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【開運酒場】ひばり愛が深すぎる!〜いわき市・食事処おかめ〜
福島県いわき市にある「JRA競走馬リハビリテーションセンター」は、現役競走馬に温泉療法を行うため日本で初めて1963年に設立されたリハビリ施設。いわき市商工会議所のさそいを受けて取材した。
普段、競馬はやらないが、プール調教のあと、天然温泉(日本三古泉の一つ「いわき湯本温泉」)に気持ち良さそうにつかるお馬さんを見て、辛抱たまらず温泉に入りたくなった。
きけば、すぐとなりの「喜楽苑」という宿で同じ源泉に入れるという。さっそく、自慢の露天風呂へ。
大自然に包まれながら、ちょっぴり塩っぱい源泉に身をひたせば、気分は療養中の競走馬……。
俺だってある人生というレースを死にものぐるいでひた走ってるんだ……
なんて。
ああ、いい気分。
このまま東京へ向かう電車に飛び乗ることはない。
とりあえず一杯やろうと、JR常磐線の湯本駅前をうろついた。
しかし夕暮れにはまだ早く、そもそも地方の温泉街の平日に開いている店は多くない。
そんな中、駅前通りに<営業中>の札を掲げる店があった。
「食事処 おかめ」。
入口には地酒のこも樽やビールの提灯があり、もはや居酒屋にしか見えない。
ショーケースには色あせた美空ひばりのポスター。
なぜひばり?
不思議に思うも、とにかく冷たいビールが飲みたくて、引き戸を開けた。
***
大きなコの字型のカウンターの中におかめ……失礼、観音さまのような笑みをたたえる女将さん。
「いらっしゃ~い」
適当な場所に座り、店内を見渡すと、壁には品書きの短冊やおかめのお面。
サイン色紙もびっしりなところを見ると、どうやら地元では有名な店のようだ。
とりあえずビールを頼むと、
「ほろ酔いセットってのがあるんだけど」と女将さん。
おつまみ3品に飲み物1杯で1000円ポッキリ。
しかも14時からOK。
迷わず「それ下さい!」
やがて出てきたのは枝豆・タコ刺し&ゆでイカ・赤耳ハムカツでいずれもたっぷりの量。これで2杯はイケる。
キンキンに冷えた中生ジョッキで喉をうるおし、ひと心地ついたところで、入り口のポスターについて聞いてみた。
「美空ひばりの大ファンなの! 好きすぎて〝ひばりの間〟まで作っちゃった」
奥の座敷がそうで、さっそく見せてもらった。
壁一面に美空ひばりの主演映画のポスターがビッシリ。
ひばり愛が深すぎる!
少し離れたいわき駅前にも、その名も「ひばり」というスナックを経営しているそうだ。
そういえば、いわきには美空ひばりが歌った「みだれ髪」の歌詞に出てくる「塩屋岬」があったっけ。もともとひばりとは縁のある町なのだ。
席に戻ると「私も映画に出たのよ」と唐突に言い出した。
いわきが舞台の「フラガール」にエキストラ出演したそうな。
「蒼井優ちゃんが可愛くて!」と懐かしがる女将さん。
その圧倒的な存在感はエキストラどころか主役級。
こういうエネルギーの塊のような人と触れ合うと、こちらもエネルギーが満たされるような気がする。
壁びっしりのおかめのお面や、美空ひばりのポスター&ブロマイドは、神社仏閣の縁起物のよう。
そう、美空ひばりはもはや神や仏なのだ。
■食事処おかめ 福島県いわき市常磐湯本町天王崎84-1 TEL0246-43-3338
※日刊ゲンダイに掲載された「東京ディープ酒場」の記事を筆者自らが大幅に改訂したものです。→https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/life/258994