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衝動買いに“戦略”を。過度な節約ナシでおカネを貯める家計簿3つのKPI

家計簿、最近はアプリで手軽に記録できるので便利ですよね。
しかし「節約したい」「おカネを貯めたい」と思って家計簿を使い続けていても、そんなにおカネが貯まってないなと感じていませんか?

おそらく原因の1つは「衝動買い」。大げさな言い方をすれば「突発的な買い物をして良いのか悪いのか、客観的に判断できていない」からだと思うんです。

せっかく家計簿でおカネの出入りを見える化しているので、それらのデータを衝動買いの可否判断に活用できれば家計簿はもっと便利になります。着実におカネをためていくためにも、家計簿をつける目的を実績値の把握から「将来の収支予測とそのコントロール」に改革していきましょう。

というわけで、家計簿のデータを使って支出をコントロールするためのKPIを3つご紹介します。これらの指標を使って過度な倹約家になることなく、「戦略的な衝動買い」をして幸せを感じつつ、そしてコツコツおカネを貯めていきましょう!

※会計ガチ勢の方へ
この先おそらく会計学上の定義とズレる用語の使い方が出てきますが、「分かりやすさ重視」ということでお許しください。基本的に現金主義で話を進めます。


0.前提:月次収支管理の基本公式

総収入 - 総支出 = あまったおカネ(FCF)

ここでは家計簿をつける目的を「最終的な差し引きの結果おカネが余るように、月中でもタイムリーに支出をコントロールするため」と定義します。
あまったおカネ、つまり自由に使ってよいおカネ(フリーキャッシュフロー、以下“FCF”)が1円以上になれば、どんなおカネの使い方をしてもOKという考え方です。あえて言うならFCFこそが家計簿におけるKGIであり、KGI向上のために下記3つのKPIを管理していきます。


1.予測されるFCF

さきほどの公式を分解して、月初の時点で当月のFCFを予測できるようにします。その前段階で重要なのは支出を分解すること。ちょっとクセのある分解法ですが、こちらをご覧ください。

総支出 = 固定費 + 当月支払分カード決裁額 + 生活コスト + その他現金支出

ポイントは「生活コスト」にあります。平日と休日それぞれ、朝・昼・夜+間食でほぼ確実に発生する1日分のコストを計算してみましょう。今回はシンプルに毎日の飲食代だと考えてOKです。たとえば僕の場合だとこんな感じ。

①平日:朝100円 + 昼500円 + 夜500円 + 間食100円 = 1200円
②休日:朝0円 + 昼1200円 + 夜ごはん1000円 + 間食600円 = 1800円

仕事のない日はカフェでのんびりするのが習慣なので、休日の間食にカフェ代を含めています。もし毎週決まって飲み会があるような方だと便宜上、休日分のコストに含めると計算が楽です(週休2日の方だと、1回分の飲み代の平均を2で割れば済むので)。

ここからざっくり1ヶ月当たりの生活コストを計算すると、およそ4.25万円は必ず出ていくと予測できます。

  1ヶ月当たりの生活コスト
=(年間平日数 * 平日1日分のコスト + 年間休日数 * 休日1日分のコスト)/ 12
=(245 * 1200 + 120 * 1800)/ 12
= 42500

あとは手取りの給与や固定費(家賃や通信費、月謝など)と組み合わせることでようやく、月初の時点で当月末のFCFをざっくり予測できます。

例1-1.当月末のFCFを予測してみる
 予想されるFCF
= 手取り20万 - 固定費8万 - カード決済額4万 - 生活コスト4.25万
= 3.75万

このケースでは、予想されるFCFは3.75万円。つまり最大で3.75円分は衝動買いしちゃってもOKと考えられます。ただし「備品代」「病院代」「散髪代」など毎月発生するとは限らない支出は、現金払いだと当月のFCFから賄われるので注意しましょう。

一方で前の月にカードを使いまくったときは、衝動買いしている余裕なんてないことが客観的に分かります。

例1-2.前月にカードを使い過ぎ、このままでは当月末のFCFが赤字
 予想されるFCF
= 手取り20万 - 固定費8万 - カード決済額8万 - 生活コスト4.25万
= -0.25万

予想されるFCFがマイナスなので、このままではおカネが貯まりません。
「カード決済額をあとから分割払い(またはリボ払い)にする」という荒業を除くと、式の中で自分がコントロールできる部分は生活コストのみ。つまり月末時点のFCFをなんとか黒字にするには、カフェに行く回数を減らしたり、外食の予算をちょっと減らしたりすることが必要だと予測できます。

このように月初の時点でFCFの予測を立てながら、「今月の過ごし方」をコントロールしていきましょう。

--補足--
毎月コツコツ貯金していきたい方は、貯蓄額を固定費に含めましょう。原理上は生活コストに含ませてもよいのですが、2.のKPI運用まで考えると決してオススメできません。繰り返します、毎月の貯蓄は固定費扱いです。


2.コスト進捗率・日数進捗率

当月の現金支出のペースを把握できるKPIです。とても単純なKPIですが、僕はこれにすっかり財布をコントロールされちゃっています。

コスト進捗率 = 現時点での現金支出 / 1ヶ月当たりの生活コスト
日数進捗率 = きょうの日付 / 当月の日数

1.で登場した生活コストはあくまで予測値であって実際に発生した支出ではないため、当月では「予測されるFCF + 生活コスト」の分だけ現金を使ってよいことになります。
とはいえ不要な衝動買い、すなわち生活コストで想定されていない支出をするとFCFが悪化するので「いまの支出のペースで、FCFは黒字に収まるか」を考えなければなりません。そこでこのKPIを活用し、以下のように支出のペースが適切かを判断していきましょう。

例2-1.4月10日の時点で、現金支出が1万円
 コスト進捗率 = 1万 / 4.25万 = 23.5%
 日数進捗率 = 10日  / 30日 = 33.3%

日数進捗率と対比してみると、4月の支出ペース(コスト進捗率)は比較的ゆるやかなようです。このまま抑え気味のペースでいけば、月末時点でのコスト進捗は70.6%に落ち着きそう。それなら仕事で疲れた日の夜は外食で済ませちゃったり、休日にいつものカフェでケーキを頼んじゃってもOKだと考えられます。

逆に、こんなケースはどうでしょう?

例2-2.4月28日の時点で、現金支出が5万円
 コスト進捗率 = 5万 / 4.25万 = 117.6%
 日数進捗率 = 28日 / 30日 = 93.3%

まだ4月は続くのに、コスト進捗率が100%を超えちゃっています。でも気を付けてほしいのは、このKPIの目的はコスト進捗率を100%以内に抑えることではなく、支出のペースが適正か判断すること。1.で触れたとおり、生活コストで計算に含んでいない病院代なども現金支出に含まれるので、FCFが黒字で見込める限りにおいてコスト進捗率は100%を超えても問題ありません。むしろコスト進捗率が日数進捗率を大幅に上回っているときこそ要注意です。そのペースで衝動買いしていると、FCFが赤字になるリスクがあります。

使ってみると分かりますが、このKPIが見えていると、なぜかコスト進捗率と日数進捗率のバランスを取りたくなっちゃうんですよ。飲み物代やお菓子代など細かな支出の積み重ねでおカネが貯まらないタイプの方にとって、このKPIは強力なブレーキになるはずです。

--補足--
1.で「毎月の貯蓄は固定費」とお伝えした理由について。生活コストに貯蓄額を含めた場合、コスト進捗率が100%以上になったら「今月分の貯蓄額をすべて使い込んだ」ことを意味します。一方でこのような事故を防ぐために中途半端な数字(63.0%など)を目標にすると、KPIの数値を解釈しにくくなるのでオススメしません。


3.資産スラック

家計簿では聞きなれない概念かもしれませんが、ここぞの時に活躍してくれるのがこのKPI。意味するところは「万が一の時に、いくらまでならパッとおカネを出せるか」です。きちんとご説明する前に、まずは「貯蓄」を3つに分解して整理します。

貯蓄のカテゴリ分け
Q1. その貯蓄、使い道はハッキリと決まっている?
 ・決まっている→来るべき日のために取っておくおカネ
 ・決まっていない→Q2. へ進む

Q2. 使い道が決まっていないのに貯蓄する理由は?
 ・長期的な備えのため→将来のためのおカネ
 ・いつか何かを買うかもしれないから→資産スラック

厳密な区分ではないですが、一旦これで十分でしょう。「資産スラック」という大げさな用語を持ち出した理由はズバリ、積極的に衝動買いをするための予備金と堅実に蓄えをつくるための貯金とを区別するためです。

資産スラックが威力を発揮するのは、たとえばこんなケース。

例3.
ずっと探してたグッズが残り1点。今月のFCFでは賄えないけど、絶対欲しい

こんなとき、もし十分な資産スラックがあるなら迷わず買ってOK。絶対に欲しいものなら、見つけた瞬間にお会計まで進んじゃいましょう。(こういうときに戦略的な衝動買いをできないなら、家計簿をつけて収支を管理している意味がありません。)

予測されるFCFだと賄えないのに衝動買いしていい理由は、資産スラックで現金支出を補填して「n万円分の支出を“なかったこと”にする」という裏技を発動できるからです。単にカードを使いすぎて予測されるFCFが赤字のときや、月初なのにコスト進捗率が高いときも同じ対処でOK。こんな数字遊びを迷わず行えるのも、資産スラック自体が使い道もなく貯めておく必要もない、浮いているおカネだと分かっているからです。資産スラックというKPI(というか概念)を使って、上記のような使い方をしていいおカネとそうでないおカネをキチンと区別していきましょう。

--補足--
前もって支出のタイミングと金額が分かっていて、その分の貯蓄(来るべき日のために取っておくおカネ)が事前にできている場合について。いざ支出のタイミングが来たら、上記の裏技のように「支出を貯蓄で補填」しましょう。裏技を使うと、予測されるFCFが大幅に赤字になったり、コスト進捗率が異常に上振れたりしないので、大きな出費のせいでKPIが機能しなくなることを防止できます。


まとめに代えて

実は僕、表計算ソフトで家計簿を作りこむのが大学時代からの趣味でして。
昔は旧来の家計簿と同様に実績値のみを管理していたのですが、社会人になってから細かな費目ごとの記録が面倒で嫌になり、「そもそも家計簿の意義とは何か」と問い直して生まれたのが上記3つのKPIです。

これらのKPI管理では「何月に」「何円の出入りがあるか」こそが全てであり、極論を言えば、何にいくら使ったか、といった過去を振り返るための細かい記録は一切必要ありません。収支の記録自体はもっと気楽なものにして、未来の意思決定のために家計簿を活用していきませんか?

ちなみに、いま僕がKPI管理を運用している家計簿、ひとに見せるとだいたい「キモい」と言われます。

でも1円単位で正確に収支を予測できれば、ここぞの時に思い切って衝動買いを出来るのです。得られるものは、一目見ていいなと思えたものを、タイミングを逃さずに買える幸せ。固定費の洗い出しや生活コストの計算だけ少しハードルが高めですが、ぜひお試しあれ。

かしこ


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