小咄:「いける屍」

 ある館。今日も今日とて、殺人事件が起こる。
「探偵とやらはいつになったら来るんだ。いつもいつも後から来て俺たちの出番をかっさらっていきやがって」
「警部、今回はすでに来ていて、隣で現場を確かめてるところです」
「それを早く言わないか。早速お手並み拝見といこう」
 警部が部屋に入る。
「おい、探偵さんよ、今回はどうかね。今回ばかりはお手上げだろうが、いつものあざやかな推理をご教授願いたいのですが」
 死体に屈こみ、警部に背を向けていた探偵がこちらを向く。
「や、警部さん。あまりかっかしないで、どうです、警部さんも。こいつはいけますよ」
 箸と醤油の入った小皿を両手に、探偵は実にうまそうに口の中のものを飲み下した。

(壁石九龍) #小説

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