【小説】ラヴァーズロック2世 #52「青空の下で」
青空の下で
夜には着くだろうとたかをくくっていたが、とうとう明け方になってしまった。
家に近づくにつれ蹄の音は徐々に変化していき、慣れ親しんだ大地の感触が馬の背からも伝わってくる。
ブルーバードの頭に浮かぶのはジェーンの笑顔。とにかく、一刻も早く会いたい。
自分自身のことなどすっかり忘れ、かけがえのない存在についてただひたすらに思いを巡らすことの何と心地よいことか。
今はもう、ジェーンと巡り合う前の自分が、どのような心持で生きていたのか、全く思い出せないくらいだ。
そしてジェーン個人を超えて、女というものの恐ろしさ、男を変えてしまう女の恐ろしさも同時に感じてしまうのだった。
女といえば、もうひとりの奇妙な女、自分を撃ったあの少女は何者なのだろう?
彼女の口から発せられた言葉も意味不明だが、それ以上に奇妙なのはその行動だ。
それらは非常に機械的に執り行われ、感情の入り込む余地は全くないように見えた。
そして、平射された弾の弾道はバナナのような曲線を描いてブルーバードの足元へ。
だが、運悪く地面から顔を出していた鉱物にはね返り、弾丸はかれの会陰に命中したのだった。
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