社労士と税理士の業際問題
全国社会保険労務士会連合会と日本税理士会連合会が平成14年に交わした「税理士又は税理士法人が行う付随業務の範囲に関する確認書」によりますと、所得税の
年末調整に関する事務は、税理士法第2条第1項に規定する業務に該当し、社会保険労務士が当該業務を行うことは税理士法第52条(税理士業務の制限)に違反する
と明記されている、という問題が「社労士と税理士の業際問題」です。
つまり、社会保険労務士が給与計算の中で「所得税の年末調整」を行うことは、税理士法が規定している「税理士の独占業務」に違反する、と公の文書に明記されているという問題です。
この問題の結論から言いますと、社会保険労務士が給与計算の中で「所得税の年末調整」を行うことは、確かに「税理士の独占業務」に該当することになると思いますが、その前に、
日税連の主張は、「税理士の独占業務」より優先する税理士法第一条(税理士の使命)に違反しているため無効(民法第九十条)です。
また、日税連は、社会保険労務士が年末調整をしなくなったら、それに伴って、住民税や確定申告はどうなってしまうのかを少しは想像し、あくまでも「何が正しいのか」を考えるべきです。
社会保険労務士が年末調整をしなくなったら、地方自治体は住民税を計算できなくなることが想像されますし、膨大な人数の給与所得者が確定申告をすることになりますが、各地域の税務署は対応できるのか、という問題が想像されます。
そもそも税理士は、労働社会保険諸法令の専門知識を保有しておらず、適正な給与所得(原則勤務実績(労働時間等)に応じた総支給額等)や適正な社会保険料控除(従業員等負担分の雇用保険料、健康保険料、厚生年金保険料、介護保険料)を計算できませんので、その年の適正な課税所得(所得税の課税対象額)を計算できません。
このため、税理士には「所得税の年末調整」を適正に計算する能力がないのが現実です。
しかし、労働社会保険諸法令の「専門知識」を保有する社労士であれば、所得税法の「基礎知識」を整備する必要がありますが、適正な「所得税の年末調整」を計算できるのが現実です。
それなのに「所得税の年末調整」を「税理士の独占業務」に規定している税理士法の現状がありますので、
正しくは「税理士法が改正されるべき」問題なのであって、日税連は、誤った税理士の既得権益を守ることに固執すべきではありません。
また、税理士法第一条(税理士の使命)は、税理士は納税義務の適正な実現を図ることを使命とする、と定めていますので、
10種類の所得のうち「給与所得」の場合、
日税連が「税理士の使命」を果たすためには、社労士による適正な「所得税の年末調整」を推進しなければ、税理士法第一条(税理士の使命)に違反することになるのです。
これは、税理士法が「税理士の独占業務」よりも優先して、税理士に対して要求している「税理士の使命」(存在意義)なのです。
もし日税連が「税理士の使命」に違反し、その使命を果たす意思がないのであれば、社労士による「所得税の年末調整」が「税理士の独占業務」に該当するかどうかの前に、日税連と税理士は自らその存在意義を失い、当然その国家資格も失うべきことになるのです。
従って、社労士は日税連の主張を無視すれば良い、ということです。
この日税連の主張は、税理士法第2条第1項及び税理士法第52条だけを税理士法から部分的に抜き出して条文通り解釈したものに過ぎません。
しかし、その前に税理士法第一条(税理士の使命)が税理士法第二条(税理士の業務)よりも重要な条文として存在しますので、税理士法第一条(税理士の使命)を加えて税理士法を総合的に解釈しますと、
全く反対に、このような日税連の主張は税理士法第一条(税理士の使命)に違反することになるため、社労士に対しこのような主張はできないことが税理士法で定められているのです。
このため日税連は、最も大事な「税理士の使命」に違反するのに、それよりも重要性が低い「税理士の独占業務」を守りたい、と社労士に対して主張して、論理的に本末転倒に陥っているのが分かっていないのです。
従って、日税連は現在も恥ずかしげもなく税理士法第一条に違反し続けており、自ら日税連と税理士の存在意義(使命)を否定する主張を公の文書に誤って堂々と明記してしまった、ということが厳然たる事実なのです。
話が長くなりますので、もっと詳しく知りたい方は、
ウエブサイト「社会保険労務士/社労士の真実」を参照してください。
社会保険労務士や社労士受験生の方のご健闘をお祈り申し上げます。