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100回目の奇跡
あらすじ
真央は、過去に数多くの男性に好意を抱かれながらも、そのすべてを冷たく突き放してきた女性。幼少期の家庭環境から「愛されること」に対して深い恐れを抱いている。彼女は、心の中で孤独と向き合いながらも、愛を信じることを避けて生きてきた。
一方、俊介は100人の女性に振られ続けた男性。自己評価が低く、恋愛に対して臆病になっていたが、どこかで本当の愛を求めていた。恋愛の失敗から逃げるように仕事や趣味に没頭し、心の奥底では自分が愛される資格を持っていないと感じていた。
ある日、友人の紹介で訪れたカフェで偶然出会った二人。最初は無関心だったが、毎週顔を合わせるうちに徐々に会話が増え、心の距離が縮まっていく。真央は、俊介の誠実で温かい態度に少しずつ心を開き始め、俊介もまた、真央の深い孤独を感じ、彼女に対する誤解を解いていく。
ある晩、カフェの閉店後に二人はお互いの過去を語り合う。真央は過去の傷と向き合い、「愛されること」を受け入れる勇気を持とうと決意し、俊介は「愛される資格がある自分」を信じることを決める。
そして、二人は初めてのデートを重ね、少しずつ心を通わせ合う。過去の恐れを乗り越えた俊介は、真央に告白し、真央もその気持ちを受け入れ、二人は本当の恋愛を始める。彼らは互いに支え合い、過去の傷や不安を乗り越えていく。
最終的に、二人は「100回目の奇跡」として、かけがえのない愛を手に入れる。過去の痛みが二人を強くし、新たな未来へと向かって歩き始める。真央と俊介は、愛し合うことの大切さを知り、これからの人生を共に歩む決意を固める。
第1章: 100人の縁
真央の過去
真央の心の中には、幼少期からの深い闇が広がっていた。家族の中で、愛を受けることができると感じた瞬間はほとんどなかった。両親は忙しく、愛情を示すことが少なかった。母親は感情を表に出さないタイプで、父親は家にいる時間が少なく、帰宅すると疲れた顔をしてテレビを見ながら何も言わずに眠るだけだった。真央が小さな声で話しかけても、しばしば無視されていた。その頃から、彼女は「愛されること」に不安を抱くようになった。
学校に通うようになると、他の子どもたちとはどこか違う自分を感じていた。周りは楽しそうに友達と遊んだり、家族と笑顔を交わしていたが、真央はいつも心の中で「本当の自分」を見せることができなかった。何をしても、何を話しても、誰かが本当に自分を理解してくれる気がしなかった。孤独であった。
その不安が大きくなるにつれて、彼女は次第に他人と深く関わることを避けるようになった。特に異性との関係には強い警戒心を抱くようになった。男性が自分に優しく接してきても、それを素直に受け入れられなかった。どんなに好意的な言葉をかけられても、心のどこかで「どうせまた裏切られるに決まっている」と感じていた。男性の優しさが真実かどうか、彼女には測る術がなかった。
大学に入ると、さらに多くの男性が真央にアプローチをしてきた。しかし、彼女はそのすべてを冷たく突き放してきた。最初は少しだけ心を許してみるが、次第にその優しさを疑い、心の壁を高く築いていった。何度も「愛している」と言われるたびに、彼女の心の中でその言葉が空虚に響いた。それは本当の愛ではなく、ただの言葉に過ぎないように感じた。
真央は、何度も傷つき、心を閉ざしてきた。どんなに努力しても、どんなに相手が優しくても、彼女の心はその愛を受け入れることができなかった。愛されることが怖くなった。それはまるで、誰かに自分を与えれば、必ず裏切られるという信念が深く根付いてしまったかのようだった。
俊介の過去
俊介もまた、恋愛において何度も痛みを味わってきた。高校時代から彼は、常に「誰かに認められたい」と思っていた。クラスで目立ちたくて、友達に頼んで女子にアプローチするようなこともあったが、うまくいった試しはなかった。振られることが多かったが、それでも俊介はあきらめなかった。自分の魅力を信じて、いつかは相手に好かれるだろうと考え、次々にアプローチを試みた。しかし、結果はどれも同じだった。
「ごめん、私には他に好きな人がいるんだ。」
「気を使わせたくないから、友達としてしか見られない。」
「あなたが好きかもしれないけど、でも無理。」
その度に、俊介の胸は痛み、自己評価がさらに低くなった。彼は他人の期待に応えたくて、何でも頑張ってみたが、どこかでその努力が裏目に出てしまっていた。女性たちは、彼の気持ちに応えることなく、冷たい言葉を投げかけては去っていった。それは、まるで自分には何の価値もないかのように感じさせ、俊介は「愛されることなどない」と心の中で決めてしまった。
周りの人々は、彼が愛されるべきだと言っても、彼自身はそれを信じることができなかった。振られ続けるうちに、恋愛よりも自分の趣味や仕事に逃げることが増え、心の中で本当の愛を求めることを諦めようとした。しかし、そんな自分に対しても、どこかで本当の愛が欲しいという願望は消えなかった。
俊介は、いつか誰かと真剣に愛し合いたいと願っていたが、それが実現するとは思えなかった。過去の失敗が彼を縛り付け、どうしても新しい関係を築く勇気が出なかった。それでも、心の片隅では、真実の愛を信じる気持ちが消えずに残っていた。
真央と俊介、それぞれが抱える過去の傷は、二人にとって恋愛を恐れる根源となり、未だに心の奥でその影を落としていた。どんなに他者が愛を注ごうとしても、二人は心からそれを受け入れることができなかった。それは、互いに異なる形で「愛されること」を恐れ、拒絶し続けてきた結果だった。しかし、そんな二人が交わる時、その心の壁を越え、初めての真実の愛に出会うことになるのだった。
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