小匙の書室160 山本周五郎賞候補作品
noteをはじめてから、小説に関する賞を──とりわけミステリーに関するものをメインに取り上げてきました。
鮎川哲也賞、黒猫ミステリー賞、横溝正史ミステリ&ホラー大賞、本格ミステリ大賞、日本推理作家協会賞……など。あとは直木賞と芥川賞、本屋大賞なんかも。
それらはnoteをはじめる前から着目していたこともあり、つまり私にとって非常に馴染み深く、記事を書きやすかったからです。
しかしせっかく読書家を名乗るなら。賞の名前は知っているけれど、あまり意識の俎上に乗せてこなかったものも取り上げてみるべきでしょう。ひいてはそれが読書ライフの拡充に繋がるはず……。
実際、今日まで読了してきた小説の中には山本周五郎賞を受賞した作品(『満顔』(米澤穂信 著)や『残穢』(小野不由美 著))や、未読でもタイトルを知っている作品(『木挽町のあだ討ち』(永井紗耶子 著)や『テスカトリポカ』(佐藤究 著))があるのです。
つまり、私にとって決して無縁ではないのです!
⭐︎ちなみに、山本周五郎賞とは『すぐれた物語性を有する小説・文芸書に贈られる文学賞』です。
それでは本題へ参りましょう。
4/19──。
第37回、山本周五郎賞の候補作品が発表されました。
禍/小田雅久仁
地雷グリコ/青崎有吾
こまどりたちが歌うなら/寺地はるな
鼓動/葉真中顕
うぉぉぉおお〜!! 地雷グリコが入ってるぅぅうう〜!!!!
⇧これは読了記事⇧
めっっっちゃ面白かったんですよね。青崎有吾先生の新たな代表作と呼んでも過言ではありません。
頭脳戦でありながら本格ミステリのスピリットが宿っていて、主人公:射守矢真兎の活躍には何度もしびれました。
ちなみに本作は、
本格ミステリ大賞と日本推理作家協会賞にもノミネートされており、昨年の11月末に発売されてから物凄いスピードで読者の心を掴んでいっているのです。
もしノミネート全部で賞を獲得したら、とんでもないことになりますね……。
頭脳戦だけど、扱っている題材は『グリコジャンケン』や『だるまさんが転んだ』といった読者に馴染み深いものばかりなので、きっとハマると思います。
さてそのほかの作品についてですが。
禍は読了済みでした。
体の部位をモチーフにした7つの篇を収めた短編集。しかし短編といえども描かれる世界は濃密も濃密で、私は文章という鎖で全身を雁字搦めにされるような感覚に陥りました。
いや、どこからそんな発想が出てくるの?
少しクセのある文体は慣れるまでに時間を要したけれど、そのぶん『禍』に潜って潜って潜りまくっていきました。
SFが好きならばぜひとも一読してみてはいかがでしょうか?
“物語性がすぐれている” という観点で選出されているために、ノミネートされた文芸作品はきっと私の心を揺さぶりまくるんだろうな……というのが私の意見です。
寺地はるな先生の作品は恥ずかしながら未読なのですが、「心が温まる」作風だというのは把握しています。本作に関しても、お菓子のイラストが散りばめられた装画と『あなたが生きる〈今〉に光を灯す、希望の物語』という惹句が、もうすでに温かな優しさを溢れさせています。
積読の数を鑑みると手に取れないかもしれませんが、ノミネートによって、新たにこの小説で救われる読者が増えたら良いですよね。
葉真中先生は、私の中で社会派ミステリを上梓されているイメージがあります。
ロスト・ケア、絶叫、Blue、そして鼓動。
『灼熱』で第35回山本周五郎賞候補になって以来のノミネート、果たして今回はどうなるのか楽しみですね。
作品の内容としては──ホームレス殺害事件の容疑者として浮上した男の抱えた、父親殺しの自供。男の人生をめぐって綴られる8050問題。
8050問題は決して他人事でも対岸の火事でもない。いつ自分の身に降りかかってもおかしくはない。これはきっと、社会派ミステリの内包する重たさが胸に迫るだろうな……という予感があります。
というわけでこの記事では山本周五郎賞の候補作を簡単にまとめましたが、同日、三島由紀夫賞の候補作品も発表されています。
そちらの方も後日記事として投稿するつもりなので、併せてお読み頂けたらと思います。
受賞作の発表は、5/16の18時!
楽しみですね。
※本当は前作読んで備えたいところだけど、積読を振り返っては歯痒い思いをする次第。
ここまでお読みくださりありがとうございました📚