素直じゃないか、あだっつぁん
ン年前か、オヤジバンドなるものが流行ったことがあった。のだよ、今の若者たちよ。幼なじみのあだっつぁんもそんな中の一人……かどうかわからないが、バンド活動をしている。呼び名が長いので以後、あ君にする。
そのあ君、たまにライブをするのだが、行ってみた。東京多摩地区から千葉市まで、JR約1時間半ほどである。
はたしてそのライブハウスは、小ぶりのビルの4階。1~3階は歯医者さんという、どこかムフフの場所である。
特急の遅れにともない、開始直前に入ることになってしまった。逃げ場のない中央線は、一つ遅れると、後続の電車はすべて遅れる。愚痴ぐち。
入るともうすでにたくさんの人々で盛り上がっていた。すごいね、仲間がこんなに!
仲良しから仕事関係の人脈まで、人を集められる彼に尊敬の念を抱いた。
あ君は、ふるさとの小学校・中学校で同級生であったり、なかったり。
小柄で女の子のようにきれいな顔立ちで、男子とも女子とも仲良くしていたと記憶している。
中学のときにはもう音楽の道をさぐっていたか? ほかの男子とバンド的なものを作り、歌っていたような気がするが……。
その後、高校入試で道が分かれた。あ君の高校はちょっとレベルが低かったとこぼしていた覚えがある。
京都の大学の話はやはりちょっとだけ。後ろ姿でオバサンに間違えられたとか。あはは、思い出してしまった。
大学を卒業してふるさとに戻り、就職したのかな。そのあたりのいきさつは詳しくはないが、勇退までふるさとの企業に勤めていた。
私とのつながりは、基本的に年賀状だけであった。この数年でSNSなどでもう少し近しくなったかな、というものである。
さて、ライブの話に戻る。
バンドは元々3人、ほかにミュージシャンやコーラスを加えた編成だった。私は音楽はよくわからないので、至近距離のセッティングは興味津々である。コードがたくさんあるな~程度の認識ではあるが。
曲は昭和のフォークロック的である。歌詞もメロディーも、いい意味であくまでもプロではない感じ、というか、こなれていたり、奇をてらったりするのではなく、どこかデジャヴ感があるのだ。赤塚不二夫のマンガではないが「これでいいのだ~~」と言われている気もした。
あ君はボーカルとMCとをこなす。多弁ではないし、妙にウケねらいもなく、サラリと、でもしっかり盛り上げていく。明るくて自然体のキャラクターが功を奏するのかもしれない。
ゲストのボーカルの女性は、癖がなく聞きやすい。「私、うまいのよ」的嫌みが全くないのだ。きちんと音符を追い、よけいな張りも、よけいなビブラートもなく、まっすぐに歌ってくれた。高感度バツグン。
お父上の葬儀で、落ち着いた曲を流す予定が、ノリノリの曲が流れたという苦笑エピソードを入れたり、ゲストの方々の、とても楽しそうに歌われる姿を観たりしながら、2時間楽しむことができた。
観客の方は、タンバリンを上手に打ち鳴らす人、掛け声や口笛を鳴らす人……みなオヤジである。
10年前に母校である小学校に曲を寄贈して、その後ずっと児童に歌ってもらっているとか。話は聞いていたが、もう10年にもなるんだ~。歌ってくれているのは凄いこと。児童の一生に渡ってこころをつなぐのだ。私も小学校に覚えた曲は覚えていたりするわけだし。
実はあんまりノリ気でなかった夫くんを連れて行った。終わって帰る時には「地元愛に満ちていて素敵だった~」などと言ってご満悦だったぞよ。
次回は、一曲くらい覚えてマイクを奪おうか、タヒチアンステップでも踏もうかなどと思う。
そして、キーボードのミセスあ君とたんまりダべリングだ。
あ君は夫君と交流していてね、だんまりでいいから。