そろそろ”あの演劇”やりたい
という想いが去年の夏頃からふつふつと湧き上がっていた。
大学で4年間演劇をやって、半年卒業が延びた。「就職するまでの半年は思う存分演劇やってやるぞ」と思っていたのだが、新型コロナ感染症の流行で叶わなくなってしまった。
タイミングとかメンバーに恵まれて、2度オンライン公演をやらせてもらった。新しい形態の演劇を手探りで作っていくのは、とても面白く楽しかった、が。
血肉沸き踊る演劇がやりたい
汗と涙が迸る演劇がやりたい
という気持ちが、日に日に増していった。オンラインでも演劇を作ることができるのか、それを演劇と呼べるのか。そのような議論は未だに行われている。私自身オンライン公演をやって、それを「これまでにはなかった演劇の一種である」として認識してはいた。
しかし、自分がそれまでにやっていた、人間の肉体から放たれるエネルギーに感動するような、小さな空気の変化に共鳴するような、そんな演劇をまたやりたいと思うようになっていた。
そこでこのふつふつを、同じように半年卒業が延びた同期に話した。同じような気持ちでいると、返事があった。それが去年の10月終わりくらい。なんとなく世間は、感染症流行が落ち着いてきているような、そんな空気感だったように思う。実際Go to Eatキャンペーンが始まった時期でもある。
私と同期は、できるだけ少人数でできる、劇場での演劇公演を目指して話し合いを進めていた。Go to Eatでバイトが忙しかったりして、企画の大枠が決まったのは12月になってからだった。
さて、座組と会場を確定していこうと探している期間に、だんだん新規感染者数が増加していった。少し様子を見ようとなった。ニュースで報じられる新規感染者数の数字は、増えていくばかりだった。年が明けてしまった。そして二度目の緊急事態宣言が発出された。
私と同期は、もう一度企画を根本から考え直すことにした。
劇場で演劇をやっている団体はあったし、厳重な感染対策をしながらの公演に私も足を運んでいた。だから、劇場での公演が不可能なわけではなかった。しかし同期が長野の実家から首都圏に戻ってくることは、できそうになかった。
4月から働き出す私たちに残された時間はあまりなく、既存の脚本を使おうと考えた。メンバーを集めて、会場を探した。
そして今、実現可能かはわからないが、公演の稽古をしている。
演劇として配信で観られて、役者の肉体を感じられて、感染対策を徹底した公演。正直、ものすごく難しい。少なくとも私にとっては。でもやり遂げたい。