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私たちの未来、手をつないで

あらすじ

春の陽気に包まれた大学キャンパスで、由香は新しい大学生活に期待を抱いていた。そんな彼女に偶然声をかけたのは、オリエンテーションで知り合った彩音。明るく自然体な彩音の誘いでランチを共にし、二人の距離は徐々に縮まっていく。

彩音の明るさに由香は心を開き、次第に友情以上の感情を抱き始める。一方、彩音もまた由香に対して特別な気持ちを自覚するようになる。そんな中で、お互いの気持ちを探りながら過ごす二人は、友情から恋愛へと関係が変化していくのを感じていた。

同時に、亮太と大輝もまた、お互いに対する感情を自覚し始める。友情から芽生えた恋心を胸に、少しずつ互いの距離を縮めていく二人。四人の心模様は、それぞれの中でゆっくりと形を変えていく。

やがてそれぞれの恋が成就し、二組のカップルは新たな未来へと歩み始める。日常の忙しさの中で、愛と友情を支えにしながら、彼らは確かな絆を築いていく。再会を経て深まる関係性の中で、彼らは共に歩む未来への希望を見つけ、支え合いながら進んでいくのだった。

第1章:出会いの季節

大学のキャンパスは春の陽気に包まれていた。桜の花が満開に咲き誇り、柔らかな風が緑の木々を揺らしている。その中で、由香はひとり歩いていた。初めて訪れるキャンパスに胸を高鳴らせ、次の授業までの時間をどこで過ごそうか考えながら歩く。大学生活の始まりは、未知の世界への期待で胸がいっぱいだった。

「どこでランチを取ろうかな…」由香はふと思案しながら、広がるキャンパスを眺める。自分にぴったりの場所を探しながら歩いていると、突然、隣から明るい声が聞こえてきた。

「あれ、由香ちゃん? こっちこっち!」

その声は、彩音だった。由香は目を向けると、元気な笑顔を浮かべた彩音が手を振ってこちらに歩み寄ってくるのが見えた。彼女と会うのは、大学に入学する前に受けたオリエンテーションで少しだけ顔を合わせたとき以来だ。最初から印象的だった。元気で、少し派手で、でもどこか掴みどころのない雰囲気を持っていた。

「わ、彩音ちゃん! 本当に偶然ね。」由香は嬉しそうに歩み寄った。

「運命よ運命!」彩音は明るく笑いながら手を振り続け、「よかったら一緒にランチ食べようよ! 私、ここのサンドイッチが超おいしいんだ!」

由香は少し戸惑いながらも、心の中で何か温かい気持ちが広がるのを感じた。誰かに声をかけられるのが少し苦手だったが、彩音の自然な誘いに心を許すように感じて、軽くうなずいて答える。「うん、ありがとう。ちょうどお腹空いてたし、ついていく!」

二人はキャンパス内のカフェに向かう途中で、話しながら歩いていた。彩音がどんどん話題を提供してくれるので、由香は最初こそ少し戸惑っていたが、次第にリラックスしてきた。

「そういえば、由香ちゃんって、どんなことが好きなの?」彩音が明るく問いかけてきた。

「えっと、私は…読書が好きかな。あと、映画を見たりとか。」

「映画! いいねー! 私も映画大好き。今度、一緒に行こうよ!」彩音はにっこりと笑いながら言った。「ちなみに、私はスポーツが得意なんだよ。特にバスケとか。」

由香は驚いた。「バスケ! そんなに得意なんだ?」

「うん! 高校の時、バスケ部だったからね。」彩音は得意げに笑った。

その明るさと自信に、由香は少し圧倒される気もしたが、同時に心地よいと感じた。彩音は、どんな人ともすぐに仲良くなれるタイプの人で、由香はその明るさに引き込まれていくような気がした。

ランチを食べながらも、彩音は話題を次々と提供してくれた。由香は自分からはあまり話さないタイプだったが、彩音がどんどん話しかけてくれるおかげで、自然と会話が弾んだ。少しだけ、緊張が解けたような気がした。

「それにしても、由香ちゃんってすごく落ち着いてて素敵だよね。私はあんまりそんなタイプじゃないから、ちょっと羨ましいな。」彩音が少し照れくさそうに言った。

由香は少し驚きながらも、苦笑いを浮かべた。「いや、私こそ、彩音ちゃんみたいに明るくて、周りの人とすぐ仲良くなれるタイプに憧れちゃうよ。」

「じゃあ、私の明るさを借りて、仲良くなっちゃおうよ!」 彩音はウインクして、由香の肩を軽く叩いた。その無邪気な笑顔に、由香は自然と笑顔を返した。

その日を境に、二人の距離は急速に縮まっていった。共通の授業を取ったり、一緒に勉強したり、時には大学内でのお祭りに参加したりして、二人の絆は次第に深まっていった。

ある日、放課後に大学の庭でベンチに座っていた。周囲には色とりどりの花が咲き、柔らかな春風が吹き抜けていた。二人は並んで座り、しばらく黙って桜の花を見つめていた。

「ねえ、由香ちゃん。」突然、彩音が口を開いた。その声は少し真剣な響きがあった。「もし、誰かに恋をしたら、どうする?」

由香はその質問に驚き、顔を上げた。彩音の目を見つめながら、思わず動揺する。「え、どうするって、どういうこと?」

「だって、恋愛って面倒くさいことも多いけど、好きな人と一緒にいるだけで嬉しいって思えるじゃない? だから、もし本当に好きな人ができたら、ちゃんと自分の気持ちを伝えた方がいいよ。」彩音は真剣な顔で言った。

由香は少し考えた後、静かに答えた。「私は…うん、確かに気持ちは伝えた方がいいと思う。でも、それが同性だったら…どうすればいいんだろう?」

その言葉に、彩音は少し驚いたように目を大きく開けた。しばらく言葉を探していたが、やがて静かに笑った。「同性、って…由香ちゃん、もしかして、私のこと…?」

「違うよ!」由香は顔を真っ赤にして、慌てて否定した。「違うけど、なんとなく、そういう気持ちがあるかもって思って。」

彩音はその言葉に一瞬沈黙し、そして穏やかに答えた。「なるほどね。でも、心配しなくても大丈夫だよ。私たち、何でも話せる関係だし。」

その言葉に、由香は少し安心した。今まで感じていたモヤモヤが少しずつ晴れていくような気がした。彩音となら、どんなことでも話せる気がした。こうして、二人の間には自然と絆が深まっていき、友情以上の何かが芽生え始めていることに気づき始めたのは、ほんの少し後のことだった。

それでも、由香はまだ自分の気持ちがどういうものなのか、確信を持てずにいた。彩音に対しての感情が、友情だけではないことを感じる一方で、どう扱っていいのかわからなかった。

その一方で、亮太と大輝も少しずつお互いを意識し始めていた。しかし、それが恋愛感情に変わるのは、まだ少し先のことだった。

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