勤務医 迫る残業「24年問題」
"Resident Doctors Face Over '24-Year Problem' of Overtime Work"
Summary
Introduction
大学病院の特例申請と背景
勤務医の残業時間の上限を年960時間とする「2024問題」が迫っている。地域医療機関への出向が多い大学病院では医師の3割の遵守が難しいのが現状です。過労を防ぎながら医療サービスを維持する解決策とは、「業務のデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)」「病院の統合・再編による運営効率化」。地域医療や救急医療の担い手は特例措置とし2035年度を期限に残業を1860時間まで認めることになっています。特例は病院が都道府県に申請します。
厚生労働省(以下、厚労省)の2019年によると勤務医の約4割で残業が960時間(月80時間)を超え、医師の労働環境は厳しいものです。文部科学省の調査によると、全国の81大学病院のほぼすべてが、残業引き上げの特例申請を予定しているので、この規制が労働時間の短縮に寄与するか疑問が残るのではないでしょうか。過疎地が多い地域では平日に大学病院で働き、週末に他の医療機関に出向することが多いのが現状。
総合外科助教の小沢洋平医師は、5月の日曜に1時間半かけて宮城県女川町の地域医療センターに向かい24時間の宿日直をこなしました。前日夜は帰宅後に救急患者の対応が入り、未明まで内視鏡の処置に当たっていました。医師が出向する目的の一つは収入の確保。全国医学部長病院長会議によると、2022年の調査委によると大学病院助教と医療法人、開業医との給料を比較すると大学病院助教の方が低いとのことです。「出向には地域医療を支える役割もあり、どう維持するかという議論も必要だ」との指摘もあります。
Disscusion
地域経済内再編による負担軽減
神戸大学医学科付属病院(以下、神戸大病院)は医師の少ない病院同士の再編を県に提案しました。2013年度以降の10年間で公立と私立を合わせた約20病院の統合が進み10カ所の大病院が誕生しました。各病院の医師が増え人員に余裕が生まれ過疎地への負担が分散されました。神戸大病院勤務の魅力も高まり勤務医が増えています。神戸大表院も特例措置が必要ですが、残業時間が960時間を超える医師は全体の5%弱の40人の見込みです。城西大学の伊関友伸教示は、「人材を手厚くし働きやすい環境を整えるためにも都市部を中心に公的病院の再編が求められる」と強調しています。
厚労省の2018年の報告によると、日本の臨床医の数は、スウェーデン、英国、米国に比較して非常に少ないのが現状です。日本は、中小の病院が多く、医師が広範囲にわたって配置されていることも長時間労働の1つの要因と言えそうです。
DXの重要性と効果
診療データのデジタル化といった業務効率化は喫緊の課題です。地域医療センターは医師の負担を減らすため、一部の疾患の診察でオンラインを導入。人口知能(AI)も活用し医師の紹介状の作成などを支援する予定があるとのことです。
Conclusion
特定の地域内でハブとなる病院を誕生させ過疎地に出向させることで医師の負担が軽くなる光明がみえました。並行して、オンライン診療、AIの活用といったDXを実現することで医療の質を保ちながら医師の労働時間の短縮を試みることが大切ではないでしょうか。
特例措置も約10年で期限を向かえます。社労士としてAI化の推進、ハブ病院のパイプラインの構築を提案して少しでも労務の専門家として貢献できればと思います。
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