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#7 ティナとティノの記録
顔も髪型もそっくりな姉妹は、いつも一緒にいる。姉は二十歳になるかどうかの頃で、妹は十歳にも満たないように見える。見たままであれば、かなり年の離れた姉妹である。
姉はティナ、妹はティノといい、名前までそっくりだ。
空を映したような薄水色の髪に、髪色よりも深い青を湛えた──まるで海を閉じ込めたみたいだ──瞳。爽やかな色を纏った少女たちの周りには、涼やかな空気さえ感じる。
「皆さん、突然どうしたんですか?」
ティナは戸惑った表情で、リコリスを始めとする面々に訊ねた。ティノは、ティナの足にしがみつき、訪問者たちを観察している。
「ローズウォーターを作ったから、あなたたちにも、と思ってね」
リコリスがティナにローズウォーター二本を手渡す。
「皆にも渡していたのだけれど、オフィーリアが『たまには、皆でお茶会がしたい』と言って」
続けて、事情を説明した。ティナはきょとんとした後、自分にしがみつくティノを一瞥した。
「ええと、わたしは問題ありません。ティノは、どう? お茶会に参加する? ……って、ごめんなさい! まずはリコリスさんにお礼を言わなくちゃ。ありがとうございます、リコリスさん」
ティナは慌てた様子で、リコリスに頭を下げた。リコリスは微笑を返す。
「お茶会、する」
不意に、ティノが口を開いた。か細く幼い声は、それでも、明瞭に耳に届く。
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