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#2. 退職時のトラブル

第2回目は経営者向けに、退職時の「あるある!」というトラブルと、その対処方法・予防方法について、書きたいと思います。

業務の引き継ぎをしてくれない

退職を申し出てきた社員から「年休消化のため来週から出社しません」と一方的に宣言されて困った!ということ、あるのではないでしょうか。

よっぽど会社が悪いとか、病気やケガで出社が難しいなどなければ、引き継ぎをしないのはマナー違反、社会人として欠格です。
そんな社員は辞めてもらって良かったと思うようにしましょう。
…というのは半分冗談で(笑)、引き継ぎをしてくれないと本当に困りますよね。

とはいえ、年次有給休暇はれっきとした労働者の権利。
会社側に時季変更権(※繁忙期などで事業運営を妨げる場合に、年休の時期を変更できる権利)があるからと言っても、退職予定日後に変更することはもちろんできません。
引継ぎを諦めなければならないのでしょうか。

アドバイスとしては、就業規則や雇用契約書の「退職」事項に、退職時の引き継ぎの義務を記載しておくこと。
就業規則は会社のルールですし、雇用契約は労働に対する対価を支払うという「契約」なので、よほどでない限り守ってくれるでしょう。

でも、残された年休を消化したいという労働者の気持ちもわかります。
退職してしまっては二度と使えませんので。

そういう時はお金で解決!(笑)
年休の買取りは基本NGですが、退職時に限っては許されているんです。
(わりと有名な話ですね)

有給を買い取る場合は、給与所得ではなく「退職所得」となります。
退職所得は、これまで働いてきたことへの慰労の意味がありますので、給与所得よりも税制が有利です。
勤続1年(端数切り上げ)ごとに40万円(20年を超えた年数は70万円)が所得税・住民税ともに非課税になるので、多少面倒でも退職所得として計算してください。
もしそれでもごねる場合は、「退職慰労金」などの名目で少し色を付けてあげるのも良いと思います。
退職所得は社会保険料もかかりません。

退職する人にそこまでお金をかけたくないという気持ちもわかりますが、良い会社は入社時よりも退職時をより大事にするものです。
私の勤める会社は、退職者の最終出勤日は社員全員で夕礼を行い、上司の労いの言葉と、同僚からのメッセージや贈り物の時間を十分に取ります。
そうすることで、退職者はきれいな辞め方をしますし、残された社員も「良い会社にいて良かったな」と思えます。

そもそも職場が普段から年休を取得しやすい環境であれば、最後に「駆け込み年休消化」することも無いので、そういった点も見直す必要があると思います。

貸与物を返してくれない

最終出社日を過ぎた社員が、PCや業務用端末を返却してくれない。
大事な情報も入っているので返してほしいけど、あまり大げさな手段は取りたくない・・。
飲食店の場合は制服等の問題もあると思います。

この場合のアドバイスですが、「最終給与を現金で直接支払う」ことをお勧めします。
当月支給の会社で最終給与が無い場合は残念ですが、多くの中小企業は翌月支給だと思いますし、もし当月支給であっても残業分は翌月に支給されますよね。

実は労働基準法では、原則が「現金払い」、例外として(本人の同意を得れば)銀行振込み可能なんです。ご存知でしたか?
給与を支払わないor遅らせるのは大問題(労働基準法違反)なので、「給与を支給日に現金で払うので直接取りに来てね」という形にすれば、わりとスムーズに貸与物を返却してもらえると思います。

突然音信不通になっちゃった

音信不通のまま退職となるケースは世間一般的によくありますが、まずは連絡がつかない理由を確認することが大切です。
もしかすると本当に重篤な病気やケガで出社ができないとか、最悪のケースも考えられます。
まずは家族などの身近な人に連絡をして(そのために入社時に身元保証書や緊急連絡先を取得しておくことが大事です)、慎重に対応しましょう。

だいぶ前の経験ですが、音信不通の理由が「警察のやっかいになっていた」ということがありました。
もちろん本当に犯罪を犯したのであれば懲戒解雇扱いですが、刑が確定するのはかなり時間がかかりますし、場合によっては会社の名誉も傷つく恐れもあります。
刑が確定しない=懲戒解雇の判断がつかない=即時解雇として「解雇予告手当」(30日分の平均賃金)の支払いも必要になります。

そのようなときのために、就業規則の退職事項に「自然退職(自動退職)」を定めておくことをお勧めします。
「無断欠勤が2週間におよびなお連絡が取れないときは自然退職とする」
「休職期間が満了しても復職できないときは自動退職とする」
※ただしこれが100%確実というわけではありません。

自然退職ではなく懲戒解雇や解雇とする会社もありますが、解雇が成立するためには解雇通知が本人に確実に届く必要がありますし、先ほどの解雇予告手当の問題も出てくるのであまりお勧めしません。

会社が立て替えた本人負担分の社会保険料を返してくれない

私傷病などでお休みしたまま退職になる場合など、これは本当に「あるある」パターンです。
社会保険料だけではなく住民税も、休職開始時に普通徴収(本人納付)に切り替えておかないとかなりの立替金額になります。

残念ながら確実に回収する方法は法的手段に訴えるしか無いのですが、手間と労力がかかりますし本人に支払い能力が無ければ困難です。
毎月コツコツ、立替えた金額を本人に通知して会社に振り込んでもらうというのが一番です。
健康保険加入者であれば、傷病手当金を受給できる可能性もあるので、入ってくるお金があれば本人も素直に払ってくれるものです。
「立て替えておいて復職時にまとめて回収しよう」でうまくいったケースを見たことがありません。本人同意なしに退職金で相殺するなどは絶対にダメです。

もし悪質で立替金額が多額におよぶ場合は、「法的手段を辞さない」という態度も必要です。

さいごに

今回の内容はいかがだったでしょうか。
このようなことにならないように、普段から社員とコミュニケーションをよくとり、信頼関係を築くのが一番です。

いざというときのために、参考になれば幸いです。

【ご注意】
・内容を簡単にまとめるため、細かな法令や文言が抜けていることがありますことご了承ください。
・記載時点の法令に準じております。

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