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フリル先輩に叱られて
日本語学校のクラス担任って、何をするの?
非常勤で入りしばらくは何もわからなかった。でもとても忙しそう。でもまあ、自分には関わり合いのないこって…。
1年後、それは思いがけなく降ってきた。授業後、引継ぎ相手の講師と話していたところ、主任がやってきて「み~つけた」とばかりに、2人とも次期クラス担任にされてしまった。い~のかそんなんで。
何をどうしたらいいのか、皆目わからない。次期はその主任に助けられ、優秀な学生たちに助けられ、夢中でこなしてなんとか終えた。
フリルおばさんは、その次の期に現れた。見た目、私より年上かもなんて思ったが、いやいや、私より年上の人ってめったに会わない。
しかも襟・袖・トップスの裾・スカートの裾のどれか、複数の場合もあるが、パステルトーンのフリルがついた少女風。
(ゴスロリではないし、メイドでもないが)
日本語教師歴はかなり長いベテラン。おそらくキャリアの浅い私のために、指導役として、同じクラス担当になったのだ。
そのフリル先輩は、何を言っても柔らかく「そ~なんですか~」。
具体的な相談は回答が返ってくるが、ちょっとした、なごみの雑談などで、生きた会話ができないのだ。
食えないな~と思っていた。
そんな矢先、学生に授業についてのアンケートを取った。学校全体の話だ。その結果が出て「メインテキストの進みが遅い」という指摘があった。
日本語学校の中には、テキスト一冊をひたすら進めるところがある。勤務校はそうではなく、メインテキスト以外に、漢字、発音、聴解、語彙、文法、読解のテキストを、クラスに合わせて適宜使用する。当然メインテキストの進みはメイン一択の学校に比べて遅くなる。
フリル先輩は「これはゆゆしきことですよ」と言った。「ああ、そうですか」と私。
ゆゆしきこと? ピンとこなかった。学校全体がそうなんだったら、それは仕方がないことだと思ったし。
フリル先輩は「なんとかしなくては…」のようなことを言った。それでも私は動かなかった。それを考えるのは、学校側かもしくは指導側の先輩の役割、それらの方々が何もしようとしないのなら、今のままでいいのだと思っていた。
その期が終わった。
そのとき、フリル先輩にいつもの「そ~なんですか~」からは想像できないくらいに強い口調で、厳し~く叱られた。というより、苦情を思い切りぶつけられたと言った方が適切かもしれないが。
「テキストの進みが遅いと言ったのに、何もしなかった。私は死ぬほど死ぬほど悩んで眠れなかった」
であった。
驚いて、主任に相談しにぶっとんで行った。
そこで主任に言われたことは「クラスは担任のものだと思え。先輩に遠慮しないこと」であった。
ちょっとほっとしたが、担任という役割について、何一つわかってなかった自分がいたと感じた。少しでも違和感を感じたことや、違和感のある学生や講師がいたら、それは敏感に対処すべきなのだと思った。
ただし、担任って、ついている手当の割には辛い役割だなとも思ったのである。
後日聞いた話。
フリル先輩、新人講師に対して、その場で聞いていられないほど、厳しい物言いをする人なのだそうだ。おぉ、クワバラ、クワバラ。私にはまだマシだったのかもしれない。
その後、フリル先輩は海外赴任でいなくなった。帰国はいつかな~。
私は悪くないとは思わないし、反省をして、その後の改善をはかったつもり。
仕事の話は率直であることが必要。でも相手を傷つけないように言う技術も必要。日本語教師の世界は、定年後の再就職先として選ばれることが多く、すごい経歴を持った、はるか年上の後輩に忠告する機会も少なくない。
実は若い専任講師には、そんな配慮もできない(よ~するに、口の利き方がなっていない)人もままいる。
まさかフリル先輩も…?
やりにくいには間違いなく、正直もう接したくないのであ~る。