【小説】ラヴァーズロック2世 #26「ブルーバード」
ブルーバード
乾燥しきった広大な荒れ地の中に、一軒の小さな民家と馬小屋が見える。
故郷のユーラシア大陸に向かって目を回しながら可愛らしく転がるタンブルウィードが時折横切る以外、動くものは何もない。
要するに、ライ・クーダーのスライドギターが聞こえてきそうな風景。
開けっぱなしの玄関がまるで黒々とした巨大な木炭のように見えるのは、陽に照らされた漆喰の壁が眩しいほどに白いからだが、一歩部屋の中に入ってみると室内はそれほど暗いわけでもない。
が、床は土がむき出しだし、目を凝らして見るほどのものなど何もない、恐ろしく質素な部屋だ。
奥の壁際には背の低いベッドがひとつ。枯草をモロッカン柄のブランケットに詰め込み、木枠に押し込んだだけの簡素で無愛想なベッドなのだが、これが意外と快適なのだ。
そんなベッドに静かに腰を掛け、耳を澄ましているひとりの男がいる。
ここから先は
2,411字
¥ 100
期間限定!Amazon Payで支払うと抽選で
Amazonギフトカード5,000円分が当たる
Amazonギフトカード5,000円分が当たる
この記事が気に入ったらチップで応援してみませんか?