心臓日記第4部──4日目から7日目

4日目
 ICUが朝からバタバタしている。難しい患者さんのようだ。たくさん声が聞こえる。
 二つ向こうの部屋で、亡くなられた方に声をかけているような言葉が聞こえる。「好きなことしたから悔いはないっていつも言ってたし」「治ると思ってがんばったのにね」。泣いてしまう。
 朝の採血で貧血が進行していて、また輸血するかもしれないとのこと。血圧も70/40と低い。寝ている分には自覚症状はないのだが。
 とは言え昨日よりは元気が出ない、というか全体がだるい。リハビリの先生も来たけど今日はベッドの上だけでやりましょうということで脚などいろいろ揉んでもらう。気持ちよかった。
 左右鼠蹊部と下腹部が痛いので結局造影CT。造影剤ももう慣れた。
 その後通常病室へ戻る。広い目の部屋で良かった。
 結局2回目の輸血も行う。多少気分が良くなるが血圧は上がらない。
 アブレーション手術の人が戻って来たが、問題なく終わった模様。こっちは会う看護師さんみんなに「前回は大変だったねえ~」と言われてしまうのに。自分的には今回の方がだいぶつらいのだが、前回の二度の迷走神経反射はよっぽどすごかったようだ。
 夜に主治医の先生が来る。CTは問題なかったので、日曜日に退院できるかもとのこと。これまで4回入っているので毎回同室の人の状況も分かるのだが、先生に「他のみなさんはなぜ早く手術が終わって早く帰れるんですか?」と聞くと、「それだけ重症だということです」と。ぐうの音も出ない。

5日目
 暑い。少し熱が高い。
 リハビリの先生と廊下を歩く。血圧も上がってきている。問題なく歩ける。一回目はここに至るまで何日かかっただろうか。
 リハビリの紙に「心不全(急性増悪)」と書いてある。初めて見た。なんだろうその恐ろしげな名称。1984か。と思ったら「憎悪」ではなく「増悪(ぞうあく)」だった。初めて知る単語。
 5日ぶりの洗髪をする。それ以外は特別なことはなく。血圧は低めだが70/40ほどではない。お腹があまり空かない。

6日目
 朝にいつも補佐についている研修医の先生が来て、問題なさそうなので明日退院できると。むしろ今日できた。
 体重がかなり落ちていた。60kgギリギリ。血圧はほぼ戻っていた。
 コンビニに行けたので飲み物を買う。炭酸と炭酸なし。昨日から喉が渇く。
 90年代からお世話になっていた先輩(年齢はさほど変わらない)が7月に亡くなっていたことをFacebook で知り、めちゃくちゃショックを受ける。それまでも特別なことは投稿されていなかったのに。娘さんの投稿で知ったのだが、亡くなった理由は書かれていなかった。「何があるか分からない」なんて自分のことで嫌ほど分かったはずなのに。

7日目
 退院。もういつどこで何をしないといけないか分かっている。
 ショック状態も抜け、血圧も上がり、輸血でヘモグロビンも復活し、鼠蹊部の痛みもかなりなくなり、かつ丸一日退院が伸びたので、むしろ気持ちは元気。
 家で血圧を測ると109/73。素晴らしい。しかし体重がなんと59.5kg。60kg切ったのなんかここ2, 30年見た覚えがない。確かに今回はずっとあまりお腹が空かなかったので、白ご飯は毎回半分くらいしか食べなかった。おかずはもうさすがに飽きた。1回目は物が食べられるだけで幸せだったしある意味物珍しいところもあったが、いつまでもそうはいかない。次回の長期入院時が怖い(この観点からも)。
 まる1週間ぶりのシャワー。体と腕が傷だらけ。3回目の左半身全体の内出血は痛みはほぼないが、色は消えていない。今回の鼠径部も痛みは減って来たがまだ腫れている。

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