キャディのTechnical Product Managerがデータで製造業を変える
はじめに
キャディでテクニカルプロダクトマネージャを務めております猿田(@srt_taka)です。
昨年の10月にキャディにジョインしてから約一年が経ちました。私自身は図面データ活用クラウドCADDi DRAWER(以下DRAWER)のサービス立ち上げに従事したのち、現在は開発本部全体の中期計画策定やマネジメント業務に従事しております。DRAWERは6月に正式にサービスローンチ後多くのお客様から問い合わせいただいております。ありがとうございます。
また、昨年12月にAI labを立ち上げてから急速にデータ解析技術開発を進められており、今回はそのあたりの技術開発に触れながら展望についても少し触れたいと思い、筆を取っております。本編に入る前に私が想像しているX年後の製造業の様子を示します。
想定読者:コンピュータビジョンエンジニア、機械学習エンジニア、プロジェクトマネージャー、プロダクトマネージャー、エンジニアリングマネージャー、データエンジニア、CAD・CAMに詳しい人、製造業を変えたい人、これらのいずれかになりたい人・興味がある人、もちろんキャディに興味がある人
X年後の製造業(フィクション?)
私はキャディの調達業務者です。
今回新規に取引させていただくA社から見積り依頼が届きました。顧客からはキャディオリジナルのMO CAD(Manufacturing Oriented CAD)データが送られてきており、調達業務者の手元で3D化や2D化などが自由にできます。
また、瞬時に調達部品の最適な加工条件や調達に関するリスク要因(遅延や不良)が解析されています。MO CADはサプライチェーン構築に必要なデータが全て入っており全てのOpsに必要な情報を提供できるようになっている。
現在キャディと取引可能なサプライパートナーの生産キャパシティはリアルタイムに更新されているため、先程依頼が来たA社図面に対するサプライチェーン候補は複数画面に表示されています。
数日後にB社からの大口の取引が予測されているため、少しA社への納期を遅らせることでまとめて生産・輸送ができるため、かなりコスト低減できる提案ができそうです。
現在キャディのサプライチェーンはグローバルに展開されており、その時々の輸送コストや為替、世界情勢などを考慮してリスクを抑えたサプライチェーンの候補が提案されてます。また、二酸化炭素排出量の提出が義務化されており、もっとも二酸化炭素排出量が少ないサプライチェーンを選択する場合も増えています。二酸化炭素排出量予測もMO CADデータを入力すると可能になっています。
サプライパートナーの工場も自動化・スマート化が進んでおり、工場の職人さんたちは自分たちの得意かつ付加価値の高い作業に集中しています。ロボットの協働作業も進んでいます。また、生産後の寸法検査や表面検査(外観検査)も自動化されていたり、出荷や在庫管理はAGVを始めとするロボットやシステムにより自動管理されています。
キャディの国内の倉庫(拠点)も同様のシステムで管理されており、グローバルで入出庫および在庫管理が自動化されています。全てのサプライチェーンの情報はクラウドのオンラインストレージに厳重に保存されており、複数のデータ拠点で分散してバックアップされています。他にもグローバル各地のサプライパートナーや材料商社と取引可能な状態を保持しており、こういったBCP(事業継続計画)に関する取り組みもキャディ・サプライパートナーとともに実施しています。
どうでしょうか。他にも設計も含めての全体最適化(DFM; Design for manufacturing)や加工工程ごとにサプライパートナーで分担するグループテクノロジーが当たり前になっているようなことも想像できます。それでは本編に戻ります。
キャディのデータ解析のパターン
下記のキャディAI Labのホームページにも書いてあるようにキャディ事業を非連続に加速するためのデータ解析は大きく下記の3つのパターンがあると考えています。
図面情報の構造化
プライシング分析・予測
サプライチェーンのデータ分析・予測
現在の開発ステータスを簡単に説明すると、図面情報の構造化に更に力をいれつつ、プライシング分析・予測、サプライチェーンのデータ分析・予測にも力を入れ始めています。本記事は図面情報の構造化の取り組みを中心にチャレンジやプライシング、サプライチェーンに関する取り組みについても説明するものです。
キャディのデータ詳細と戦略
取り組みについて説明する前に各種データについてご説明しておきます。図面情報、プライシング情報、サプライチェーン情報は具体的には下記に示すような内訳になっています。
各種情報の詳細は割愛しますが、大きな戦略としては図面情報の構造化を自動化しつつ、その構造化された情報からプライシング情報やサプライチェーン情報を紐付けて予測や分析するというものです。ただ、そのためにはいくつかの準備や不確実性の解消が必要でした。それは
図面(特に2次元図面)x 機械学習技術によるキャディの事業貢献
プライシング情報、特に原価を決めるキー情報の探索
各種プロダクト・ツールに散らばったサプライチェーンデータのデータマネジメント
であり、現状これらが全てある程度解けている状況です。そのため、さらに図面情報の構造化に力をいれつつ、プライシング、サプライチェーン構築に価値提供を進めていくフェーズに移っています。(データマネジメントが結構辛かった&データ基盤構築・運用をお任せできる人が急務ですが・・・)まず、次章ではコアとなる図面情報の構造化について詳しく述べたいと思います。
図面情報の構造化
製造業では製品の仕様情報を図面上に表現しています。図面の書き方はJIS規格で決まっているが、下記の理由から個社ごとに少しずつ図面上の表現が異なっています。
個社ごとに特にテーブル(表題欄)の書き方が異なる
図面データが構造化されたベクターデータではなく画像として流通していること
線の太さや文字のフォントなど個社ごとにスタイルの違いがあること
これらの理由から多種多様な情報を読み取る必要があります。例えば下記にある図面から線分情報、文字・記号情報、テーブル内記載情報などを抜き取ります。
線分情報:寸法線・寸法補助線、引出線、外形線、点線、中心線など
文字・記号情報:数値、文字、特殊記号
テーブル内記載情報:社名、材質、板厚、品番・図番、表面処理
現状どこまでできているのか
キャディではAI Labを立ち上げる前から図面情報の自動抽出に力をいれていました。また、今年の3月に発表させていただいたようにディープラーニング(深層学習/機械学習)とアルゴリズムを組み合わせて図面解析技術の開発を行っています。
これらの成果はDRAWERのコア技術として搭載されており、図面情報を用いたキーワード検索や類似図面検索などのアプリケーションに生かされています。類似図面検索機能の開発や運用については下記資料が詳しいです。
また、図面情報を検出する機械学習モデルをすぐにデプロイすることができるAPI開発基盤の開発も行いました。
図面情報の構造化に関するチャレンジ
図面情報の構造化はキャディのサプライチェーンの全てのオペレーションに関する入力情報であり、DRAWER事業においてもコア技術であるため開発投資を続けています。
文字検出・認識(OCR)技術の内製化
図面内に記載されている項目の自動推定
2DCAD(dxf, dwg)や3DCADデータの解析
新たな製造業データフォーマット・プロトコルの開発
継続的にオペレーションコストを機械学習技術により軽減する仕組み(MLOps, DataOps)作り
ここでは2つの話を取り上げたいと思います。
まず、2D CAD解析および新たな製造業データフォーマット・プロトコルの開発について述べます。製造業では多くのデータが使われます。主に設計業務の際に使われる3D CADや2D CAD、主に調達業務の際に使われる2D図面(PDF, PNG)があり、その情報が時に一致していなかったり統一的に扱われていないという課題があります。
MO CAD(Manufacturing Oriented CAD)
先に示したように図面情報をもつ顧客データは2D図面(PDF, PNG)だけではなく多岐に渡ります。また、図面に対する原価を計算するためには図面から材料や加工条件・加工時間(に関連する情報)などを読み解く必要があります。そこで、顧客特有の図面解析技術を貯めつつ、顧客がもつPDF図面以外のデータの情報をリンクしたり、サプライチェーンの後工程に必要な情報を一元的に管理することに挑戦しています。それをキャディではManufacturing Oriented CAD(MO CAD)と読んでいます。下記に示すように2D図面と2DCADを機械学習技術やアルゴリズムで解析し情報を統合するMO2DとMO2Dから3次元情報に変換した情報と3DCADの解析結果を統合したMOCAD(3D)からなるデータプロトコルを定義し、加工条件・時間などを解析可能であるデータをサプライチェーンの後工程に提供します。
現在機械学習技術、アルゴリズム、データスキーマ、アプリケーション同時並行に開発をしています。技術的な不確実性が多種に及ぶので非常にやりがいのある開発になっていると思います。
オペレーションコストを継続的にMLモデルにより軽減する仕組み作り
キャディには多くのオペレーションがあり、その1つ1つがキャディの事業を成立させるためには欠かせないものになっています。それらを技術の力で効率化、自動化していくことは開発本部の責務となっています。そのなかで図面から取得される情報を入力するオペレーションがあります。現在までは人手による部分が大きくありましたが、機械学習モデル(ML model)を用いて効率化することに挑戦しています。Human-in-the-loopの仕組みを構築し、継続的に機械学習モデルを学習しオペレーションコストをさげることに挑戦しています。
また、現在大量の図面データをアルゴリズムや機械学習モデルで推論した結果をDB化するようなパイプラインの構築も実施しています。それ以外にもサプライチェーンのコストを低減する施策はいくつか実施していますがそれはここでは割愛します。
プライシング・サプライチェーンへの価値
では、図面情報が構造化された場合にそれを用いてプライシングやサプライチェーンにどういった価値が提供できるのでしょうか。簡単に3つだけ説明します。いずれもキャディのサプライチェーンのQCD力(Quality, Cost, Delivery)を強化するものになります。
より正確な原価予測
図面情報の構造化やMO CADにより加工条件や加工時間をより正確に推定することが可能になるため、より正確な原価を予測することができるようになると考えています。
不良や遅延などサプライチェーンに悪影響を与えるリスク予測
図面構造化情報と不良・遅延実績情報からリスク分析が可能になり、発注前に不良や遅延などのリスクがある程度予測可能になると考えています。
材料費、輸送費、拠点費などのコスト予測
図面構造化情報から製造にかかる材料費や、積載量予測などから輸送費や保管費や検査費などを予測可能になる。またその予測結果からサプライチェーン・マネジメントを最適化することが可能になると考えています。
まとめ
ここまでキャディにおけるデータ解析について
キャディのデータ解析のパターン
キャディのデータ詳細と戦略
そのコアとなる図面情報の構造化
プライシング・サプライチェーンへの価値提供
について述べました。取り組みが非常に多岐に渡るので多くのポジションのメンバーが足りません。また多くの開発チームが必要であるためそれらをマネジメントするメンバーも足りません。具体的には下記のポジションになります。
MO CAD Engineer(現在JD準備中)
MO CAD Engineerについては現在JDを準備中なので、興味あるかたは下記のカジュアル面談もしくはTwitterにDMください。MO CAD Engineerについてはアルゴリズム開発、アプリケーション開発、データスキーマ開発いずれも募集する予定です。また、もう少し詳しく聞きたい、もっとカジュアルに聞きたいという方は以下のグループトークやカジュアル面談を応募ください。グループトークは10/13(木)18:00からなのでお申込みをお願いします。
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