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保険外併用療養費について

療養の給付とは?
私たちが、病気やケガをして病院を受診すると、医師の診察があり、傷に包帯を巻いてもらったり、薬を処方してもらったりします。これらは保険上、「療養の給付」といいます。あまり馴染みのない呼び方だと思いますが、普段、私たちが保険証をみせて、自己負担(1割~3割)で受けている医療が、これにあたります。

一方で、美容整形などは、この「療養の給付」には含まれないため、全額自己負担になります。一般的に「自由診療」と言われます。
例えば、Aさんの脱毛する料金を、みんなから集めた保険料でサポートするのは、なんか納得できないですよね。自由診療は、やはり個人の負担でってことになっています。

また、がんの治療で聞くことが多い「先進医療」についてはどうでしょうか?
これも実は「療養の給付」には含まれていません。
先進医療とは、これから療養の給付に含めるかどうかを評価している段階の医療・治療になります。
いい治療効果がでたと評価されれば、保険適用になっていくものです。


混合診療の禁止について
日本の医療のルールの1つに「混合診療の禁止」があります。

「保険適用となる治療(療養の給付)」と「保険がきかない治療(自由診療)」を組み合わせることを「混合診療」といいます。

原則、この混合診療は禁止されており、以前は、混合診療を受けた場合には、保険適用となる治療についても、全額自己負担になってしまう仕組みになっていました。

図のように、自由診療を受けると、保険給付される80万円についても自己負担になります。自由医療の20万円と合わせて100万円が全て自己負担になってしまいます。


過去には、じん臓がんの治療において、保険適用のインターフェロン療法と自由診療の活性化自己リンパ球移入療法を併用した治療(混合診療)を受けたところ、本来であれば、保険適用になるインターフェロン療法までも全額自己負担になってしまい、それはおかしいと裁判になったことがありました。

最高裁判所の判決は、「混合診療は禁止」というルールを認め、じん臓がん患者の訴えは退けられました。

このように、混合診療の禁止をすべてに適応してしまうと、事実上、治療の選択・組み合わせができないことになってしまいます。
お金がある富裕層ならば、全額自己負担で、自分が望む治療を受けることができるかもしれませんが、多くの方は、保険適応の治療のみという選択になってしまいます。

そこで、混合診療の禁止を一部解除しようと、2006年よりスタートした制度が、
「保険外併用療養費」です。
漢字だけ読んでもよく分からないですが、
「保険が適応される治療に、保険が適用されない保険外の治療を、併用した時にも、療養費用は払ってもらえます」というものです。


先進医療は、この保険外併用療養費の対象になりましたので、下の図のように、自己負担は100万円ではなくなり、【赤枠の一部負担】と【青枠の先進医療部分】の合計44万円になります。

結果的に、80万円-24万円=56万円が保険外併用療養費としてカバーされます。
この制度により、がん治療で言えば、先進医療を受けやすくなりました。

ただ、青枠の先進医療(全額自己負担部分)については、保険給付とはなりません。
この先進医療の中には、数百万円もする高額な治療があります。
この部分をカバーできるのが、民間の医療保険やがん保険の先進医療特約になります。
先進医療に対するお金の備え方については、また別の機会にお伝えします。

格差が進むだろう日本社会です。
その経済的格差が、そのまま医療格差にならないように、社会保障が健全に機能してほしいと切に願います。

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