【小説】ラヴァーズロック2世 #34「日曜の午後に」
日曜の午後に
いつの間にか町の日常となっていた坂を上るダンプトラックのエンジン音が、ある日を境にぱったりと途絶えた。
気がつくと、高台の広い空き地だったところに、純白の巨大建築物が静かに立っていた。
子どもたちの間で様々な噂が飛びかったが、大人たちは一様に沈黙していた。やがて何かを察した子どもたちも、次第にその話題を避けるようになっていった。
その日は休日だったが、両親は出かけていて、家にはロックと涼音のふたりだけ。
珍しく階下に降りてきた涼音は、キッチン側の食卓テーブルで紅茶を飲んでいる。
ロックは3人掛けソファに横になっていて、キッチン側からは投げ出された足しか見えない。
壁掛け時計の秒針の音が、やけに大きく聞こえる日曜の午後。
涼音は脚を椅子に絡ませたり、ぶらぶらさせたりしながら、時折ロックの方をチラチラと見る。
そして、テーブルに両肘をつき、マグカップを口に運ぶ。小さな顔が大きめのマグカップをさらに大きく見せる。
不意にインターホンが鳴る。
思いのほか音が大きくて、身体をビクッとさせるふたり。
「ねぇ出てよ。私この家の人じゃないんだから」
「あんたの方が近い」
そうはいいつつも、ロックはソファから起き上がりインターホンへ。
が、モニター画面には誰も映っていない。
おかしいなぁ、広角カメラのはずなのに……。
このまま放っておいても、なんだか気になってしまって仕方ないだろう、ということで真相を確かめるため玄関へ向かうことになった。
「なんかドキドキする」
涼音はスキップしながらロックの後ろをついていく。
玄関に着くとふたりは顔を見合わせた。
ロックは躊躇せずドアを勢い良く開ける。こういう場合は恐る恐る開けるより、一気に行ったほうが……。
外側に開いたドアが何かにぶつかったような、あまりよろしくない手ごたえを感じ、「あっ」と思わず声を漏らすロック。
何やらふたつの白い塊が、玄関前の地面に縦に並んで張り付いていた。
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