスビレッジともお別れ。
安房の街まで戻り、春田浜からお茶畑を抜けて車を走らせる。
アペルイへ
鶴居村のヒッコリーウィンドの安藤忍さんのご紹介で訪ねたエコビレッジ・アペルイ。宿の主田中俊三さんはガイドをされていて、先日の島結のささっちょともお友達。俊三さんはいらっしゃらなかったが、お店にパートナーの田中あゆみさんがいらしてお話することができた。
鶴居村のヒッコリーとささっちょの紹介でお訪ねしたと伝えると、それだけでバリアが外れ、いろいろな話ができる。
俊三さんたちは13年前にご長男のご誕生を機に移住されたそうだ。ご夫婦揃ってジブリ好き。新婚旅行で屋久島を訪れたのが屋久島との出会いだったそうだ。移り住むところをいろいろ回ってみたけど、結局屋久島しかない、と思ったそうだ。
アペルイは俊三さんのガイド、宿の他に、あゆみさんがゼロウェイストを目指す計り売りのお店やカフェもされている。コーヒー豆、調味料、オーガニックパスタ、クレイ石鹸などの品々が並んでいた。
火を使う必要のあるものはすべて薪で火を起こしているそう。子供たちは当番で風呂を焚く。生きるための哲学がすごい。
宿はちょうどリモートワークで滞在中の方が心地よさそうにオンライン会議をされていた。サウスビレッジでも思ったけど、こういうスタイルの働き方はこれからのスタンダードになっていくはず。
アペルイとはアイヌ語で「火をともす」の意味。火を大事にしてきた先住民(縄文やアイヌ)を尊敬し、それまでの「和蔵」から改名したそうだ。火は創造主からのギフトであること、大事に扱うべきものであること、ぞんざいに扱うと暴れ出す、などとあゆみさんと話し、思いを通じ合わせることができて嬉しかった。
いただいたコーヒーはラオスのコーヒー農家の未来(子供たち、農地、経済)を助けるためのフェアトレード商品。
アペルイを後にして、再びワルンカルンへ行きランチボックスを購入する。
また来てくれたんですね、と喜ばれる。
だって美味しかったから。
自転車で回る人たちのラックを用意してもよい、とご主人が言ってくださったそう。
そして私は屋久島を後にした…
旅が終わって。やりたいこと、知りたいことができた
自転車で回る旅はきっと楽しいに違いない。山を登った前や後。滞在を延ばして、ゆっくり海や森を堪能するのはいいだろう。ぜひ自転車と開けた景色と海が好きなフランス人にも勧めていきたいと思う。
私もやりたいことができた。
-宮浦岳の登山2泊3日で尾之間から、ヤクスギランドから、清い水を辿りながら、宮浦岳に登る意味を考えながら、森に溶け込みながら登りたい!
-永田いなか浜、前浜のアカウミガメの産卵をそっと覗かせていただきたい!
-海にもぐって魚や珊瑚を見たい!(屋久島の海は沖縄の海)
-青い空の下、走ってみたい(西部林道からいなか浜へ!)e-bikeならいろいろいける!
-YNACの市川さんが復活させた竪穴式住居を訪ねて日本人のルーツをじっくり考えてみたい!
またいつの日か!
屋久島をよく知るガイドさんや友人たちと共に。