ボツネタ御曝台【エピタフ】混沌こそがアタイラの墓碑銘なんで#023
元歌 松田聖子「赤いスイートピー」
心の岸辺に咲いた
赤いスイートピー
『どついたるねん』の主演
赤井ヒデカーズピー
赤井ボクシングジム?
「そうだよ」
あのー、前回の記事でもいいましたけど、アタイラ、ケンカでは負けたことないんで、正直ボクシングは必要ないです
「いや、違うんだ。ケンカは相手を屈服させた時が勝ちだろ? でも、裏社会の場合は、相手が銃器を持っている可能性があるから、一瞬で意識を失わせる事の方が重要なんだ」
なるほど、アゴを打ち抜いて、脳を揺らすわけですね
「そのとおり」
まあ、仕事ですからやりますけど……
……
「研修を実施するにあたって、注意点が二つあるんだ」
「一つ目。今日は簡単な顔見せ程度だから、君たちは、ダイエット目的で無料体験に来たOLという設定で立ち振る舞ってほしいんだ。ちゃんとした練習は一般人がいなくなった夜中に行うことになっているから」
大丈夫ですよ、アタイラ、女版『ザ・ファブル』みたいなもんなんで、弱いふりも余裕でできますから
「二つ目、これから、赤井会長にご挨拶するんだけど、彼が何をいってるか聞き取れなくても、決して聞き直さないこと! いいね!」
……
そんなわけで、所長とアタイラは、暇そうにしていたイサオを連れて赤井ボクシングジムへ向かいました
「赤井会長、いつもお世話になっております、さあ、二人もご挨拶して」
ハーイ! 新宿、渋谷は、うちの庭! 109にも便所サンダル! の『アタイラず』でーす、よろしくおねがいしまーす、ペコリ
「ね、非常に興味深い娘たちでしょ? 赤井さん」
きょ、興味深い……
このあと、アタイラとイサオは、赤井会長に案内され、ジムを見学しました
ボクシングジムというところは、ネコにとって非常に興味深いニオイがするようで、イサオはジム内を歩き回り、あらゆるもののニオイを嗅ぎまわっていました
そして、キッズコースの子供たちとネコパンチで一戦交えたあと、どこかへスッと消えてしまいました
イサオは、自分の毛色が変わるところを、アタイラ以外の人間には絶対に見せないようにしているようなのです
そのイサオの行動様式は、同じ場所に長居をしない高所長にそっくりでした
所長も、朝に出勤したと思ったら、すぐにどこかに消えてしまうし、今日だって、アタイラを赤井会長に紹介した途端、サッと逃げるように帰っていきました
裏社会の人間にとって、同じ場所に長時間いることは、相当リスクの高いことなのでしょう
「そんじゃ、とりあえず、ボクシングセンスを見たいから、シャドウボクシングをしてみようか」
えー、シャドウボクシングやるんですかー
イイんですかー、車道でボクシングしたら渋滞になっちゃいません?
「ワッハッハー! シャドウってのは、車道ではなくて、影のことだよ。対戦相手を想像して闘う、ようするに、イメージトレーニングだね」
やだー、勘違いしちゃったー、てへぺろ☆(・ω<)
「しょうがないよ、初心者なんだから」
でも、見えない敵と闘うなんて、ボクシングを知らない人が見たら、だだの頭のおかしい人ですよねぇ
「ワッハッハー! 大丈夫、ボクシングを知らない人なんていないから」
やだー、そうですよねー、ぺろてへ(>_<)
あっ、舌嚙んじゃった、てへぺろ☆(・ω<)
……
じゃ、切り込み隊長のアタイから行きまーす!
「よし! それじゃ、ワシの指示通りに動いてみて」
……
よっしゃー! シャドウ! この野郎! ぶっ殺すぞ! このシャドウ野郎!
あっ! そうですよね、先輩、すいません、つい興奮しちゃって!
……
お願いしまーす
「はい、ジャブ、ジャブ、ストレート、イイねー、はい、そこでダッキング、ジャブ、ジャブ、フック、ボディ……」
シュッ、シュッシュッ、はい、パン、パン、パーン……
「おー、なかなか筋がイイねー!」
「イイよー、ミヤコ蝶々のように舞い、春日八郎のように刺す!」
「そうそう! ミヤコ蝶々のように舞い、春日八郎のように刺す!」
……
会長すいません、言葉が長すぎてリズムに乗れないんすけど
「あー、ゴメン、ゴメン」
……
「はい! 蝶! 蝶!蝶!蝶! 蜂! 蜂!蜂!蜂!」
「蝶! 蝶!蝶!蝶! 半! 半!半!半!」
……
会長すいません、時代劇によく出てくる賭場みたいになってるんで!
しかも、後半、蜂じゃなくて半になってますから!
丁か半かサイコロの目が気になって集中できないんすけど……
「ゴメン、ゴメン、真面目にやるね」
……
んだよ、ふざけてたのかよー!
……
「はい、蝶のように舞い! 蜂のように刺す!」
「イイよー、蝶のように舞って! そう、そこですかさず蜂のように刺す! ジャブ、ジャブ、ワンツー!」
「ん~、イイねー! 君、才能あるよー」
ありがとうございます
「じゃ、ワシは用事があるんで、このへんでサイナラ~」
……
……
会長、帰っちゃいましたねー
散々ふざけ倒して、帰っちゃいました
え? 先輩もシャドウボクシングやりたい?
じゃ、アタイが指示出すんで、その通りに闘ってくださいねー
イイですかー、モーニング娘。の『恋愛レボリューション21』風に行きますねー
……
それ! ♬ 蝶蝶蝶 いい感じ 蝶蝶蝶蝶いい感じー ♪
はい! 先輩は蝶だよー! そう! 蝶のように舞って!
♬ 蝶蝶蝶 いい感じ 蝶蝶蝶蝶いい感じー ♪
はい、もっともっと蝶のように羽ばたいて!
ほら、もっと必死で羽ばたかないと地面に落ちちゃうよ!
地面には天敵がいっぱいいるよー!
♬ 蝶蝶蝶 いい感じ 蝶蝶蝶蝶いい感じー ♪
……
なんすか? 先輩
蝶はもう飽きた? たまには蜂のように刺したい?
そーすよねー、すいませんでした
……
じゃ、リクエストにお応えして、次は『みつばちハッチ』でいきましょー!
……
♬ ゆけゆけハッチ みつばちハッチ ♪
はい、先輩はミツバチだよー! ミツバチのように刺して! 刺して! 刺して!
♬ とべとべハッチ みなしごハッチ ♪
はい、先輩はみなしごだよー、みなしごのような、やさぐれた表情でにらんでー!
大人なんて、社会なんて信用しねーぞ! って叫びながら飛んで! ジャーーーンプ!!
♬ 姿やさしい もんしろ蝶々 ♪
おっと、ここで蝶が出てきたよー! はい、蝶のように舞って!
♬ おどけバッタに テント虫 ♪
はい、バッタのように、その場でジャーーーンプ!
したかと思ったら、唐突に『てんとう虫のサンバ』を踊りだすよー!
そう! 先輩は、結婚式の二次会で『てんとう虫のサンバ』を歌う新婦の友だちの横で踊り狂う、酔っぱらった親戚のオジサンだよー!
二次会は若者だけで盛り上がりたいから、サッサと帰ってほしいのに、空気を読まずに踊り続ける親戚のオジサンだよー!
♬ みんな友達 仲間だけれど 母さんほしかろ 恋しかろ ♪
はーい! みんなで盛り上がってる時に限って、母さんが恋しくなるよー!
急にしょんぼりした先輩が気になって、対戦相手が近づいてくるよー!
「どうしたの? 大丈夫?」と覗き込んだところを
はい! 下からのアッパーカットをパーーーーーーン!!
卑怯じゃないよー! 先輩は卑怯じゃない!
油断していた相手が悪いよー!
♬ ゆけゆけハッチ みつばちハッチ ♪
はい、アッパーでふらついてる相手を蜂のように刺す! 刺す! 刺す!
追い打ちをかけて、ジャブ、ジャブ、ストレート、ワンツー、ワンツー!
おーと! ここでレフリーが止めたー!
TKO! TKO!
やったー! 勝ったー!
……
……
あれ? なんか人が集まって来てますね
ヤバッ! アタイラって目立っちゃダメでしたよね
こそっと帰りますか……
……
ええっと、あっ、ヤバ~い!
早く帰らないとスキンケアの時間がなくなっちゃう~、てへぺろ☆(・ω<)
ほ、ほら、先輩も、OLてへぺろ☆(・ω<) やって!
……
先輩、何か、もう一回やれって、オーディエンスのブーイングが凄いんすけど
どうします? ご要望にお応えして、もう一回だけやります?
……
じゃあ、最後は『ハチのムサシは死んだのさ』でいきますか
先輩は、K-1の武蔵選手になってください
もう、キックボクシングになっちゃいましたけど、気にせず行きましょう!
……
……
♬ ハチのムサシは死んだのさ ♪
はーい! 最初は死んでるところから始まるよー!
リングの上で、大の字になって死んでるよー!
ピクリとも動かないよー!
♬ 畑の日だまり土の上 ♪
ほーら、陽だまりに放置したら、死体が干からびちゃうよー!
あっ! 対戦相手が心配になって近づいてきたよー!
死んでるの? ホントに死んでる? と覗き込んできたところを
はい! 下からのアッパーカットをパーーーーーーン!!
卑怯じゃないよー! 先輩は卑怯じゃない!
油断していた相手が悪いよー!
リングに上がった瞬間に、もう試合は始まってるんだよー!
♬ 遠い山奥麦の穂が、キラキラゆれてる午後でした~ ♪
はーい! ここで追い打ちをかけなきゃいけないのに、思わず見とれちゃうよー!
キラキラゆれてる麦の穂が綺麗すぎて、見とれちゃうよー!
そんな油断をしていたら、あっ! 相手のキックが金的に入っちゃうよー!
あーと! これは痛い! 思わず股間を押さえてうずくまるよー!
あまりの痛さに脂汗が出てくるよー!
観客席から「金的の痛さが女にわかるのかー!」とヤジが飛ぶけど、無視するよー!
うーん、これはしばらく回復しそうにないよー!
……
……
しょうがないから、いったんCMが入るよー!
……
タマホームのCMだよー!
みのもんたが「タマホーム、イイねー!」といったら中継にもどるよー!
……
はい! K-1中継にもどったー!
まだ、タマを押さえてうずくまってるよー!
これ、ネタじゃないよー!
本当にあった話だから怖いよー!
……
……
さすがに、対戦相手も心配になってきたよー!
ほら、対戦相手が近づいてきたよー!
「大丈夫? タマつぶれてるの?」って覗き込んだその瞬間に
はい! 下からのアッパーカットをパーーーーーーン!!
卑怯じゃないよー! 先輩は卑怯じゃない!
油断していた相手が悪いよー!
正直これで三回目だよー!
学習能力の無い相手が悪いよー!
はい、アッパーでふらついてる相手を蜂のように刺す! 刺す! 刺す!
追い打ちをかけて、ジャブ、ジャブ、ストレート、ワンツー、ワンツー!
おーと! ここでレフリーが止めたー!
TKO! TKO!
やったー! 勝ったー!
シャドウに勝ったどぉーーーーー!!!!!