心臓日記第4部──1日目から3日目

1日目
 入院準備はさすがに慣れたもので、手続きから各種事前検査までするすると流れるように終わらせる。赤ちゃんがベッドで運ばれていくのを見られてかわいい。
 明日は左手首と右鼠蹊部の両方からカテーテルを入れる計画。これはつらそう。
 夜からまた点滴を入れる。

2日目
 今回は午後からの手術(時間がかかるのが分かっていたから)。いつもの手術室。ビニールの帽子を被らされたが、初めてな気がする。しかしこれを被らないと入れないらしい。これまでも被っていたのに気付いてなかったのだろうか。
 左手首および右鼠蹊部に局部麻酔をしてカテーテルを入れる。時間が経過し、更に左鼠蹊部からも2本カテーテルを入れることになる。
 ここからが長い。先生方が心臓の映像を見ながらなにかいろいろディスカッションをしている。これまで聞いたことのない専門用語ばかりでまったく分からないが、処置が困難であることだけは分かる。
 空気圧。30分ごと。その他専門用語。いろいろな指示が飛んでいる。会話が止まらない。ひたすら長い。
 また途中で気分が悪くなる。元に戻る。その繰り返しが始まった。
 手術時間は最終的に6時間30分。一度目より長い、最長である。毎度のことだがそんなに時間が経っているとは思わなかった。
 今回は一度目の血管が石灰化しており詰まっているのでそこの処置のはずだったが、入り口から詰まっていて結果的には処置できなかったとのこと。
 手術が終わりベッドを移って病室に戻ろうとすると、前回と同じ血圧低下に伴う迷走神経反射が起こる。冷汗、顔の違和感、唇の色がなくなる、嘔吐。そして今回は「意識がなくなった」ことを自分で把握できた。なくなることが分かったのではなく、「はっ」と意識が戻ったことが分かった。あれは本当に「はっ」とした、としか言えない感覚だった。
 そしてまたICU。夜のうちに手首、右鼠蹊部、左鼠蹊部の一本を抜く。この抜く時がいつもつらく、ここでもまた吐いてしまう。
 例によって足を動かせない完全安静時間が始まる。点滴スタンドが4本もある。右手首動脈からの点滴がうまくいかず左腕に切り替えなどもあり、とりあえず穴だらけになっている。手術中の出血がひどかったらしく、1回目に続き2度目の輸血をされる。
 夜中に左手首のTRバンドを外す。今回は出血は止まっていた。しかし右鼠蹊部からまた出血しており、改めてテープなどを貼り直す。

3日目
 朝早く、左鼠蹊部のラスト一本のカテーテルを外しに主治医の先生が来る。30分間は指で押さえ続けてもらわねばならないので、その時間にいろんなことを聞く。

・今回、固まって詰まっているところは処置できなかった。そこから廻す血管にステントを入れた。
・そこの詰まっているところはカテーテルでも良いんだけど、またリスクがあるので開胸手術をしたい。全身麻酔なので眠っているうちに終わるが、負担がカテーテルより大きいのでこれまでみたいな4-5日での退院は無理。2、3ヶ月後がいいと思うがまた相談する。
・いま心臓がふつうの人の半分しか動いていない。しかし有酸素運動はやるべき。無酸素運動、すなわち筋トレや重いバーベルなどは駄目。
・迷走神経反射がこわいと言うと、ふつうの生活をしている分には心配いらないとのこと。
・「不整脈、心房細動、心室細動って何ですか?」と聞くと、「すべて心筋梗塞の症状。心房細動は治療できるんだけど、心室細動は心臓が止まっている状態のこと。最初に救急車で運ばれてきた時、この直前だった。なのでインペラを入れなくてはならなかった」。あと数分遅ければ心臓が止まっていた模様。なかなかショックな話だった。

 こういうことはみんな聞きたいのだろうか、そうでもないのか。余命半年とかは嫌だが、こういう情報は知っておきたい。

 昼前にはすべての足の固定テープも取れ、ようやく曲げたりベッドの頭を起こしたりできるようになる。気分が悪くなることはない。しかし最後の左鼠蹊部の腫れが大きく、また造影CTをやるかもしれない。貧血もまだ治っていないのでまた輸血するかもしれないとのこと。とりあえず予定であった4日目の退院はなくなった。

 丸一日食べてなかったのにお腹があまり空かない。ふつうに食べるけどご飯は残すし、以前みたいな食事が待ち遠しくて仕方ないと言う感じではない。

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