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アメリカ生活

玄関で靴を脱いで欲しくて奮闘した話

以前、5年ほどアメリカに住んでいたことがある。


ご存知のように
アメリカでは一般的に玄関で
靴を脱がない。
家の中でもそのまま靴を履いたまま
過ごしている。


とはいえ、
多種多様な人々が住む国であるから
家の中で靴を脱いで生活している人も
たくさんいるとは思う。


「郷に入っては郷に従え」
というけれど、
やはり我が家は
家の中で靴のまま生活するのは
くつろげないので
アメリカであっても入り口で
靴を脱いでいた。


ただ、
一般的に靴を脱ぐ習慣がない国なので、
当然家の造りも日本家屋のように
玄関の区切りはなく、
ドアを開けたらそのままリビング、
というか
普通に部屋が広がっている。


日本では新しく部屋を借りる場合、
部屋のクリーニングも
されていることだし、と
そのまま靴を脱いで
部屋に上がるところだが、
アメリカでは、
この前に住んでいた人は
靴を履いて住んでいた可能性が高く、
退去後の部屋のクリーニングさえも
作業員が靴を履いたままクリーニングをしていた可能性が高い。


というわけで、
住み始めると同時に、
まず私は床をめっちゃ掃除した。
それから靴を脱いで生活を始めた。
出入り口ゾーンには、
シューズラックを置いて。


アメリカでは、
アパートと呼ばれ
日本で言うテラスハウスのような、
2階建ての住宅が密集した集合住宅を
借りて住んだ。


アパート全体の入り口には
オフィスがあって、
その横に大きなゲートがあり、
住人はリモコンキーで出入りする。


アパートのオフィスには
夕方5時くらいまで人が常駐して
働いていて、
Amazonなどの不在荷物を
受け取ってくれていたりした。


家賃を持って行ったり、
エアコンが壊れただの、
ガレージが壊れただのという
家のトラブルがあると
オフィスに行って訴える。

そうすると、
そこから人が派遣されて
家のベルが鳴り、
作業員の方々が
エアコンを直してくれたり、
ガレージを直してくれたりする。


私の住んでいたアパートは
古い造りで、
しょっちゅう何かしら壊れた。

ドアノブが外れたり、
食洗器もディスポーザーも
クーラーも、
ガレージのシャッターも
あちこち本当によく故障した。


特に40℃も超えるような
真夏日にクーラーが壊れると
たまったものではない。

眠れないので、
1日2日で直らないようなら
近くのホテルに逃げるしかない。


オフィスに訴えると、
「わかった、あとで行くね」
と軽く言われるが

早ければ当日、
遅ければ2,3日後、
ひどいと忘れられたりする。

他の件ならいざ知らず、
真夏のクーラー故障だけは待てない。


と、そんな風に
毎回毎回修理を依頼するたびに
今か今かと待つのである。

そして、
ようやく修理の人が来てくれる。

ココです、ココ。
まずこの場面で面食らう。


よくよく考えてみれば
当たり前な話なのだけど、
当然のように作業員の人は
靴のままズカズカと家に上がってくる。


こちらが裸足でいるのだから、
「そうか、アジア人の家なんだ、
じゃあオレも靴を脱ぐね!」
みたいな、
そんな「察する」ということは
向こうの人は一切してくれない。


当然、
「靴を脱いでもらえますか?」と
ちゃんとはっきり伝えなければ
わかってもらえない。


でも最初はそれが言えなかった。

だから
「ジャパニーズスタイルなので
靴をココで脱いでね」
と紙に書いて玄関に貼ってみた。


次の故障の機会で来た作業員の人は、
この貼り紙を一旦見たが
やはり靴を脱いではくれなかった。


そうか、
やはりちゃんと口で伝えないと
ダメか、と
次の故障の機会には
言葉でちゃんと伝えてみた
(どんだけモノが壊れるんだ!)。


だがしかし、
これを言っても
靴を脱いではくれなかった。

「安全のために靴は脱がないんだよ」
と言われた。

なるほどそうか。
工具やらが足に落ちたら
ケガするもんね、
脚立も靴下じゃ滑って危ないしね、
と理解はした。

理解はするけれども・・・。


家の前に停まっている従業員の
作業用カートから道路、芝生、玄関、
家の中と
繰り返し靴のまま行き来されると、
気になってしかたない。


その靴でトイレも行ってるよね?
と言いたくなるし、
もっと言えば、
日本では
「○▽港で火アリ発見!!」
などと大ニュースになっている
まさにその「火アリ」がそこいらに
わんさかいるし、
あちこちにこんもりと
巣だってできている。

そんな中を靴のまま、
外と家の中を往復するのだ。

あちこちにあるヒアリの巣



やああめてくれえええいいい!!!
って叫びたくなる。


そんなことを同じ駐妻のお友達に
愚痴ったら
靴カバーを買ってきて玄関に置いて、「靴にこれをつけてね」
と言えばいいんだよと教えてくれた。


靴カバーとは!!
そんなものが存在するのかと。

早速ウォルマートやらターゲットで
探したら
薄い不織布でできた
使い捨てタイプの
靴カバーが何十枚もセットで
売っている。


その日から、
「靴カバーをつけてください」
という張り紙を玄関開けたらすぐの
目立つ場所に貼って、
靴カバーをカゴに何枚も入れて
玄関にでーんと置いてみた。


そうしてようやく
黙っていても
作業員の人たちが靴カバーを
付けてくれるようになった。


細かいことを言えば・・・
カバーを付けてくれるようには
なったけれども、
カバーをしたまま外の作業カートに
物を取りに行き、
そのまままた家に入るということが
あったりして…。


靴カバーの意味よ・・・と、
そんな場面もありましたが。

もうカバーを付けてもらうだけでいいとした。


異国生活恐るべし。

玄関で靴を脱いでもらう、
という日本ではごくごく当たり前のことですらままならなかったりする。

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